充電器を購入して
病院に慌てて戻ると
救急外来の外で受付の女性が僕を探していた…
「すぐ呼ぶ可能性があるので、中でお待ち下さい」
つまり
家内の人生がすぐに終わる可能性が濃厚にあるって事だ…
状況が非常にシリアスだって事は、ド素人の僕にも理解できる
わかりやすい命の危機が家内に訪れている
「1番前の椅子でお待ち下さい」
僕はこの椅子に一度もお尻をつけていない…
そこからどのくらいの時間だろうか
ずーっとウロウロしていた…
ずーっと頭の中は、色んな事が渦巻いていた…
家内は多分ダメだろう
お葬式かなぁ
娘は5年生だけど僕ひとりでなんとかなるかなぁ
あの時、バレエのコンクールに行ったなんて言わなければなぁ
家内は本当に幸せだったのかなぁ
僕は(優しい人)になれるかなぁ
今、どんな処置がされているのかなぁ
まにあわなかったなぁ
とりとめのない思考が頭をぐるぐると回る
それと同じように、僕もウロウロする…
そんな感じだ
救急外来に両親がきた
娘の側にいてくれるように頼んだ
暫くして
救急センターの先生に呼ばれた
医師の説明が始まる…
「家内さんに起こったのは、くも膜下出血です。」
「病院の駐車場に着くまでは、くも膜下出血は起こっていなかったと思われます。」
「待ってる間に起こったと思います。 タイミングが非常に悪かったと思います。」
「家内さんのくも膜下出血は5段階で表すなら、1番悪い5です」
「意識も呼吸も奪われるような、1番深刻な状態です。」
「今は気道を確保して、命を繋いだ状態です。」
「これからCT検査を行い、治療が可能かどうか判断します。」
「キツいことししか言うことができません…」
とのことで…
治療すらできない可能性があるって事だ…
少しして
両親が娘を連れてきた…
お母さんに会いたいらしい…
病院の計らいで娘を通してくれた
僕と娘は、家内の横に通された…
家内は
口に色んな管が通されて、目は半開き、時折嘔吐反射で嘔吐いている
生き物と物の境目にいた…
家内に触っても良いかと確認すると、手に触れても良いとのこと…
娘が昂って、家内の顔に触ろうとしたとき、救急の先生から大きな声が飛ぶ
「動かさないで!!」
「今は刺激を与えないで、この状態を保存するのが最善です。」
医師も戦ってる
家内も戦ってる
まだ命の戦いの真っ只中なんだ…
この状態の家内を娘に会わせたのはどうなんだろうか?
意見は割れると思う
でもね
体温がある家内に会わせないとって思ったんだ
むすめが、これから先の人生を強く生きるために…