家内の傍らにいた、僕と娘は脳神経外科の先生に呼ばれた
女優の戸田恵梨香さんに似た、若い女医さん…
娘に確認をとると、一緒に聞くとのこと…
先生が
「何年生?」
と聞くので
5年生だと伝えると
「キツいなぁ」
って言っていたなぁ
先生は努めて明るく、僕と娘に説明し始めた
「脳のCT検査の結果、動脈瘤の位置がわかったので、開頭手術をします。」
「手術中もしくは、手術に至る前に動脈瘤が再破裂したら絶命の可能性があります。」
「手術が成功しても、最初の出血で脳のダメージが大きければ、呼吸が戻らないかもしれません」
「意識が戻るのは、奇跡みたいなものです」
もう既に絶望的な状態なんだ…
いくつもの奇跡がなければ、家内の声を聞くことはできないんだ…
娘も打ちひしがれていた…
先生の説明を聞いてから
車で待っていた両親に娘を託した…
その後麻酔医の説明を聞いたが、それはほとんど覚えていない…
そして義両親に連絡した
大学生の長男から連絡も来た
午前中には帰ってくるって
僕はいくつかの書類にサインをした
3:00くらいかな?
手術にゆきますって事になった…
手術まで命は繋がった…
ストレッチャーに載せられた家内の後を追って手術室の前まできた…
家内はピクリともしないまま、重々しい扉の向こうに消えていった…
僕は待合室でひとり待つ事に…
テレビはある…
携帯もある…
漫画や雑誌がすこしある…
当然全てに興味が持てない…
ずーっと起きたことと、これからのことがひたすら頭の中をぐるぐると回り続ける…
そして時間は全く進まない…
何より現実感がない…
知ってる人は回りにいない…
頭はぽわーんとして、夢を見ているみたい…
でも
決してさめない…
夢からさめてみようと試してみたけど、どうにも現実らしい…
不意に男性の看護師さんが待合室にやってきた…
書いてほしい書類があるとのこと…
僕も書こうとしたのだけど、どうにも書けない…
見かねた看護師さんが代わりに書いてくれた
僕の顔は余程凄絶だったらしく、看護師さんが少し話をしてくれた…
「家内さんはかなり重篤ですか、倒れてすぐに救急で命を繋ぎ、すぐに手術をした、我々が考えられる範囲では最速です。」
「家内さんはまだ若いから、回復に向かうと思いますよ。」
看護師さんが部屋を後にした
携帯をチェックすると、娘からショートメール
(ママは◯んじゃうの?)
先ほどの男性看護師さんの言葉を電話でそのまま伝えた
娘はかなり安心したらしい
非常に心強い言葉だったことは間違いない
そしてまだまだ長い時間は続く
ひたすら自分を見つめる
数時間前に家内と過ごした車の中での不思議な時間を思い返す。
あまりにも美しいお別れの時間…
アレが最後なのかなぁ…
本当に最後っぽいからなぁ…
キツいなぁ…
最後の思考はそんな感じで…
7:30
手術が終わった…
手術が終わったって報告が来たって事は、家内は生きてるって事だ
希望は何も持てないけど家内は生きている…
家内と家を出てから8時間位かな??
もっと長かった気がするけど…
待合室で話した男性の看護師さんもそうですが、本当に頼りになります。
看護師さんに何度も救われました。
本当に尊敬いたします。