人の皮膚は一度損傷により瘢痕が生じると、消し去ることは不可能です。
傷跡はなくならないと言うことが形成手術の大前提です。
形成手術では、目立つ傷跡を目立たなくさせる事が目的になります。
目立つ要因として、幅が広く面として存在する、傷の方向が不適当、凹凸がある、色が周囲と異なる、引きつれが見られる、などがあります。
これらの要素を個別に作り替えることで目立たなくさせるのです。
傷の幅が広い場合や凹凸が目立つ時は、単純縫縮と言って瘢痕部を切除、再縫合し一期治癒を促します。
傷を離開させる力を減弱させるべく、皮下組織、真皮、表皮と個別に縫合再建します(減張縫合)。
皮下縫合をせず表皮のみ縫合すると、表皮が深部の筋膜などに直接癒着し陥凹性瘢痕を生じます。
熱傷瘢痕など縫合できない広範囲の瘢痕は、収縮した瘢痕を切除して皮膚移植を行います。
傷跡はシワに対して平行に作ると目立たなくなります。顔面ではRSTL(relaxed skin tension line)と言われるシワの方向、四肢では筋肉の走行に直角な方向です。
この方向に直交する瘢痕は目立つ上に、拘縮による引き吊れや関節の動きに制限を生じ、傷跡の幅が広がり易いのです。
Z形成術、W形成術と言ったテクニックにより傷跡の方向を変えて拘縮を解除し、傷を目立たなくさせます。
傷跡を目立たなくさせる手術とは言っても新しい瘢痕を作ることになり、3ヶ月くらいは赤く硬くなります。
以後、徐々に柔らかくなり始めます。
完成は早くて半年後ですが、更に年月を経ると目立たなくなります。
皮膚移植においては、当初、色素沈着をきたし硬くなり、また縫合部の瘢痕も目立ちます。
初期は日焼け予防が大切で少しずつ日光に慣らしていきます。
移植皮膚が柔らかくなり、質感が周囲に近くなるまで7~8年かかります。縫合部は二次的に修正手術が可能です。
保存的な治療法としてはステロイド(ケナコルト)の瘢痕内への注射、ステロイドテープ(ドレニゾンテープなど)の貼布、トラニラスト内服、物理的圧迫、放射線治療などがあります。
傷跡形成、瘢痕形成、ケロイドの治療は、治療法にもよりますが、原則として日帰りで行えます。
治療費用は注射の場合で1万円から、手術の場合は部位と長さ、面積などの内容により異なります
基本20万円で長さ、面積により増額します。
リスクや合併症は感染、血種、ケロイドや瘢痕の再発や増悪などがあります。
タウン形成外科クリニック
医師 中村 潔