昨日急遽あたしの部屋に泊まることになったHeidiと一緒に、彼女が泊まるはずだったカサへ朝食を取りに行くことになる。なんでわざわざ人の家に行ってごはん食べるのかというと、あたしのカサはごはんが出ないしキューバではレストランに行くよりカサでごはん食べたほうがおいしくて安いし、楽しいからだ。
そのカサはカピトリオの後ろ側にあるエリアHavana Centroにあった。ここは昨日チャイナタウンに行く途中で変な人に腕をつかまれたエリア。明るくなって落ち着いてみてみると、明らかにあたしが泊まってるHavana Viejaとは違って、観光客の姿は全くなく、一人で歩くのは危ない雰囲気。そして、ゴミや犬のフンの匂いがすごい。
しばらく歩いてついたそのカサは、市場の2階部分が家になっていて、すごく大きくてきれいでゲストルームは何部屋かあるようだった。
そしてこの家は入れ替わり立ち代り地元の人が来る。市場の上にあるからなのかな?
カサのオーナーは白人で、英語が流暢で気さくな人だった。名刺をもらったんだけどなくしちゃった。
ダイニングで2.5ペソ払って朝ごはん。私たちの他にもう一人、眉毛の上にピアスを開けた男の子がご飯を食べてる。食べきれないくらいどんどん出てくる朝ごはんを食べながら3人で話し始めた。
最初、英語で話しかけたらポカンとされたのでメキシコ人かなーって思ってカタコトのスペイン語で話してみると、思ったとおりメキシコシティーに住んでいるRodrigoっていう名前のメキシコ人だった。この近くのカサに泊まっていて、私たち同様朝ごはんを取りに来ているみたいだ。
彼はいとこ2人と一緒に来ていて、この後みんなでビーチに出かける予定だから一緒に行かないかと誘われ、特に何の予定もなかったので二つ返事で了解した。そのいとこ二人はまだ寝てたので(ちなみにこのとき11時半頃)彼が起こしに行って準備をしにカサに帰っている間、私とHeidiは朝ごはんを食べながら待った。
カサで待ってる間は入れ替わり立ち代り来る地元の人になぜか写真撮影を求められたり、近所の人に部屋を見せてもらったり、大歓迎を受けた。
しばらくしてカサの下に降りると、一緒に海に行くメキシコ人のいとこ2人とキューバ人たちが集合していた。チャーターしたワゴン車のタクシーに誰が誰だかよくわからないまま車に乗り込んで、あたしたちのカサに荷物を取りに向かった。結局集合がダラダラしすぎて時間がなくなってしまったので、ここで今日の夜発の便でスイスに帰るHeidiはお別れ。
左上の白人女性がHeidi。他は一緒に海に行くキューバ人。
写真のキューバ人5人、メキシコ人3人とあたしの9人で行くことになり、車の中の共通語はもちろんスペイン語で、通訳のHeidiがいない今どうしよう?って思ってたら、さっきまで全然英語話せなかったRodrigoが急に別人のようになって英語をベラベラ話し出して通訳してくれた。それで彼のいとこのMemo、Javierや、キューバ人を紹介されてやっと状況が理解できた。
このメキシコ3人衆は一週間くらいの旅行でハバナに来ていて、カサの近くにあるバーで一緒にいるキューバ人たちと知り合ったみたいだ。一緒にビーチに行くキューバ人は家族やその近所の人。
3人衆の中でリーダー気質のRodrigoは24才で、好奇心旺盛で政治の話が好きな頭が良い男の子だった。あたしが大学で政治を勉強してるって言ったら色んなことを聞きたがったし、メキシコやラテンアメリカについて教えてくれた。カリブ海に浮かんで青い空を眺めながら、なぜか中国の政治体制やらアジア外交について説明したりして、堅い話をたくさんした。
彼は高校2年で休学してからはIT系の仕事をしていて(今メキシコではIT系は一番伸びてる産業らしい)、来年の4月からまた働きながら高校に戻って卒業したら大学に行きたいそうだ。
彼のデジカメに入ってた家の写真を見せてもらったけど、すっごいでっかくて綺麗!気になったのは、彼曰く彼の家は「中の上くらいのレベルの家庭」らしいけど、メキシコではそこそこリッチな家の子ですら高校をストレートに卒業できないんだろうか?そこはあまり突っ込めなかったからよくわからないけど、フルタイムで働く人の平均月収が700ドルくらいのメキシコで、500ドル出してキューバに旅行、800ドルの最新のデジカメを持ってる彼らは間違いなくリッチなんだろう。彼らの生活は、あたしの知ってるL.A.にいるメキシコ人とはかけ離れているようだ。
