胸部レントゲンの読み方シリーズ

今日は4回目

コレまでの記事はこちら


今日は前回の続き
「ルーチンワーク実践編2」

縦隔と横隔膜をみていくこととします



今更の話になりますが、僕が「右」といったら「向かって左」、「左」といったら「向かって右」を指しています

患者さんの右か左かということなので・・・・
今更ですが・・・
!(´Д`;)



まぁ気を取り直して・・・


まず縦隔ですがどまんなかに映る白い部分が縦隔です

まずは輪郭を追ってみましょう


辺縁はまっすぐではありません

それぞれに構造物がありこの曲線を作っています


右(向かって左)の一番大きいところが「右第2弓」と呼ばれる部分で、右心房があります


その上は出っ張りがはっきりしていませんが、上大静脈が張り出して「右第1弓」を作ることもあります


左(向かって右)の一番大きいところは左心室の部分で「左第4弓」と呼ばれます


その上の方にちょびっと左へ飛び出た部分があり、これが「左第1弓」で、大動脈を反映しています


残りの第2弓と第3弓はどこにいったのか・・・?


それぞれ肺動脈幹と左心耳を反映するものですが、正常ではあまりはっきりしません

はっきりと見える時には、肺動脈の拡張や左心房の拡張を考えなくてはなりません


さて、輪郭を見て行く中で、変に黒い部分が無いかどうかも見ましょう

辺縁に沿って黒い部分、すなわち空気が見えたら、それは縦隔気腫を意味するので、気管や食道が破れているのかもしれないです


胸が痛い人のレントゲンを見る時には覚えておいて下さいね



次に

右左の辺縁を追ってみたら、いちばん膨らんでいるところの長さを計ってみます

つまり心臓の最大横径をみます

そして胸郭最大内径との比をみます

この比を
心胸郭比
cardiothoracic ratio:CTR

と呼び、CTRが50%を超えていると心拡大があるのではないかと考えます

ただ、肺気腫の人などは胸郭が広くなるかもしれませんし、数字だけではいかんとも判断し難いので注意してください

例えば上の写真だと40%ですが、2日後に45%になっていたとしましょう

これは異常です
(;´Д`)ノ


まぁあくまでも参考の数値として判断して下さい
CTRという概念を知らないというのは問題だと思いますが・・・
ヽ(;´Д`)ノ



次にすすみまして、大動脈の陰影を追ってみましょう


左第1弓があからさまに左へ飛び出ていたら異常です(胸部大動脈瘤?)

また上記のようにストーンとラインが引けない場合には、やっぱり大動脈瘤を作っているのかもしれないので注意が必要です

大動脈陰影は石灰化して白くなっていることがあるかもしれませんが、その場合には大動脈陰影に沿っているか確認しましょう

大動脈外縁と内膜石灰化は2-3mm程度が正常範囲内で、これが6mm以上になると、大動脈解離を疑わねばなりません

もし胸痛の人のレントゲンを読むなら要注意!!!


あと、上の写真のように大動脈陰影が横隔膜ラインまできちんと追えるかどうかと言うのも大事な所見です

もし途中で追えなくなってしまったら、大動脈に接してなにか病変があるのかもしれません


本来見えるはずの陰影が見えなくなるこの現象を

シルエットサイン

と呼んでいます


心陰影のあたりで大動脈の陰影が追えなくなると、ちょうど大動脈に接する様な病変が疑われます

この場所は心陰影もあって、はっきりと異常所見が見えない場合も多々あります

なので、シルエットサインを気にして読影していないと見逃しにつながります

がんばってください★


大動脈を追ったら、心陰影が重なる肺野をじっくり観察します

ここも見逃しやすい、みえにくい部分なので、穴が空く程見ましょう


これで縦隔はおしまい


次に横隔膜!!

横隔膜は肺野一番下のドーム上の部分ですね

よく見ると線が2つ見えます

ドームの一番上のラインとドームの下の部分です

上のラインで横隔膜の高さを判断しましょう

右の横隔膜が、大体前肋骨で6番目、後肋骨で第10肋間のあたりにあればOKです


左の横隔膜は右よりも半肋間分くらい低いですが、これが正常と思って下さい


横隔膜がこれよりも上に挙がる原因としては、吸気がしっかりできていないか、無気肺があり肺が縮んでいるのか、横隔神経麻痺があるのか、胸水があるのかとかが考えられます


逆に下がっている場合は、COPDの成れの果て、肺の過膨張を考えます


高さを大体判断したら、しっかり2つのラインが追えるかを見ましょう

もしはっきりしなかったら・・・

そうです

シルエットサインです


横隔膜に接するようになにか病変があるのかもしれないと思わなくてはなりません

特にドームの頂上のラインが追えないなら、横隔膜と接するS8領域の病変が見込まれます


頂上のラインははっきりしているけれど、その下の部分が濁っている場合や、ラインがはっきりしない場合は、下葉の病変が疑われます


というわけで、ラインを追ったら、横隔膜部分の肺野もじっくり観察しましょう


左の方で、何やら黒い部分があります

これは胃や腸のガスを見ています

こんな風じゃなくて、横隔膜に沿うように黒い部分があれば、それは腹腔内のFreeAirを示唆するので、腸管穿孔を疑います!!

腹痛の人の胸部立位レントゲンを見るなら確実にチェックです!!


あと、CPAの角度については前回参照ください


最後に、今回話題にあげたシルエットサインについて、もしラインが追えなかったときに、どこに病変があると考えられるか、そのラインと接している肺区域を示しておきます


今後いろいろなレントゲンを具体的に提示しながら解説しようかと思います

またその時にこの画像を用いて解説しますね


というわけで

今日はココまで


次回は
「ルーチンワーク実践編3」
骨と軟部組織のお話をしていきます