☆彡課題本:『だれも知らない小さな国』佐藤さとる

 

 

今回初めての児童文学ということで。ひねくれもののわたしはちゃんと読めるだろうかと心配。といってもこれを選んだのはわたしなのですが。。。。おねがいもう随分昔にいただいたこの物語を、わたしはいつでも読めるだろうと暫く読まないまま本棚へしまっていたのですが、ふと、突然気になり読み始めるととても面白かったことを憶えています。そしてなぜその人が、この物語を贈ってくださったのかも納得。その方は、アメリカ先住民、ホピ族が長年発信し続けてきたニューズレター「テツカ・イカチ」(全44号・1975年~1991年)の翻訳を手掛けていましたので、すぐにこれが、わたしの好みの本だから手渡された、というのではないとわかりました。

 

ただ今回は、そういったメッセージ性だけではなく、できれば子どものこころに戻って読みたい。みなさんもきっとそんな気持ちで読んでるにちがいない。。。。。。。。

 

「主人公はおちび先生の女心をわかってない!チュー

「ふたりはくっつくんや、と思ったらちゃうんかい!」

 

おもいもしなかった恋愛のテーマがいきなりさく裂しまして、わたしはキョロキョロ。。。。。。アセアセあれ、そ、そうなの? これは秘密基地と友を守る子どもの物語じゃないの?汗、汗。。。。叫びとなったのですが。ここに描かれている「関係性」や「かかわり方」に興味を持たれた方は多くいらっしゃいました。小さな世界やおちび先生に対して支配的ではなく、対等に話を聞くセイタカさんのスタンスが好ましいという話や、戦争前後の時代が描かれているのに、家族や夫婦などの存在は感じられず、個人としての存在や、ゆるやかな繋がりで世界が描かれていることへの驚き、園長先生が女性であることも興味深いという話が出ました。こういった世界を守るために父を物語の中で殺したのでは? 家父長制を持ち込まないため?など。家族などが描かれていないのは、戦後家族を失った人たちがたくさんいたから配慮されたのでは?などという意見もありました。

 

ファンタジーとして読もうとすると、戦争や道路建設などリアルな物語が入ってきて、のほほんとした話ではないことに気づいたという方、カエルの皮を被るなんて発想がすごい!という方、ふきの匂いで記憶がよみがえるというのとてもわかるという方、もし女性が主人公だったらどんな物語になっていただろう、主人公(子ども)中心、視線で描かれているから物語の描写に偏りも出てくるのではないか、などなど面白い感想やお話がたくさん。

 

この物語は具体的な家族構成やその性格だけではなく、氏名などもでてこず、登場人物はその特徴や、神様のような樹木の名前で呼び合います。また一冊の物語の中で何度も何度も小山の季節は変わり、それを木々や花々が教えてくれる静かな時間の流れがあり、その閉じられた空間で共有される秘密には、子どものころの秘密基地や宝物に触れるような喜びが感じられます。そんな中で立ち上がる現実的な問題と破壊。子ども向けの物語であるならば、ここで魔法や不思議な力で戦うという展開を見せるのでしょうが、この物語はそういった特別な力は与えず、登場人物の特徴を生かすことや現実的な手段で立ち向かっていきます。わたしはこの展開に作者の存在を感じずにはいられないなと思いました。子どもの頃に戦争を体験した人たちにとって、その不条理な破壊と別れに立ち向かう術はありませんし、町や家、死者を生き返らせる魔法も救う神の存在もそこにはなかったのだろうと。それでも作者は弱い立場に立たされてしまった人たちを救うために、神という存在や祟りといったようなものを、現在にあった作者特有のロジックで復活させたかったのかもしれないなぁとも思い。元々呪詛や神憑りといったものもそういった人たちの生活を守るためにあったといいますし、とても切実な思いがこめられているかもしれないなと感じました。

 

コロボックルはいる、けれど時間の流れもスピードも違うから出会えない。コロボックルがこちらに合わせてくれないと出会えないし話せない。けれど時々気配感じることない? というわくわくする設定は絶妙で、わたしはコロボックルにとても会いたくなるのです。

 

コロボックルを見ないように、信じないように生きていく人生は楽なのか苦なのか。豊なのか貧しいのか。一生かけてだれもが考えていいテーマだなぁとわたしは思いました。

 

眠気でまとまりのないblogになってしまいましたので、ここで、「見ながら読んだら迷子になるわ!」と不評だった挿絵の地図の画像をえーん

 

 

今回もみなさまに大変お世話になり、助けていただきながら無事に開催することができました。こころから深く感謝申し上げます。

 

次回は

 

日時:2019年8月4日(日)13:30~

課題本:『たった、それだけ』(双葉文庫)宮下奈都

会場:大阪市内で調整中