雑談力 | Meta☆。lic2ch

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PHP Biz Online 衆知『THE21』6月号の

[総力特集]誰とでも無理なく話せる「大人の雑談力」(第1部)では、各界で活躍する8名の方々にそれぞれの「雑談力」について語ってもらった。ここでは、そのお話から学んで「大人の雑談力」を身につけていくために重要なポイントをまとめた。これを道標として、“1つ上の雑談力”をめざそう!


◆大人の雑談力(1)◆ まず「他者」に関心を向ける

   
 さまざまな分野で活躍する達人たちだが、その雑談には大きく共通する特徴があった。その1つが「他者志向」であるということ。

 「沈黙が気まずい」「こんな話をしたら、相手から馬鹿にされないか」……そんな気持ちから、雑談があまり得意ではない、という人も多いだろう。しかし、冷静に見つめ直してみると、それは自分のことばかりが気になっている状態であり、相手への視点が欠けていることに気づくのではないだろうか。

 達人たちは違う。“スーツ販売のカリスマ”〔株〕AOKI常務の町田豊隆氏が「雑談の主導権はお客様が握っている」と語るように、できる人たちが雑談するとき、その念頭にはつねに他者がある。ジャーナリストの田原総一朗氏が「自分の失敗談から話す」というのも、緊張する相手を思いやってのこと。クリエイティブ・ディレクターとして活躍する山本高史氏の言う「自分と他者の経験を重ね合わせる」という視点も、「他者志向」があってこそ獲得できるものだ。
 「何を話したらいいだろう」と思い悩むのではなく、「この人とどんな話ができるだろう」と重心を目の前の相手に移してみる。精神科医の名越康文先生は『質問の天使』という言葉で表現していたが、相手の主体性を活かそうと意識することで、それまでとは違った質の雑談ができるようになるはずだ。

◆大人の雑談力(2)◆ 自分から能動的に動く

   
 もう1つ、達人たちの雑談に共通する特徴を挙げるとすれば、それは「能動的」であるということだ。

 雑談は、あらかじめ行なうと決められているものではない。日常の合間に突発的に生じるものだ。だからこそ、多くの人はなんとなくやり過ごしてしまうのだが、達人たちは決してそうではない。

 史上最年少で東証一部上場を果たした〔株〕リブセンス社長の村上太一氏は、「ブログやSNSをチェックして、相手がどんな本を読んでいるか知っておく」と語っていた。明治大学の齋藤孝先生もまた、「普段から周囲の人が関心を持っている事柄を押さえておいて、“鉄板ネタ”を準備しておく」ことを勧めている。雑談という突発的な会話についても能動的な準備をしているからこそ、彼らは充実した雑談ができるのだ。

 もちろん、ただ準備をするだけでなく、自ら行動を起こす点も大切だ。横浜市長の林文子氏は、庁舎ですれ違う職員に声を掛けて、積極的に雑談をしているという。「相手が歩み寄ってこないのであれば自分から歩み寄る」。この姿勢があるからこそ、「意味のある雑談」が可能になるのだ。

◆大人の雑談力(3)◆ より長い視点で考える

   
 齋藤孝先生は、「雑談はその場の“空気”を作り出すもの」だと解説してくれた。アサヒグループホールディングス〔株〕の泉谷直木社長は、経営における同様の事柄を「風土」という言葉で表現している。目には見えないけれど、そこにたしかに存在し、知らず知らずのうちに大きな影響をおよぼす……雑談は、そうした重要なものに関わる営みなのだ。

 しかし、会社の風土が一朝一夕で形成されるものでないことは言うまでもない。雑談が場の
空気を変え、その会社の風土を作り上げるには、ある程度の時間がかかるだろう。

 しかし、すぐに目に見える効果が現われないからといって、諦めてはいけない。林文子氏が、横浜市の職員たちの意識を変えるために「余計なこと」を言い続けたように、きっと芽が出ると信じてやり続けることが大切なのだ。