ほとんどのメキシコ人が英語を話せないのは、ほとんどの人が中学校に上がる前に学校を辞めてしまったり、インディオの集落付近に学校がないから通えないっていう理由だそうで、本来は日本と同じく中学・高校の6年間英語を習ってるらしい。だから高校まで卒業している彼らはそこそこ英語も理解できるらしい。
そしてもう一人は34才で1番年上なのに1番落ち着きのない、ラテン系を絵に描いたようなMr.ビーン似のJavier。コメディアンとして全然通用しそうなくらい芸達者だった。ルイス・ミゲルとか、メキシコの大統領のマネとかずっとやってた。本物を知らないから似てるのかわかんないけど、それでもすごいおもしろかった。そんなでも普段はIT系の仕事をしてて、結構バリバリ働いてるみたい。
最後が22才のMemo。いつものんびりしてて、みんなが砂浜で飲んでてもずーっと一人で海でぷかぷか浮いてるような、すごいマイペースな男の子だった。英語があまりできなくてあんまり話せなかったんだけど、NHKでやってたアメリカのドラマ「フルハウス」に出てくるジョーイおじさんに似てるっていう話で盛り上がった。メキシコ人と日本人がアメリカのドラマの話で盛り上がれるってすごいなぁ。今また再放送やってるみたいだね。
車で1時間くらい走って、途中でビーチで飲むためのハバナクラブっていうラムとコーラを大量購入。だってハバナクラブ安いんだもん。750mlの大瓶が1本3ドル!さすがサトウキビ立国。
海について喜びの一枚!奥に写ってるピンクのビキニの女の子はなんと13才。発育良過ぎ!
ビーチに到着。カリブ海はすごくきれいで、観光客が多いビーチだ。
だからか、警察官がウヨウヨいて、キューバ人が観光客にタカってないか目を光らせてる。「この国の人権は観光客>キューバ人だ」ってRodrigoは怒ってた。確かに、そういう光景はよく目にした。
私たちの前にいたキューバ人のカップルもその被害者だった。カップルの男がトイレに行ったスキに、近くにいたイタリア人がその女の子をしつこくナンパしたので、女の子はイタリア人を突き飛ばした。その一部始終を見てた警察官はなんと、女の子を連行した。
夏になるとこのビーチにはもっといっぱいイタリア人が来て、インビテーションをちらつかせてキューバ人の女の子をナンパするんだ、女の子も国を出たいからナンパされるのを待ってついていくんだ、ってすごく悲しそうに話すキューバ人を見ていたらいたたまれなくなってきた。外国人からの招待がないと国を出れないから、だから彼女たちは外国人と仲良くなって、彼らからインビテーションを受ける微かな期待を抱いてナンパ待ちするのだと。観光客のほうは国に帰って連絡しなければそれで終わり。カストロはこの現状を知ってるんだろうか?この光景を見たらなんて言うのだろう。
日本人だって中国や東南アジアで似たようなことしてるんだ。お金を払うか払わないか、の違いだけだ。
だいぶ話がそれたけど、この日は日が暮れるまで海で遊んで、こんなにビーチを満喫したのは初めてだ。
そして、またあのワゴンタクシーでハバナまで帰った。
夜出かける前にそれぞれ着替えたりシャワーのために家に帰って、あたしもカサの前で降ろしてもらって、 彼らがまた迎えに来るのを待った。
潮でパキパキになった頭を、チョロチョロのシャワーで洗うのは思ったより大変だった。海に持っていった服やタオルやエスパドーリュのサンダルも水で洗って、待ってる間1時間くらいの間に日本から持っていったミニドライヤーで乾かした。ハバナのカサは日当たり悪くて洗濯物が乾かなかったし、今回持ってきた服はトップス5着、ボトム2着くらいだったからドライヤーは大活躍だったな。ちなみに、キューバとメキシコは日本の電化製品使えるよ。
そんなことしてる間にお迎えが来て、今度はメキシコ3人衆+キューバ人の男の子1人、あたし入れて5人。正直ほっとした。っていうのも、今日一緒に海に行ったキューバ人はすごくいい人たちで、色んなところに案内してくれたし、様々な面で私たちに不利益にならないように取り計らってくれる。だけど、ランチ代やお酒代、タクシー代のお金を出すのは私たち(ここではメキシコ人とあたし)観光客側だから。正直私たちにとってみればそんなに大した額じゃない。でもディナーでレストランや飲み屋に行くとなると、あたしも他の人の分まで払うほどお金ないしヤバイなぁって思ってた。でも彼らは私たちのことを「友達だ」と思って気を使ったのか、この日も次の日も海以外で私たちにお金を出させるようなことはなかった。
