・前置き②



あまり参考にはならないかもしれないが、4年前に逝こうとした時の心境や身体に起きた反応について記す。


私は逝くこと自体は怖くなかった。

ただ逝く前の苦痛は嫌だった。


だから苦痛がほとんどないと言われる定型道釣りを選んだ。

ここまではいい。


一番の問題は、台から飛び降りようとしても身体が動かなかったことだ。


道に縄を通して、高さ数十センチの台から飛び降りるだけ。

動作自体は非常に簡単だ。


しかし、それができない。

正確には、飛び降りようとする気さえ起きなかった。


飛び降りるのが怖い以前に、飛び降りる気が起きないのだ。


それまで逝く気満々で準備をしてきたというのに、いざ逝こうとすると気が抜けてしまったのだ。


これも防衛本能の一種だろうか。


だからといって簡単に引き下がるわけにはいかない。

私は何度も自分に言い聞かせた。


この世界がどれほど残酷かを。

この世界に留まることがどれほど無意味かを。


すると、今度はやたらと指先が気になってきた。

見ると、指先の皮がほんの少しささくれだっていた。


馬鹿かと思った。

これから逝くのに指先の皮なんか気にしてどうする?


しかし、気になって仕方がないため、一旦台から降りて爪切りで皮を切りにいった。


これで気は済んだかい?

じゃあ逝くぞ?


私は再び台に登り、道に縄をかける。

だが、やはりそこまでだ。

飛び降りる気がしない。


そうしてグズグズしているうちに、また指先が気になってきた。

さっき切ったはずなのに、また指先がささくれだっている。


気になって仕方がないので、また切りに行く。

台に戻る。


そして、またグズグズしているうちに指先が気になり出す。

その繰り返しだった。


それから、やたらとトイレに行きたくなった。

普段から頻尿気味の私ではあったが、この日は特にひどく、1時間も経たないうちにまた行きたくなる有様だった。


実行したのが10月の初頭で、まだ暑かったので、水を飲まずにはいられなかった。


逆に食欲は全くなかった。

朝食は普通に食べたが、昼になっても全く腹が減らなかった。

午後3時になっても減らなかった。


午後3時過ぎ。

母親が帰ってきたので中止せざるを得なくなった。


事を成せず悔しいと思う一方で、ホッと安心する自分がいた。


情けない。

だが、まあいい。

明日逝けばいいだけのことだ。


母親に怪しまれないよう、私は意識を切り替えて普段通りに振る舞った。


急激に腹が減ってきたのでパンを食べた。

夕食も普通に食べた。


翌日も特に体調不良は見られなかった。

普通にゆっくりと眠れた。


しかし、逝く気がすっかりと失せていた。


昨日の夜までは、また挑戦しようと意気込んでいたのに、この日はもう準備する気さえ起きなかった。


その後、何日経っても逝く気が起きなかった。

別の方法を考える気も起きなかった。


ついには、こんなことを考え出す。


まだ30代半ばだし貯金も残っている。

慌てることはない。

逝くのは5年後でも10年後でもいい。


そのうち運良く逝けるかもしれんしな。


それから4年近くの月日が経ち、今へと至る。