朝のカンファレンス、研修医が担当した新規入院患者さんのプレゼンテーションをする機会などで、恥ずかしながら変な言葉が飛び交うことがあります

 

最近気になっているのが

 

「腎機能が上がる」

「肝機能が上がる」

などです

 

どこかで聞いたのか、どこかで読んだのか・・・、ともかく不思議な言葉です

 

僕自身はこの言葉を使わないので、憶測になるのですが、これらの言葉の意味はおよそ次のような感じだと思います

 

 

腎機能が上がる

→BUN(血清尿素窒素)やCr(血清クレアチニン)の検査値が上昇している

 

肝機能が上がる

→ASTやALT、ALPやγGTPなどといった肝胆道系の酵素の検査値が上昇している、血清ビリルビン値が上昇している

 

 

 

BUNやCrが血中に溜まっているということは、腎機能は低下しているはずですよね

 

腎の機能はいろいろありますが、もっとも大事な機能は不要な物質を体外に排泄することですから

 

あとトランスアミナーゼでは肝機能はわからないのではないかと僕は思っています

 

肝臓は予備能が高く、多少肝細胞中の酵素などが出てきても、肝臓の機能が維持されていることが多いのです

 

肝機能を知りたかったらコリンエステラーゼやコレステロールなどの肝臓で産生されるはずの物質に着目するのが筋ではないかと思いますが、なぜかASTやALTの検査結果に着目して肝機能について論じることが多いです

 

さらにASTやALTの値が上昇している時に、肝機能低下ならまだしも肝機能上昇などと言うので混乱の元です

 

 

 

なぜこんなことになったのかとあれこれ考えてみたのですが、はっきりした原因はわかりません

 

多分略語なんじゃないかとは思うのです

 

腎機能を反映するBUNやCrの値が上がっています

 →腎機能が上がっています

肝機能を反映する(しないけど)トランスアミナーゼの値が上がっています

 →肝機能が上がっています

 

といった具合ですかね

 

 

真偽を確かめようもないですし、原因がわかったところで改善できるわけでもないのでなんともかんとも

 

毎度カンファレンスでこれらの言葉がでてくるたびにお小言のように訂正していくのですが、とても自分が小さい人間になったようで嫌な気持ちになります

 

言葉は生き物で、姿形を変えながら社会に定着していくものだとは思います

 

流行り言葉みたいに廃れるものもあれば末長く定着するものもあります

 

独壇場などは独擅場の書き間違いから完全に意味が移行してしまった言葉です

 

そんなんありかと思いますが、定着してしまったものは仕方ないです

 

会いたいやうれしいを「あいたみ」や「うれしみ」と言ったりするのも今年流行っていますが、定着するような気がしています

 

こんな感じで肝機能や腎機能が上がってる人が増えていくのかもしれませんが、やはりプロが使う言葉なので、ちゃんとしたほうがいいんじゃないかと思います

 

これってもしかして僕がおっさん化しているんですか?

 

 

言葉狩りみたいでとても嫌だなとは思うのですが、やっぱりちゃんとした言葉を使った方がよいでしょうし、恥ずかしい思いをしてほしくないという気持ちもあるので、肝機能腎機能に限らず、ことあるごとに訂正してしまいます

 

研修医から

 

「PEGから栄養投与」

とか

「PEG造設」

 

って言われるたびに

 

「胃ろう造設術から栄養は入れないよね・・・」

「胃ろう造設術は造設しないよね・・・」

 

なんて毎回言い続けています

 

こうやって文字化すると本当に嫌なやつだと思いますし、自分の方が悪いような気にもなってくるのですが、やっぱり適切な言葉を使うことは専門家として大事なことなのではないかと思います

 

誰の気分も害さずに、羞恥心を刺激することなく、明るく指摘する方法があればぜひ教えてください!