では、なぜ土壌性有機物を使用すると一般堆肥使用時と違う現象が出てくるのでしょうか?その答えは、この写真に現れています。

土壌の団粒化は、土壌が電気的性質を帯びることで現れる物理的な現象です。これを化学的に表現すると塩基置換能が向上している、と表現することができます。

 

「塩基置換」とは、「土壌肥料用語事典 三好 洋/嶋田永生/石川昌男/伊達 昇 編 農文協刊」からお借りすると次のように記載されています。

(転載開始)「腐植や粘土などの土壌膠質(コロイド)は陰荷電(マイナス)を帯びているので、各種の陽イオンを吸着している。土壌に塩基(土壌溶液に溶けて陽イオンになる)を加えると、吸着されている陽イオンの一部は、加えられた塩基に由来する陽イオンによって置換(交換)され、土壌溶液中に出る。この現象を塩基置換あるいは陽イオン交換と呼び、通常この反応は可逆的である。土壌に肥料を加えると、肥料中のアンモニアとカリウムの一部は、土壌に吸着されている陽イオンと入れかわって土壌に吸着される。多くの陽イオンが共存する場合、土壌に置換されるイオンの優先順位は、水素>カルシウム>マグネシウム>カリウム・アンモニア>ナトリウムである。このことから、水素イオンが最も強く吸着されること、ナトリウムが最も吸着されにくいことがわかる。わが国の畑土壌は、雨の多いことや化学肥料を多量に施用しているので、塩基が溶脱されやすく、水素イオンが優勢となって土壌は酸性を示すようになる。このため、水素イオンをカルシウムやマグネシウムで置換〈交換〉させる土壌改良を、つねに心がける必要がある。」(転載終了)

 

土壌性有機物は原料有機物の腐植化及び腐熟化が進んでいますので、結合している肥料成分をイオン化させ、より多くの陽イオンを吸着する力(塩基置換能)を持っています。また、磁石でもそうであるように-極に-極はくっつきませんが、土壌性有機物に含まれる腐植物の質が上質であるほど腐植物にくっついた陽イオンに陰イオンの肥料成分もくっつくことができるようになります。

 

もうひとつ特筆すべきことは、土壌性有機物の圃場への投入目的は、土壌中の微生物を活性化させること、とこれまでにご説明してきましたが、この土壌中の微生物活性によって土壌中の窒素固定菌も活性化し、大気中窒素の固定化が促進されることで、窒素肥料を土壌に補うことなく作物生産が実現していると考えています。

 

最後に、耕作農家さんには畜糞を原料とした堆肥の使用を好まれない方も多く見かけます。その理由は、堆肥への抗生物質の残留です。しかし、㈱T&Gの特許技術であるBR技術によって加工した堆肥、「土壌性有機物」からは残留抗生物質が検出されなかったことを付け加えておきます。