「♪~。」
演奏が終わった。オルゴールが閉じる。
僕の体の表面の赤が消えた。
何事もなかったかのような静かな夜の道。
いつまでもこんな所で座り込んでても何も変わらない。
靴を履いてオルゴールを拾った。
お父さんもお母さんもいない。
おなかすいたな・・・。
お母さんの料理出来てるかな・・・。
最後の・・・お母さんの料理・・・。
重い足を家路に向かわせる。
このオルゴールをこの場所に置いていっても
僕はオルゴールに入る事が出来ない。
自分の声が嫌いになるだけ。
とりあえず手話を覚えよう。
声が出せない声を演じないとみんな消えていく。
声を出さなくてもいいような人間にならなくちゃいけない。
出来る事なら心もいらない。辛くなりたくないから。
どうしても邪魔になってしまう・・・。
・・・・・・家の窓からオレンジ色の光が漏れていた。玄関があいている。
中には誰もいない。帰ってくる予定もない。
今帰ってきた僕だけ。
僕一人。僕の小さな体でこの大きな箱に住む。
家賃とか光熱費とかどうしよう。
その前に児童相談所とか来るのかな。
施設にいれられるか警察に突き出されるか・・・。
・・・・・・・・・やめた。
深く考えたら息苦しくなるし、お腹がすくし、疲れちゃう。
キッチンからいいにおいがする。
3人前はあるってことは明日の昼まで困らない。
「・・・・・・・・・カレー。」
すごっく煮たってる・・・。
ジャガイモはいってるよな・・・。苦手なんだけど。
出来たての肉じゃがで火傷して以来、ジャガイモ苦手・・・。
お茶の消費率すごくなるな・・・。
「お茶・・・。」
冷蔵庫の中にポテトサラダがあった。
あと追い打ちをかけるかのような肉じゃが・・・。
この苦手な3~4人前を一人で食えと・・・?
地獄だろ・・・。
全国の奥様方に伝えたい。
ジャガイモがスーパーで安かったとかの理由で
ジャガイモの衝動買いは行なわないでほしい。
子どもが地獄を味わうことになる。
そしてもしそんな過ちを犯したならば。
そのジャガイモを全てスライスした後に油で揚げる事をお勧めする。
子どものおやつにもお父さんのおつまみにも人気の
スナックに早変わりするから。
それだったら僕でも食べられる。
そして気がついてしまった。キッチンの床下の大量のジャガイモに・・・
君達はスライス後油でカラッと決定だ。
・・・・・・・・・・・・というか僕は何を考えてるんだ・・・。