![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240713/18/doiiku/e9/87/j/o0540108015462658533.jpg?caw=800)
連日MLBの大谷選手の活躍が報道されていますが、
昔のような打率4割を超える打者が今は消えてしまった理由について、進化生物学者グールドは次のように述べました。
1930年まで打率4割を超える首位打者はタイ・カップら9人もいたが、40年のテッド・ウイリアムスの4割6厘を最後に、3割8分も困難になった。野球の専門家は、リリーフや野手の技術向上、日程の過密化などを原因と見るが、しかし過去も現在も平均打率はほぼ変わらない。
むしろ最高打率の低下と共に最低打率は上昇し、平均打率へと収斂していく傾向がある。
4割打者の消滅は生物進化の過程における「変異の全体的な減少…極端な例の消滅」と同じ現象である。
自然界では「ある体系が生じると…あらゆる可能性の限界がさぐられ…多くの変異はうまくいかず、最良の解決が出現すると変異の勢いは衰える」。
野球もまた、打撃、投球、守備において「最良の方法」が現れ、全体がより高度に標準化され、変異の幅が減少し、結果4割打者は消えたのだ、と。
しかしながら、大谷選手の二刀流や近時の三冠王に迫る勢いなどは「変異の消滅」「標準化」には明らかに合わず、
むしろ「収斂」との自然界の原理を超える「驚異の進化」にも見えますが、
他方で、近年AIが人間の知能を超える日も遠くないといわれます。
また、有名なムーアの法則、半導体の世界では2年で情報処理能力が2倍になるとの急激な増大は、自然界の「長期的な進化」とは明らかに異なります。
かつて「近代化論」のロストウは、工業化の過程をテイクオフ(離陸)と呼びましたが、
近代化とはいわば線形的ではない、指数関数的な発展とされます。
指数関数が1を大きく下回った場合、0.001が0.002、0.004、0.008と増加しても、曲線が1を超えないから、人間の眼には水平な線にしか見えない。
しかし、これを何度も繰り返せば、ある時点で曲線が生じて急上昇し、100を超える…
この 線形的ではない「指数関数的」な発展がAIやムーアの法則の実態であり(P・H・ディアマンディスら)、
経済学者Ⅾ・アセモグルによれば、技術革新には、歴史的に特定の制度の下で自然に発生し、普及するパターンがある、それは自由や権利が広く保証される包括的(ヽヽヽ)な制度であり、その対極が収奪的(ヽヽヽ)な制度である。
発展途上国や権威主義の国々の成長は、いぜん先進国の技術や需要に支えられ、グローバル化という外から導入できるテクノロジーや資本が枯渇すれば、成長は減速するかもしれない、と。
IT化のみならず少子高齢化、女性の地位向上、新冷戦、環境・エネルギー問題などが特徴とされる現代社会の維持には、
従来認められる以上に「包括的制度」による「新たなテイクオフ」が不可欠といえます。
近現代の「指数関数的」発展は、自由社会の「制度の蓄積」の産物であり、
それは「変異の減少、収斂」という自然界の法則とは異なる「人間の理念」、「人間が人間自身を治めるという自由主義の大原則」(チェスタトン)がもたらす「驚異の進化」の現象と考えられるのではないでしょうか。
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