今回のブログは今月の日本小児科学会の機関誌に載っていた内容です。
今回の論文のように、代替療法や自然療法以外でも、西洋医学の学会でも腸内細菌のことは注目されてきています。
以下、日本医科大学小児科の山西愼吾先生による論文を私が要約したものです。
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(以下、日本小児科学会雑誌 120巻11号 1587~1596より要約。)
胎児は無菌環境にいるが、出生直後から有菌環境になる。
生後数時間から腸内細菌の増殖がはじまり、
生後3日、生後1か月にかけて様々な腸内細菌が優勢となり、腸内細菌叢はダイナミックに変化し、徐々に完成する。
離乳食を開始するころから、成人の腸内細菌叢に近づく。
乳幼児期早期の腸管は機能が未熟であり、腸内の細菌叢より様々な刺激を受けることで成熟していくと考えられている。
<粘膜免疫>
腸管粘膜には、病原微生物の侵入を防ぐために粘膜免疫システムが存在する。
消化管内では、共生細菌、腸上皮細胞、粘膜の3者が相互作用をすることで防御システムを構築している。
<抗菌薬と腸内細菌叢>
腸内細菌叢には、「重要な細菌群」が存在すると考えられている。
「重要な細菌群」が存在しない場合には、粘膜免疫システムは正常に発達できず、異常を抱えて発達してしまう。
さらに、乳幼児期に形成された腸内細菌叢は老年期まで大きな変化をしないとも考えられている。
つまり、乳幼児期に抱えた異常は一生正常化しない可能性もあり、「腸内細菌の攪乱」が生じると、粘膜免疫システムの異常 → 全身免疫システムの異常 へとつながってしまう可能性がある。
乳幼児期早期の「腸内細菌の攪乱」の原因は、栄養方法、分娩様式、抗菌薬(抗生物質)が挙げられる。
特に抗生物質の使用に関しては、以下の弊害が言われている(Vangayら 2015年)
(1)「重要な腸内細菌叢」の消失
(2)腸内細菌叢の多様性の減少
(3)代謝システムの変化
(4)病原微生物の活性化
乳幼児期という粘膜免疫システムの発達に重要な時期に「重要な腸内細菌叢」を失うと、粘膜免疫システムの発達が遅延する可能性がある。
また、場合によっては、もとの腸内細菌叢に戻らない可能性もある(「No recovery」)。
このような状態になると、腸管は粘膜免疫システムを含めて正常に発達しないため、病気の発病につながる恐れがある。
特に乳幼児期早期の抗生物質投与では、「No recovery」の過程をたどる可能性が高いので、抗生物質の投与は慎重に考える必要がある。
抗生物質投与の後にどのように回復するかに関しては、抗生物質の種類や投与期間などが関与する。
<乳幼児期の抗生物質の投与によりリスクが高くなる疾患>
・アトピー性皮膚炎
・自己免疫疾患、炎症性腸疾患
・肥満
<結語>
乳幼児期早期の腸内細菌叢は、免疫システムの正常な発達に重要。この時期の腸内細菌の攪乱は、免疫システムの異常を抱えて発達するリスクとなり、その異常は生涯にわたり持続し、のちに全身の免疫異常を誘導してアレルギー、自己免疫疾患などの発症につながる。
発症を予防するための腸内細菌叢の評価方法の確立と、腸内細菌の早期修復法の確立が大切である。
(引用と要約はここまで。)
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1歳前後から、風邪の時などに抗生物質を毎回処方されている小児をよく見かけますが、
抗生物質の乱用はやはりリスクです。
今回の論文の内容は、我々のような代替医療の医師の間では常識なのですが、まだまだ一般的な小児医療の現場では感冒の時など抗生物質を多用している場面は多いです。
なので、このような論文が小児科学会雑誌に載ったことは大変意義深いです。
抗生物質は非常に優れた薬剤であり、抗生物質により感染症が減少したおかげで現代人の寿命を延ばしましたが、使いすぎると今度はニンゲンがやられてしまいます。
「今が抗生物質を使うべき時」というタイミングは存在します。
また、抗生物質を使ったら使ったで、腸内細菌をリカバリーさせることは大切で、私の所でも腸内環境に関してはしょっちゅう指導しています。
腸内環境の大切さを知り、抗生物質は適正に使用し、子どもたちの将来を守りたいものです。、
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・私個人の主観的な意見による記事ですので(当然、偏りがあります)、内容の解釈に関しては各人の判断でお願いいたします。
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・アメンバー申請が何件もきていますが、
申請の際に、メッセージのない方は承認いたしませんのでご了承ください。
簡単な自己紹介と、どういう理由で申請されたかなどを教えていただけるとありがたいです。
お手数ですがよろしくお願いいたします。
Dr.SHUTO
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