「夏休み、あれだけ勉強したのに偏差値が上がりませんでした」
9月になると、中学受験をする保護者から、こうした相談が増えます。
夏期講習に通い、毎日何時間も勉強した。
苦手単元にも取り組んだ。
本人なりに頑張った。
それなのに、9月の模試では偏差値がほとんど変わらない。場合によっては下がっている。
すると、
「夏休みに伸びなかったのでは?」
「このまま第一志望を目指して大丈夫?」
と不安になります。
しかし、ここで知っておいてほしいことがあります。
偏差値は「相対評価」です。
一方、子どもの学力の伸びは「絶対評価」で見てあげる必要があります。
この二つを混同すると、子どもの成長を見誤ってしまいます。
偏差値が変わらなくても、学力は伸びている
偏差値は、その模試を受けた集団の中で、自分がどの位置にいるのかを表す数字です。
つまり、「以前の自分と比べて、どれだけできるようになったか」を表す数字ではありません。
たとえば、夏休み前には50点しか取れなかったテストで、夏休み後に70点取れるようになったとします。
20点も上がった。これは明らかな成長です。
ところが、周囲の受験生も夏休みに勉強しています。
周囲も同じように点数を伸ばしていれば、集団の中での位置は変わりません。
その結果、学力は上がったのに、偏差値は変わらない。
ということが起こります。
偏差値を上げるには、自分が伸びるだけでは足りません。
周囲より大きく伸びる必要があります。これが「相対評価」です。
だから、学力は「絶対評価」で見てあげる
ここが、保護者に最も知ってほしいところです。
偏差値を見るとき、どうしても「あの子より上がった」「クラスで何番だった」「偏差値60を超えた」と、周囲との比較になります。
しかし、子どもの学力の成長を見るときまで、周囲と比較する必要はありません。
見るべきなのは、「夏休み前のわが子」と「今のわが子」です。
以前できなかった問題が解けるようになった。
計算が速くなった。
漢字や語彙が増えた。
理社の知識が定着した。
苦手だった単元で点が取れるようになった。
ケアレスミスが減った。
これらはすべて、偏差値にはすぐ表れないかもしれません。しかし、確実な学力の伸びです。
偏差値は「他人との比較」で見る。
学力は「過去の自分との比較」で見る。
この二つを分けて考えることが大切です。
「偏差値が上がらない=努力が足りない」ではない
ここを間違えると、子どもにとっても苦しくなります。
夏休みに本人なりに頑張った。できる問題も増えた。
それなのに模試の結果を見た親から、「これだけ勉強したのに、偏差値が全然上がっていないじゃない」と言われたらどうでしょう。
子どもからすれば、「じゃあ、あれだけ頑張った夏休みは何だったの?」となってしまいます。
だからこそ、保護者には偏差値だけで子どもの努力や成長を評価してほしくありません。
「前はできなかったこの問題が、できるようになったね」
「夏休み前より、ずいぶん計算が速くなったね」
と、絶対評価で成長を見つけてあげる。
これは単に子どもを褒めるという話ではありません。現在の学力を正しく把握するということです。
9月からは「偏差値」より「あと何点」
そして小6の9月以降は、もう一つ視点を変える必要があります。
「偏差値をあと5上げる」ではなく、「志望校の合格最低点まで、あと何点必要なのか」です。
中学受験の最終目的は、模試で高い偏差値を取ることではありません。志望校の入試問題で合格点を取ることです。
過去問を解いて、合格最低点まであと30点なら、算数であと10点、国語であと10点、理社であと10点。その30点をどこで取りにいくのかを考える。
こちらの方が、受験勉強としてははるかに具体的です。
9月の偏差値を「夏休みの成績表」にしない
もちろん、偏差値は重要です。現在の立ち位置を知るためには、とても便利な指標です。
ただし、偏差値=わが子の学力そのもの、ではありません。
偏差値は相対評価。学力の成長は絶対評価。
だから、9月の模試で偏差値が上がらなかったからといって、「夏休みは伸びなかった」と決めつけないでください。
まず見るべきなのは、「夏休み前と比べて、何ができるようになったのか」です。
そして、その次に「志望校に合格するために、あと何が必要なのか」を考える。
中学受験のゴールは、偏差値を上げることではありません。志望校の入試当日に、合格最低点を超えることです。
偏差値は相対評価で見る。
学力は絶対評価で見る。
そして入試は、合格点から逆算する。
この三つを分けて考えることが、秋以降の中学受験では大切なのです。
(文:中学受験コンサルタント 野田英夫)
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野田英夫(のだ・ひでお) 中学受験コンサルタント。大学付属校専門の中学受験塾「早慶ゼロワン」創業者。長年にわたり中学受験業界に携わり、早慶・GMARCHなど大学付属校受験を専門に指導。「中学受験に維新を起こす」を理念に掲げ、子どもと家族が幸せになる中学受験を提唱している。
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