CHAGE and ASKA「if」はなぜ日本一地味なミリオンセラーになれたのか
昨日は、CHAGE and ASKAのシングル「if」の30周年記念日でした。
ネット上では、「はじまりはいつも雨」や「SAY YES」のときのように盛り上がるのか、と思いきや、そうでもなかったですね。
以前、ネット上で「日本一地味なミリオンセラー」というコメントを見かけたことがあって、これが世間のイメージなのか、と思っていましたが、ファンの間でもそんなイメージなんだと実感させられました。
「if」の発売当時、チャゲアスは、「SAY YES」が約300万枚の超大ヒットを記録した直後なので、空前のチャゲアスブーム。
オリジナルアルバム『TREE』がダブルミリオン。そこからシングルカットした「僕はこの瞳で嘘をつく」がオリコン1位の大ヒット。
続くベストアルバム『SUPER BESTII』がダブルミリオン。そこからシングルカットした「LOVE SONG」と「WALK」がオリコン1位、3位の大ヒット。
満を持して「SAY YES」以来の新曲シングルが「if」でした。
想定外のスローテンポで優しくささやくような歌声。これを「SAY YES」の次の新曲シングルに持ってくるとは意外でした。
CAHGE and ASKA「if」レビュー『空色のハーモニー』
折しも、当時はカラオケブーム。仕事終われば飲んでカラオケ。学校終われば、みんなでカラオケボックス。そんな時代でした。
ですから、ヒットさせるには、カラオケで盛り上がる曲、カラオケで歌いやすい曲をシングルにするのが定石でした。
なのに、CHAGE and ASKAは……。
それでも、当時のチャゲアスは、どんな曲を発表してもヒットは確実。
パナソニック「シェルロック」CMソングとしてテレビでよく流れていましたし、ラジオでもよく流れていましたからヒットしないわけはありません。
とはいえ、調べてみると、当時CHAGE and ASKAがメディアに出演して「if」を披露したのは、ミュージックフェアの1回だけなんですね。
これは、リアルタイムで視聴してました。私にとって、初めてのチャゲアスの新曲シングルなので、テレビにかじりついて聴きました。ビデオ収録もして何回も観直しましたよ。
でも、こんなスローバラードは、当時のJ-POP業界では、アンチテーゼと言っても過言ではない作品。
さすがにミリオンセラーは難しいだろうと思ってました。しかし、そんな私の懸念を覆して「if」はオリコン2週連続1位を獲得し、108万枚を超える売り上げでミリオンセラーとなりました。
ブーム中のアーティストパワーはすさまじいですね。
全盛期のB'zやミスチル、宇多田ヒカル、AKB48もそんな感じでしたが、チャゲアスの「if」ほどの冒険をしたシングルはありませんでした。
こうして、後年「日本一地味なミリオンセラー」と呼ばれる下地は整ったわけです。
でも、さほどシングル盤はさほど地味じゃないんですよ。
地味になったのは、アルバム『GUYS』用に、再アレンジを施したアルバムバージョンの「if」。
シングル盤の編曲が十川知司さんだったのに対し、アルバム盤はJess Baileyさんが編曲です。
元々、芸術性の高かった「if」に対し、さらに芸術性を高めたアレンジになりました。
このバージョンがYouTubeのチャゲアス公式チャンネルに上がっているので、世間は「if」に対して、当時より地味な印象を持つようになったと思われます。
でも、この「if」の音楽的な魅力は、あの澤近泰輔さんが『Terminal Melody』で絶賛されてます。
そんな「if」ですが、過去の日本のミリオンセラーを並べて聴いてみると、やはり地味な印象になってしまいます。
ヒットを狙いながらも、極限まで芸術性と複雑さを高めたミリオンセラーは、他にありませんから。
しかも、なぜかベストアルバム『CHAGE&ASKA VERY BEST ROLL OVER 20TH』に収録されず・・・。
そして、今年のねとらぼ調査隊のCHAGE and ASKAシングル人気投票でも、「if」は21位。やはり地味な順位です。
こうして、現在「if」は、世間で「日本一地味なミリオンセラー」とコメントされるようになりました。
そのうち「世界一地味な……」と呼ばれる日も近いかもしれませんね。