いつもお読みいただきましてありがとうございます。
中学受験カウンセラー野田英夫(のだひでお)です。
【なぜ大学付属校ブームが起こったか?】
2016年度からの大学入試の定員管理厳格化、
そして2020年からの大学入試改革により、
いまの大学付属校ブームがある。
大学入試の定員管理厳格化により、大学入試が難しくなった。
実際に当時、大学入試は難しく、志望校のランク落としが頻繁に行われていた。
また、大学入試改革については明確な変更内容が打ち出されず、
入試への不透明感が保護者の不安を煽る結果となった。
そのため中学受験生を持つ保護者にとって、
将来への見通しが立たないという不安を解消する手立てとして、
大学付属校が見直されることになったのである。
それがいまの大学付属校ブームである。
大学付属校であれば、
過酷な大学受験をしなくて済む。
明確に6年後の見通しが立つことが大きな理由となった。
この大学付属校ブームにより付属校は人気が高まり、
それに呼応するかのように偏差値も軒並み上昇することになった。
【偏差値 ≠ 問題難易度】
この偏差値の上昇について、誤解なきように伝えておきたいことがある。
大学付属校の入試問題というのは、
「偏差値と難易度は比例しない」ということである。
つまり、偏差値は高くなったが、
けっして問題は難しくなっていないということである。
ご存じの方も多いと思うが、
私は15年以上前から早慶付属校を柱とする大学付属校専門塾を経営している。
今日は、その大学付属校の専門家として意見を述べたいと思う。
【“大学付属校”はお得な選択といえるのか?】
ネット記事などを読むと、
中学受験の専門家と称する人がこのようにコメントしていることがある。
「大学付属校に進学しても留年もあるし、大学への推薦をもらえない場合もある」
「中学受験で大学付属校を選択してしまったらもっといい大学への進学をあきらめることになる」などである。
言っていることは間違いではないのだが、
発想の視野が狭いし、
内容が旧態依然のままである。
まず一点目の「大学付属校に進学しても留年もあるし、大学への推薦をもらえない場合もある」という意見であるが、
これは大学付属校に限ったことではない。
どちらかといえば、大学付属校ではなく難関進学校の方の傾向が強い。
難関進学校というのは、6年後の大学受験を視野に入れているため、
毎日が競争競争の日々である。
成績が悪いと当然のように留年するし、それが続くと退学だってある。
なお、大学への推薦については、
難関進学校の場合、成績優秀者には推薦は与えられない。
推薦を与えると合格実績の数が稼げないからだ。
一般入試で多くの難関私国立大学への合格を稼いでもらうためである。
逆に、一般入試では戦えない成績下位の生徒たちに推薦が与えられることになる。
どうも発想が矛盾しているし、不公平感が否めない。
さて、私は「楽がしたいから…」という理由で、
大学付属校を選択することはやめた方がいいと、いつも言っている。
目的を持って中学受験してもらいたいと考えているからである。
かつて、大学付属校は「エスカレータで大学まで進学できる」と言われていたが、
それは昔の話である。
そんなに簡単ではない。いまはしっかり勉強してもらう環境となっている。
しかし、大学付属校の勉強というのは、
大学受験のための勉強ではない。
ぬるま湯ではない学校がほとんどである。
だから、目的を持って大学付属校を選択してもらいたいのだ。
次に二つ目の意見、
「中学受験で大学付属校を選択してしまったらもっといい大学への進学をあきらめることになる」というもの。
可能性としてはその通りかもしれない。
しかし、このコメントには大切なことが忘れられている。
中学・高校の6年間についてである。
中学・高校の6年間を大学受験のためだけの時間としていいのか、ということである。
「もっといい大学への進学をあきらめることになる」とコメントする人の発想には、
中学・高校というのは「いい大学に入るためのもの」という貧困な発想しかないのではないだろうか?
大学付属校に進学する一番のメリットは、
中学・高校の6年間を自分のやりたいことに打ち込めることにある。
繰り返しになるが、
だから目的を持って大学付属校を選択してもらいたい。
目的を持って進学すれば、
充実した学校生活となるからだ。
充実した学校生活を送れば、留年なんてありえない。
この「もっといい大学への進学をあきらめることになる」という専門家?の意見を真に受けてしまった場合の例である。
「明治大学の付属校」と「偏差値60の難関進学校」に合格した場合を例とすると、
この専門家?の意見を尊重すると、
「明治大学の付属校」はあきらめて、「偏差値60の難関進学校」に進学することになる。
(私の塾では、こんな併願はさせないが…)
しかしながら、
6年後、過半数はGMARCHレベルの大学に進学することになる。
GMARCHどころか日東駒専の場合だってある。
大多数が早慶以上に進学できる学校というのは、非常に限られているのである。
志望する難関進学校の進学先大学のボリュームゾーンを確認すればわかると思うが、
中学受験の難関進学校のほとんどが早慶以上に進学していないのが現実である。
【18歳人口約1,120,000人のうち】
東京大・京都大に進学できるのは約7,000人(0.6%)
旧帝大に進学で約20,000人(2.4%)
早稲田大・慶應大で約15,000人(3.8%)
GMARCH・上智大・東京理科大で約40,000人(7.3%)
日東駒専でも約53,000人(12.1%)
中学受験の受験生の中心は首都圏である。
しかし、大学受験は全国なのである。
さらに、難関大学になればなるほど現役生だけでなく、浪人生も加わることになる。
厳しい戦いになるのは必至である。
【6年後に大学で再会することも!】
中学受験で大学付属校に進学した生徒が、
6年後に自分よりずっと成績の良かった友人と、
大学で再会するということがよくある。
しかし、結局は同じ大学ではないか、と言いたいのではない。
この二人の大きな違いは、
6年間の時間の使い方である。
大学付属校で6年間を過ごした生徒は、
難関進学校に進学した生徒に比べて、
多くの豊かな経験を積んでいるということである。
大学付属校出身者の多くは経験値が高い。
そのためか付属校出身者にコミュニケーション能力が高い人が多いのは、
この経験の差なのかもしれない。
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