こんにちは、獣医師の田村です
先日のブログでを少し触れたキシリトールについて
今回は詳しくお話ししたいと思います
キシリトールは今や一般的になった天然甘味料です。
元々は北欧諸国で多用されていましたが、90年代後半に日本でも食品添加物として認可を受け広がり、現在はガムやタブレット、歯磨き粉などに使用されています。
人間にとっては、
・カロリーが低い
・口の中で虫歯菌が好む酸の産生がほとんどない
・ミュータンス菌の増殖を抑える
・長期的に摂取しても安全
というメリットの多いキシリトール。
ですが犬にとっては誤食により命を落とすこともある、とても危険なものなのです
まず、どんな症状がでるのでしょう
犬がキシリトールを摂取すると、『インスリン』という血糖値をさげるホルモンが大量に分泌されます。
これにより低血糖が起こります。
低血糖は命を落としうる大変危険な状態です。
低血糖により、嘔吐・虚脱・痙攣(けいれん)などの症状がみられることがあります。
最終的には脳に障害を起こし、昏睡状態となります。
(余談ですが、私も2回ほど低血糖を起こしたことがありますが、冷や汗が止まらず手足が震えて意のままに動かず、大変恐ろしかったのを今でも覚えています)
また、大量に分泌されたインスリンにより肝障害を起こすこともあります。
実際にキシリトール中毒になった小型犬を診察したことがありますが、その子は運ばれてきた時にはぐったりと意識が朦朧(もうろう)。
血液検査をしたところ、血糖値が正常値を大幅に下回る低血糖
肝臓の酵素は正常値を大幅に上回る肝障害の所見がありました。
その子がキシリトール中毒になってしまった理由は、キシリトールガムの誤食でした
飼主さんが前日の夜に置きっぱなしにしておいたコートのポケットに入っていたキシリトールガムを朝方に見つけたようで、飼い主さんの寝ている間に誤食。
朝起きたら喰い散らかされたキシリトールのガムと包み紙の横で愛犬がぐったりして、慌てて来院したそうです。
一時は危険な状態に陥りましたが、幸い発見が早かったために一週間ほど入院したのち、無事に退院できました
では、どの位の量を摂取すると中毒を起こすのでしょうか
犬の中毒量は体重1㎏あたり0.1gと言われています
つまり5㎏の犬では0.5g、10㎏の犬では1g摂取すると中毒を起こします。
キシリトールガムに含まれるキシリトールの量は様々で、コンビニなどで売られているものよりは歯科用のガムの方が高い含有量を持ちます。
このため一粒当たりの含有量は0.2g~1.37gと幅があります。
ちなみに、私が今朝コンビニで買った某有名メーカーのキシリトールガムは一粒当たり0.5gでした。
ということは、少なくとも小型犬はたった一粒食べてしまっただけでも重篤な中毒を起こす恐れがあるということです
万が一、愛犬が誤食してしまったらすぐに動物病院へ連れていきましょう
また、キシリトールが含まれている食品は愛犬の手の届かないところに置くなど、誤食予防を徹底しましょう
コートのポケットやカバンの中など、くれぐれもご注意ください
~追記~
噛み終わったガムを誤食してしまった場合はどうなのでしょう
とあるガムのメーカーに問い合わせてみたところ、
『噛み終わったガムにも、新品のものに比べるとすくなくなってはいるが、キシリトール含有量がゼロではないため、リスクはあると思われる。』
とのことでした
また、ガムは消化できないため消化管内異物となるリスクもあります
誤食にはくれぐれも気をつけたいものですね