こんにちは

 

『怪異妖怪記事資料集成』四巻(国書刊行会)からご紹介をしておりますが、前回、北海道旭川市にある神居古潭について取り上げました。今回は補足として神居古潭関連の話をお伝えします。

 

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神居大橋(現在、工事中で不通) H.T.Info さんからお借りしました

 

■それは伝説からはじまった

 

 神居古潭はアイヌ語で神のいるところを意味します。ここの石狩川は急流部で水深70mもあります。10万年前、北海道は海で隔てられ2つに分かれていました。4万年前の大噴火による火砕流などで海が埋め立てられ、つながって一つになりました。6000年前になると温暖化で海面が上昇、内陸に海が入り込みましたが、現在は退行し今の海岸線となっています。神居古潭のすぐ近くまで海がきていたことも伝説に触れられています。海が近ければ、その恵みが石狩川を遡上し、上川盆地に至ったことが想像されます。

 

アイヌの伝説では神居古潭には悪い神ニッネカムイが住み、簗を作って上流に魚が行けないようにしたり、岩をアイヌの人々に投げつけたりしたので、大きな熊の神が簗を壊し住民を救ったところ、怒ったニッネカムイは熊の神に攻撃を仕かけ、劣勢になった熊の神を英雄神サマイクルが加勢し形勢逆転、石狩川に落ち、泥濘に足を取られたニッネカムイはサマイクルに一刀両断され、首と胴体はそのまま石となったというものです。諸説ありますが、悪神を善神が退治するのは共通しています。

 

とはいえ、ニッネカムイの残留怨念があるのか、いろいろな怪異が今に至って起こっているのが神居古潭なのです。 

 

◼️現代の怪談

 

明治に起きた怪異は前回の通りです。昭和9年、貨物列車が走行中、落石がぶつかり川に転落する事故が起きています。

 

「旭川新聞」1932年11月6日付の記事によれば、昭和7年11月4日に神居古潭駅付近で岩盤が崩落、走行中の蒸気機関車がこれに衝突し、石狩川に転落。機関士ら2名が殉職したとのことです(ウィキペディアより転載)。落ちた機関車はそのまま川底に今も沈んでいるという噂もありますが、「touring.hokkaido.world」さんのブログによると、引き上げられ大井川鐵道で活躍、現在は千頭駅に展示されているそうです。

 

 

『北野誠のおまえら行くな 北海道ぶらり心霊道中記 〜 エピソード1 心霊探偵団 北の大地に立つ』(2016年)ではこのシリーズ2回目の北海道上陸でした。前回、鎌倉監督が撮影した駅舎内のおじさん(らしき)謎の人影の話、西浦和也氏が聴いた不思議な音の話などをしながら探訪したものです。

 ◎動画・DVDは・・  Amazon、Hulu、U-NEXTなどでおさがしください。

 

Rinsukeさんという方の体験談があります。この方はやや霊感がある方で、神居古潭にイヤイヤ連れていかれ、自殺した女性の幽霊に憑かれ、19歳から約6年間悩まされたという話です。

 ◎関西怪談倶楽部・・ YouTube 

 

 

他にもあるのですが、今回はここまでです。まとめるわけではありませんが、悪神の怨念かどうかはともかく、忌まわしい陰がつきまとう場所なのかもしれません。他の方も指摘されていますが、パワースポットとは呼び難いかもしれません。もちろん、昼間は風光明媚な場所であり、サイクリングなどもできるわけですから、あくまで夜のお話です。足元も悪いし、ふざけ半分に行くことは控えたほうがよさそうです。

 

余談ですが、筆者の伯父は機関車の運転士をしておりました。神居古潭駅を通過したこともある人です。あそこで怪異がなかったか聞いたところ、そんなもんはないよと笑われました。続けて、夜中に機関車が何かにドーンとぶつかることはあったけど、エゾジカだと思うよ、暗いから見落とすんだよ、鹿には悪いことをしたなあ、、、

もし鹿じゃなかったら・・・

 

注1. ニッネカムイ  大口をあけて断末魔の叫びをあげているような形の奇岩を「ニッネカムイ・サパ(魔神の切り落とされた頭)」、首を切り落とされたような崖の上の巨岩を「ニッネカムイ・ネトパ・ケ(魔神の胴体の部分)」と名付けられ現存していたが、最近は開発などで一部除去されたようである。

注2. サマイクル  アイヌの神には英雄神としてオキクルミもいるが、地域によってサマイクルとどちらが優位かが異なる。また同一神という説や兄弟神という説もある。

注3. サイクリングロード=通行止めおよび神居大橋の修理期間について<旭川市>
https://www.city.asahikawa.hokkaido.jp/kurashi/440/443/444/p000522_d/fil/tuukoudome_050927.pdf

 

◆注はどこ山が調べたものです

 

●参考文献

国土交通省北海道開発局『北海道ができるまで』