パラドーピングに使われた「メタンジエノン」について

 

日本薬剤師会が作成した「薬剤師のためのアンチ・ドーピングガイドブック2017年版」には、メタンジエノンが「禁止物質」として記載されている。

「いわゆる筋肉増強剤として、筋力の強化と筋肉量の増加によって運動能力を向上させ、同時に闘争心を高める目的で使用され、様々な投与方式で大量に使用されるため禁止」。

 

メタンジエノンは、日本では薬として認められていないが(医師が処方したりはしない、薬屋さんで市販されていない)、海外ではサプリメントとして販売されているところがあり、渡航先で購入することは可能。また、インターネットでは、海外からメタンジエノンを取り寄せて販売する業者があり、国内で入手することは容易。自己責任で服用することは法律では規制されていないようだ。

 

科学的に製造された男性ホルモンの一種であるテストステロンの一種である。メタンジエノンを摂取する事で体内の男性ホルモン濃度が高まり筋肉が増強されやすい環境になる。また、骨髄の機能を高めて赤血球を増やす効果もあるという。

 

メタンジエノンは人間の体の中ではつくられない成分であり、検出されれば「外から入ってきたもの」だとすぐに分かってしまう。ドーピング検査で引っかかるのは明白だ。

血液中の半減期が短いが、尿検査では、1~2日ぐらいはひっかかかる。

 

副作用は「肝臓への影響」。「薬剤師のためのアンチ・ドーピングガイドブック」にも、メタンジエノンを含む蛋白同化薬について、肝臓がんなど「致命的な有害作用が発生」と書かれていた。「脂質異常症、HDLコレステロールの低下、血圧上昇など心血管系障害の発症も示唆」ともある。

ただし、今回のように、少量服用による副作用が生じる可能性はまれ。

 

メタンジエノンの効果が加速してくるのが、服用後、68週間目。長期間摂取すると肝臓に負担がかかり副作用が強く出る危険性もあるので、海外の販売業者は、8~12週間で使用をやめた方がよいとも言っている。


ドーピングで禁止されている物質には、様々なものがあるた、今回の男性ホルモン用物質が最も多い。(蛋白同化薬)。全体の約半数を占め、効果が出てくるまでに数週間がかかるが、ドーピングで禁止されている物質には、そのほか、興奮薬などに即効性のあるものもある。


私の雑感

日本でも、海外のアスリートのように飲食の自己管理の徹底、警戒が求められつつあるのはわかります。しかし、一人の悪質な選手の事件のために、今後、国内でも、飲み水や食べ物に薬物が混入されていることを危惧し、選手同士が過度に疑わなければならない環境になることは残念だとも私は思います。

時代が求めているのでしょうか。