 漢方薬を飲み続けることで体質が変わっていくように、雑談もやり続けることで、自分の行動や周りの人たちの反応は必ず変わってくる。雑談という時間的にはわずかな行為を、より長い視点で捉え直すことが、「大人の雑談力」を身につけるには必要なのである。

『THE21』2012年7月号総力特集[プロビジネスマンの「大人の話し方」]第1部では、7人の経営者や話し方のプロに「大人の話し方」について教えていただいた。

その話を総合し、導き出した4つのポイントをまとめよう。



見た目も自己演出し堂々とふるまう

 総論を話していただいた矢野香氏は、『その話し方では軽すぎます!』という著書の帯にある写真とまったく同じ服装でインタビューの席に現われた。本のタイトルイメージに合わせた服を3着揃え、関連する取材の際はいつも身につけているという。このように、「相手に信頼感を与えるには、外見を整え、発言の内容と外見のイメージを一致させることが重要」だと話す。

 重田みゆき氏も「『大人の話し方』にはノンバーバル(非言語)の要素も重要」と話す。たとえば待ち合わせの場所で立っているとき、相手の待つ部屋に入るとき、すでにコミュニケーションは始まっている。重田氏には外見から大人らしくみせる方法をうかがったが、「自然にできるようにはならない。練習し、意識的につくる必要がある」とのこと。多くの人は、まずこの部分から錬習が必要のようだ。



正しい言葉遣いとわかりやすい構成

 矢野氏は「大人の話し方」とは、「確実性、信頼性を重視し、落ち着いた、重みのある話し方」だという。それには、正確な数字や具体例を出し、情報源を明らかにすることや、「事実と感情を分ける」ことが重要だとする。たしかに、自分の主観や感情ばかり主張するのは、いかにも子供っぽい。大嶋利佳氏も、「正しい言葉を選ぶことと同時に、いいたいことを論理的に伝える構成力が重要」という。

 あきんどスシロー専務の加藤智治氏も、「ロジカルな話し方はわかりやすい」と話す。しかし、加藤氏は「それだけでは面白い話とはいえない」という。内容を伝えるだけなら、コミュニケーションとはいえない。相手の反応や行動がその先にあるからコミュニケーションなのだ。そして、相手の反応を得るには、エモーショナルな要素もうまく入れる必要がある。



相手の立場に立って想像しながら話す

 前述の加藤氏、一休社長の森正文氏、アキュラホーム社長の宮沢俊哉氏と、経営者3人が揃って口にしていたのがこの条件だ。森氏はホテル営業の経験から、「まずは相手に興味をもち、それを伝えることが必須」と話す。また、それによってときには相手の機嫌を損ねそうになるほど「心臓ギリギリをえぐるくらいのボールを投げる」こともあるという。そうすることで、本気であることを示す。

 宮沢氏は、講演会などでは相手に合わせた話し方を心がけているという。また、業界においてさまざまな改革を行なってきたときにも、「まずは相手の立場に立ち、共感し、敬意を払うことから始めた」。相手を動かすためには、「これを実現したい」という確固たる思いと同時に「どうしたら相手もそれをやりたいと思えるか」ということを考えることも必要なのだ。



必要以上に自分を大きくみせようとしない

 森氏は、自分をよくみせようとしてはいけない、と話す。失敗したくないという気持ちが強くなって、相手の話に対して上の空になるなど、肝心の言葉のキャッチボールがうまくいかなくなるからだ。

 話し方講師の野口敏氏も、「知ったかぶりや自慢話など、自分を大きくみせようとして話題を選ぶのは逆効果」と話す。相手の気持ちを無視して一方的に話すことになり、かえって狭量な人間だと思われてしまう恐れがある。逆に、ありのままの自分をみせる「自己開示」は効果的。相手の気持ちに寄り添った話であれば、たとえ失敗談を話したとしても、かえって器の広い人だと思ってもらえる。それは、「この人なら、自分の気持ちを理解してくれる」という信頼感にもつながるだろう。自分の弱みをみせられる人こそ、一目置かれる存在なのだ。