絵本製作の協力に関するご依頼をいただいたのは2020年の秋。

当時、私はロサンゼルスで爆増する新型コロナに怯えながら、黙々と自室で疫学研究をする日々を送っていました。

 

そんな中、絵本の出版の大手である岩崎書店の担当の方から、一通の連絡をいただきました。

こども達に「からだ」の部位(め、はな、くち)に興味をもってもらいながら、健康に役立てる絵本の製作に協力して欲しいという内容でした。

 

正直なところ、このお話を私が受けてしまってよいのだろうかと最初は悩みました。

 

とういのも、私は小さな頃はもっぱら外で遊びまくる子供で、そもそもあまり絵本を熱心に読んだ記憶があまりなかったからです(むしろ小児科医になってから「こんな作品もあったのか!」、と色々と読んだくらいです)。

 

さらに普段は論文などを読み漁り、科学に基づいた長ったらしくて、くどくて、生真面目な文章を英語論文や医学書に書いている人間だからです。

正直なところ、自分のアイデアを、絵本にコンパクトにまとめられる自信がありませんでした。

 

 

 

とはいえ、絵本の製作に関わることで、これまで以上に様々な保護者や子供、教育関係者にアプローチして医学的な知識を普及できるかもしれないと思いました。

 

例えば、堀向先生(ほむほむ先生)と青鹿さんが書かれた小児アレルギーの本は、過去の膨大に積み重ねられたエビデンスだけでなく、漫画を使って解説する新しいアプローチをしており、個人的に非常に感銘をうけた1冊でした。

 

 

やさしい医療情報を、これまでとは別の形(つまり絵本)で届けるメリットはあるのではないかと考えるようになりました。

 

絵本には素敵な点が沢山あります。例えば、

  • イラストが豊富にあるので理解しやすい
  • 子供も理解できる
  • 親子で学べる
  • 園や学校で学べる

など、様々な方に医療情報を届けることができます。

 

また、絵本を通して

  • ウイルスに感染すると体がどう反応するか
  • 感染症の自然経過
  • ホームケア
  • 予防法

といった内容も医療者がこどもや保護者などに知っておいてほしい内容をお届けすることもできます。

 

とはいえ、正直なところ、絵本を上手く製作する自信は全くありませんでした。

しかし、Twitter上にはほむほむ先生以外にも、沢山の小児科の先生方(例:森戸やすみ先生や教えてドクター佐久の坂本先生)がいます。

 

絵本の製作が私の力不足でどうにもこうにも上手くできなかったら、土下座をしてどなたかに誰かにお願いしようと腹を括り、最終的にお仕事を引き受けました。

(*最終的には、絵本の担当者さんやイラストレーターさんの力を大いに借りて、出版まで辿り着くことができました!)

 

 

そうこうしているうちに、絵本の製作が始まりました。

 

私はロサンゼルス、絵本の担当者(小山さん)は日本です。

コロナ禍もあり簡単に日本に帰国はできない状況でしたので、Zoomを使って何度も何度もコミュニケーションをとりました。

 

その中で、絵本の全体的なストーリー作りが始まり、「め」「はな」「くち」の3部作にするアイデアに辿り着けました。

さらに、お話をすすめていくうちに、

  • 「め」はアデノウイルスなどをモチーフにした感染症
  • 「はな」はライノウイルスなどをはじめとした「鼻風邪」
  • 「くち」はロタ、ノロ、エンテロウイルスなどをはじめとした「胃腸炎」
が決まりました。
 
「め」のストーリーはこの第一弾です。

 

 

この絵本の製作は、私と岩崎書店の担当者様、イラストのミヤザキさんの3人で出来上がった最初の本です。

初めてのことで、ストーリー作りからイラストまで、試行錯誤を繰り返しながら1年かけて完成まで辿り着けました。

 

この絵本では、アデノウイルスをモチーフに

  • どのように目に感染するのか?
  • 体はウイルスとどう闘うのか?
  • なぜ目やにが出たり、喉が痛くなったり、発熱するのか?
  • 自宅ではどのように過ごしたらよいか?
  • 感染予防はどうしたらよいか?

を1つのストーリーにしています。

 

子供は園や学校など、子供が集まる場所で様々なウイルスに曝露をして感染を繰り返します。

ウイルス感染を完璧に防ぐことは不可能ですし、子供は感染を繰り返しながら、徐々に免疫能が育ち、感染症に強くなっていきます。

 

絵本を読んでおくことで、どんなふうに予防したらよいか、感染した場合に免疫細胞や体はどう反応し、自宅ではどう過ごしたらよいか、周りへの感染を予防するにはどうしたらよいか、そういったことを、子供だけでなく、親子や教育関係者で学べる機会になればと思います。

 

さらに、「あとがき」には、保護者の方々へ向けて、「め」から始まるウイルス感染が生じた場合の対処法、自然経過、医療機関への受診の目安など、小児科外来でよくお話をする内容をまとめています。

 

多くのお子さん、保護者の方々、こどもに関わる方々(医療者や教育関係の方々)に手にとっていただければと思います。

 

 

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