CHAGE&ASKAが見い出した天才編曲家澤近泰輔さん還暦特集
Chageさん、ASKAさんが今年還暦なので、音楽業界の還暦神セブンと銘打って、7人を順次紹介しているところですが、本当は、もう1人、紹介しなければならない音楽家がいます。
2018年6月21日に還暦を迎える澤近泰輔さんです。
CHAGE&ASKA関連の音楽を少しでも聴いたことがあれば、名前は絶対知っているはず。
CHAGE&ASKAバンド、ASKAバンドのキーボーディスト、およびバンドマスターとして活躍し、Chageさんが出演するライブにも時おり参加されています。
そして、何よりも、編曲家としての才能は、誰もが認めるでしょう。
これまでは、全国的に名前がニュースに載ることはなかったように思いますが、先日、工藤静香さんのニュースで澤近さんが紹介されていました。
J-CASTニュース「工藤静香、インスタで生歌披露 紅白出場曲をピアノアレンジで」
https://www.j-cast.com/2018/05/24329521.html
こうやって澤近さんがニュースに登場するのを見るのは、初めてかもしれません。
普段は、歌手と違って表に出るわけじゃなく、裏方のような存在ですから、こうやって澤近さんが取り上げられるのは喜ばしい限りです。
しかし、チャゲアスファンとしては、紹介のされ方に引っかかるものを感じるわけですよ。
『CHAGE and ASKA「On Your Mark」の編曲などでも知られる』という表現。
雑すぎでしょ。
仕方がないので、私が簡単にご紹介します。
澤近泰輔さんは、1987年、CHAGE&ASKAに見い出されてバックバンド『BLACK EYES』のキーボーディストに抜擢。以後、CHAGE&ASKAのコンサートに帯同するとともに、楽曲制作にも携わります。
そして、澤近さんの名前を世に知らしめたのがCHAGE&ASKAのデビュー10周年記念アルバム『PRIDE』のタイトル曲「PRIDE」の編曲でしょう。
人々が生きていくうえで必ず経験する別れ、苦しみ、挫折、嘲笑。そういった苦々しい経験すべてに傷つきながら、それでも何とか自らの誇りを守ろうとする主人公の心をピアノの旋律で表現します。
特にイントロの旋律は、神がかっており、そのイントロを初めて聴いたASKAさんが「こんなすごいの、どうやって作ったの?」と澤近さんに聞いたという伝説があります。
そのときの澤近さんの答えがこれ。
「手癖みたいなもんですよ」
そんな手癖で編曲して出来上がったのがCHAGE&ASKA不動の人気ナンバー1曲「PRIDE」です。
「PRIDE」CHAGE and ASKA
この楽曲以降、澤近さんは、チャゲアスに欠かせない存在となっていきます。
特にASKAさんとの相性は、抜群で、2人が作り出す楽曲は、J-POPを牽引していきます。
1991年には澤近さんが編曲した「はじまりはいつも雨」が一大ブームを巻き起こします。
「はじまりはいつも雨」ASKA
言わずと知れたミリオンセラーで、別れや涙の象徴である雨を、ロマンチックな恋の象徴に仕立て上げ、雨のイメージを大きく覆してしまった魔法の曲です。
私がこの楽曲の編曲で大きな衝撃を受けたのは、恋人を雨の中で連れ出す場面から、恋人の名前を語る場面に切り替わる一瞬の間。動画では1:05のところ。
ほんの1秒にも満たないような間ですが、すべての音が一斉に止まるんです。場面を綺麗に切り替えるかのような一瞬の静寂。
一瞬の静寂に、私は、至高の芸術を感じたのでした。
シングル「はじまりはいつも雨」のカップリング曲「君が愛を語れ」も、澤近さんの編曲が光る名曲でしたね。
そして、ニュースで注目を集めている1994年の楽曲「On Your Mark」。
「On Your Mark」CHAGE and ASKA
ニュースでなぜこの楽曲だけが取り上げられたのかは謎ですが、チャゲアスファンの間では、「PRIDE」に次ぐ人気を誇る楽曲で、ジブリの短編映画となったことでも有名です。
世界の巨匠宮崎駿監督がこの楽曲を聴いて、短編映画を制作する気になってくれたそうですから、もはやその完成度は語るまでもありません。
澤近さんによる荘厳なアレンジのイントロとアウトロ。そして、疾走感溢れる歌には心地良く刻むリズムのアレンジを施しています。キーボードとストリングスを前面に押し出すアレンジなら澤近さんの右に出る者はいません。
そして、チャゲアス活動休止前の2007年に発表した集大成シングル「Man and Woman」の編曲も澤近さんです。
「Man and Woman」CHAGE and ASKA
この楽曲には、ASKAさんと澤近さんが二人三脚で作り上げていった流れが感じられます。ASKAさんの歌声と澤近さんの演奏がまるで会話をしているかのように聴こえてきますから。
そして、何と言っても、人生を達観させてくれて、温かい愛情も感じさせるイントロ。私が好きなイントロを3曲挙げるとすれば「PRIDE」「FUKUOKA」と並んでこの「Man and Woman」を挙げます。
ASKAさんがソロ活動に入ってからも、澤近さんの活躍はとどまるところを知りません。
2012年のオリジナルアルバム『SCRAMBLE』の核となる「いろんな人が歌ってきたように」は、高い人気を誇っています。
「いろんな人が歌ってきたように」ASKA
すべてのことは自分の心の持ち方次第であり、世の中への関わり方も自分の心にある愛次第なのだ。そんな普遍を描いています。
歌いだしの語りかけるようなASKAさんの優しい歌声、サビの力強い推進力が感じられる歌声に、澤近さんが編曲したピアノとストリングスがときに寄り添い、ときに加勢するように盛り立てます。
そして、2016年12月24日、ASKAさんが復帰第1弾としてYouTubeに公開したのがこの曲。
「FUKUOKA」ASKA
配信後、わずか4日で100万視聴を記録し、現在では210万視聴を超えています。配信前には警視庁の捜査員の間で大ヒットを記録していたそうですから、当然と言えば当然でしょう。
私も、聴き始めて3秒後に、これは、澤近さんの編曲だと確信しましたね。
極めて繊細なタッチの旋律が流れる40秒あまりに及ぶイントロのピアノ演奏は、一気に癒しと郷愁を呼び起こし、引き込まれていきます。楽曲の後半には高ぶる感情とともに入るギター演奏が圧巻です。
そして、復帰第1弾アルバム『Too many people』のトリを飾る「しゃぼん」も、澤近さんが編曲です。
「しゃぼん」ASKA
この楽曲は、軽々しく語るのがはばかられるほど、壮絶な感情が苦悶の表情で迫ってくる楽曲ですね。
底知れぬ孤独と絶望の淵で自分を見つめ直し、自らに訪れる幸せや苦しみとは一体何なのかを問い続ける歌です。
こんな壮絶にして壮大な楽曲にアレンジを施すとなれば、澤近さん以外考えられません。
ASKAさんと澤近さんが作り出す世界は、もう真似できる次元を通り越して、唯一無二の芸術となっています。
以上、私も結構雑な紹介になってしまいましたが、澤近さんには、60代になっても、ASKAさんとともにこれからも多くの名曲を作り出してもらいたいと期待しております。
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