ひなside
うち、村上ひなは自他共に認める“オタク”や。
推理小説やミステリー・サスペンスドラマ、小説を見聞きして、トリックを解いたり、薬学と触れ合ってる時が一番至福やから。
そやし、もちろん、殺人にも興味はある。
ま、実行はしたくないけど。
「殺してみたかった」って供述の犯人の気持ちをうちは、否定しないにすぎないだけ。
だから、うちは小さいときから“薬剤師”になりたくて、そのための勉強は苦じゃなかった。
自分の容姿について、周りの子たちみたいに『キレイに見られたい』『彼氏が欲しい』『嫌われたくない』なんてメイクとかオシャレに気を使いたくなかった。
でも、成長していったら、胸がどんどん膨らんで、目立つつもり無いのに男子に声かけられるようになった。
当然、交際に興味ないから、断ってばかりいたら、今度は女子がいちゃもんを付けてきて、軽い嫌がらせを受けるようになった。
意志とは裏腹に、胸は膨らんでいく。
高校2年の春には、コンビニに並ぶエロ本の表紙に載りそうなくらいにまで成長した。
うちは、必死に胸を小さく見せた。
何時しかうちの陰でのあだ名?悪口?が「乳お化け」「軽い」「援交してる」とか。
乳お化けはまだ許せる、自分でも思うから。援交とか軽い、は…。
やっと“サラシ”を見付けた時は泣きたいくらい、嬉しかった。
“干物女”でも別に何とも思わない。
30になったからって、焦ってなかった。
サラシを着けだしたことでうちはまた、好きなことに熱中出来たから。
ホンマ、至福や。
幼稚園から一緒の親友で幼なじみの渋谷すば子も、そんなうちを理解してると思ってた。
す「ひな、合コン行こ」
ひ「うち、そういうのんきらいやねんか。他の子誘いよ」
す「ちゃうねん、もうひなしか居らんねん、誘う人。お願い人数合わせなアカンねん。しゃべらんでええから。居るだけ」
ひ「…何を奢ってくれるん?」
す「ひながハマってるミステリー作家さんの新刊代全部」
ひ「うちが飽きるまで?」
す「もちろん」
すば子は楽器店店員やから、そんなにある訳やない。
けど、それだけうちが必要なんや、って解った。
「座ってるだけな」って約束して、12.23に居酒屋に行った。
それが仕組まれた事だとも知らず。
ただただ、憂鬱な一時を過ごすために。
皮肉にも翌日は土曜で、薬局は休み。
ひ「…」
もう歯車は回り始めてた…。
続