なんでこんなことが起きるのかというと、原因はキューバの通貨システムにある。
キューバの通貨制度は複雑で、キューバ人が持つ通貨(キューバペソ)と、観光客が持つ通貨(兌換ペソ)があり、そのレートは1:24だ。つまり、キューバ人の持つ通貨は価値がものすごく低い。キューバはご存知の通り社会主義国家で、キューバ人は全員何らかの職業につき、その給料は一定で、キューバペソでもらう。それは兌換ペソに換算すると12兌換ペソくらいらしい。レートは1兌換ペソ=1ドルなので、12ドルだ。
キューバでは、店によって使える通貨が異なっている。たとえばキューバ人しか来ないような汚いピザ屋では、キューバペソでピザ一枚40円くらいに対し、いわゆるレストランのようなところではピザ一枚が800円くらいだ。もちろん味や、サービスの質も違うけれど、その差は20倍以上。つまり、普通にキューバペソで給料をもらっているだけで生活している人は、レストランに入ってピザを食べることなんてできない。まともなものを買おうと思ったらキューバペソでは買えない。
それが最近では兌換ペソを手にするキューバ人が増えてきて、貧富の差が進んでいる。どうやって兌換ペソを手に入れるのかというと、まずは国外にいる家族などからの送金。あとは観光業に携わることだ。たとえばカサをやっている家は、1人泊めれば25~30兌換ペソが手に入る。2部屋ある家は1日50兌換ペソだ。だからカサをやっている家の暮らし向きはいい。観光客が持っている通貨は基本的には兌換ペソなので、観光客に自分の書いた絵やおみやげを売っても兌換ペソが手に入る。そんなわけだ。
とはいえ、観光客の方が断然お金を持っているのは当然なわけで、キューバ人と出かけると、観光客がキューバ人の分も出してあげることがほとんどだ。1本のビールに5兌換ペソなんてお金は彼らには出しようがないのだ。それを逆手にとってたかって来る人は少なくないようだ。
あたしはたまたま彼らみたいに素晴らしいキューバ人に会えたけど、他の人のキューバ旅行記なんかを読んでるとよくない人にたかられることもあるみたいで、その点ラッキーだったのかな。
そんなんで案内役のキューバ人の彼(名前忘れちゃった、ごめん--;)がおいしくて安い、つまり私たちに負担にならないような額の店に連れて行ってくれた。チャイナタウンのエリアにあるピザレストランで、確かLos Tres Chinos(3人の中国人)っていう名前だった。なんでピザ屋なのに中国人?笑
まずくて高い店が多いハバナでは、安くておいしいレストランが特に繁盛するのは当たり前なんだけど、9時過ぎてたのにすごい行列で1時間くらい並んだ。こっち来てから1時間や2時間待つのなんて慣れてたからあたしは全然平気だったけど、待つのが嫌いなRodrigoはイライラしてた。こんなせっかちでメキシコで生活していくの大変だろうなぁ。
やっと入れた店内の内装やメニューの表紙はチャイナ風で、でも完全にただのピザ屋。たぶんチャイナタウンにあるからそれっぽい名前つけただけなのかな。
左からRodrigo、キューバ人の彼、Memo、Javier
ピザは1枚3ペソ~5ペソ(3ドル~5ドル)くらいで、5人で3枚頼んだ。「お腹空いた」っていう日本語を教えたら、スペイン語圏の彼らには「Una casita-ウナカシータ(ちっちゃい家)」に聞こえるらしくてすぐに覚えて喜んでた。この夜はおいしいものを友達としゃべりながら食べて、間違いなくこの旅行の中で一番おいしいディナーだった。一人で旅行してると簡単に食事を済ませることが多いし、たまにレストラン入っても一人で食べるとおいしさは半減するもんね。
レストランを出たのは12時近く。
明日の待ち合わせ場所の確認のために、その場所に行った。子供に覚えさせるように何度も時間や待ち合わせ場所の前の通りの名前や近くのホテルの名前を復唱させられた。そこまでしなくても覚えられます!
この日もみんなに家まで送ってもらってあたしは帰った。みんなは酒場(飲み屋ではない)に向かった。



