今回は、こどもの風邪のホームケアについて説明していこうと思います。
子供の風邪に対して、自宅で簡単にできることとしては
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水分摂取をしっかり摂る
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暖かい飲み物を与える
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鼻水・鼻詰まりがひどければ、鼻に生理食塩水を少量使用
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加湿をする
あたりがあります。
1.水分摂取をしっかり
体に必要な水分を摂取をしましょう。
水分をしっかり摂ることで、鼻や喉の分泌物が出やすくなります。
2.温かい飲み物を飲む
暖かい飲み物(お茶・スープなど)を飲むと、鼻や喉にある分泌物が柔らかくなり、鼻や口から出やすくなります。
3.鼻に生理食塩水を使用する
鼻に生理食塩水を少量使用する方法です。
この方法は、安価で危険性の少ない、とてもよい治療法です。
コップ1杯のぬるま湯に塩を小さじ半分〜1杯を入れ、それをスポイトやシリンジで鼻に少量入れる方法です。
ミストタイプの洗浄液もありますので、色々と試してみると良いでしょう。
生理食塩水を鼻に注ぐことで、鼻水は柔らかくなり、鼻詰まりが解消し、鼻水が出やすくなります。
鼻水にはウイルスや細菌が大量に生息しているため、食塩水でそれらを排泄してしまう方法です。
生理食塩水を使った鼻洗いは科学的根拠があります。
『鼻洗いは風邪の症状(咳、鼻水)を軽快させた』という研究結果は多数あります。
風邪だけでなく、アレルギー性鼻炎(花粉症)や副鼻腔炎の治療にも利用されています。
(*実は私も慢性副鼻腔炎があり、鼻洗いを毎日しています)
市販の生理食塩水の点鼻ですと
・はなぴゅあ
・ニールメッド
などで検索すると、商品が見つかると思います。
4.加湿について
加湿は鼻洗いと同じで、鼻水・痰を柔らかくして、排出しやすくします。
室温にした水を使って加湿しましょう。
熱すぎるお湯を使うと、空気の通り道を痛めてしまうので、避けてくださいね。
市販の総合感冒薬はおすすめしない
小児科の立場として、市販の総合感冒薬は基本的にオススメしません。
特に12歳以下のお子さんは使用しないほうが良いです。
過去にランダム化比較研究という、とても質の高い臨床研究が行われています。
この結果によると、市販の感冒薬は無効であり、さらに副作用が出ることがわかっています。
これらの報告は海外からですが、市販で売られている総合感冒薬は日本も海外も大差ありません。
対症療法も解説していきます
対症療法とは、その名前の通り『風邪の症状を和らげる治療』です。
解熱薬、咳止めなど、風邪で使いそうな薬について解説していきます。
1.解熱鎮痛薬について
発熱して辛そう、頭が痛いなどの症状があれば、我慢せずに解熱鎮痛薬は使用してもよいでしょう。
小児の解熱鎮痛薬にはアセトアミノフェンが入っています。
この成分は、世界中で使用されていて、小児に使う薬のなかで、安全性はかなり高いと考えています。
2.ハチミツも有効(但し、使用は2歳以上に限る)
2歳以上であれば、ハチミツの有効性は確認されています。ハチミツは、特に夜間の咳に有効、といわれており、過去の研究では;
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咳の重症度が下がった
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煩わしい風邪の症状(咳・鼻水・痰)が減った
と報告されています。
ハチミツは、1回あたり、2.5 〜 5.0 mL程度(スプーン半分〜1杯)使用するとよいでしょう。
お茶・ジュース・ヨーグルトなどに混ぜて飲ませても構いません。
注意点として、1歳未満の小児への使用です。
1歳未満がハチミツを摂取すると、ボツリヌス症になるリスクがあるため、絶対に使用しないでください。
3.トローチについて
トローチは小学生(6歳以上)なら使用してよいでしょう。
ハチミツのようにランダム化比較研究はされていませんが、トローチは咳の頻度を減らし、喉の痛みを軽快させたとする研究があります。
4.咳止めについて
小児に使用する咳止めは;
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チペピジンヘベンズ酸塩(アスベリン)
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デキストロメトルファン(メジコン)
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コデイン(リンコデ)
があります。
特に5〜6歳未満へのメジコン、11〜12歳未満へのコデインは使用はやめた方が良いでしょう。
特に、コデインは傾眠傾向、呼吸抑制、死亡の原因といった重篤な副作用の報告があります。
コデインはアメリカ・カナダなど先進国では小児への使用は基本的に禁止されています。
日本でも2019年から小児の市販薬にコデインの使用ができなくなりました。
アスベリンに関しては、臨床研究が行われる欧米での使用は少なく、きちんとしたデータはありません。
日本では30年以上使用されているお薬で、歴史的にはある程度安全性があるのかもしれません。
咳は痰などの分泌物を排出する行為です。薬で無理に咳を抑えると、分泌物が排泄できず、かえって気管支炎や肺炎の原因となりえます。
5.鼻水止め(抗ヒスタミン薬)
第一世代の抗ヒスタミン薬(ペリアクチン・ポララミン・セレスタミン・アタラックス) などが処方せれているケースがあります。
しかし、抗ヒスタミン薬が風邪の症状に対して無効で、 さらに鎮静・易刺激性・呼吸抑制・幻覚などの副作用がでることがいわれています。
基本的に有害・無益の薬のため、使用しないほうがよいでしょう:
6.ステロイドの点鼻薬
ステロイドの点鼻薬として、ナゾネックス・フルナーゼ・アラミストなどがあります。
こちらも2015年にシステマティック・レビューという研究がされ、有効性がありませんでした。
風邪では使用されないほうが良いでしょう。
7.去痰剤について
去痰剤として アセチルシステイン ブロムヘキシン カルボシステイン(ムコダイン) があります。
これらの薬は、分泌物の量をふやして、痰を出しやすくする薬です。
しかし、これらの薬では一部の薬を除いて(ムコダイン®︎)有効性は証明されていませんし、副作用で消化器症状が出ることがあります。
8.気管支拡張薬について
気管支拡張薬には、ツロブテロール®︎やホクナリン®︎があります。
気管支拡張薬は喘息のないお子さんには無効です。
なぜなら、喘息のない子は風邪を引いても気管支は収縮しないからです。
逆に、気管支喘息のあるお子さんは使用してもよいでしょう。
風邪で喘息の症状(気管支の収縮)は悪化しやすいため、拡張薬は有効といえます。
9.アロマ療法について(ユーカリやメンソール)
『アロマ』と効くと、なんとなく体に良さそうな気がしてしまいますが、メンソールやユーカリの成分のあるアロマ療法もオススメしません。
これは、過去にランダム化比較研究という非常に質の高い研究がされており、無効であることがわかっています。
10.ビタミンCについて
ビタミンCのサプリメントの使用は推奨できません。
これも、既にメタ解析という研究がされており、風邪の症状を軽減しなかったことが分かっています。
11.亜鉛について
亜鉛の使用は、基本的に推奨されていません。
亜鉛の有効性の研究は既にされていて;
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大人の風邪に使用したら、症状が短くなった
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子供の風邪には効果がなかった
という結果が出ています。
亜鉛もいくつかの製剤があり、製剤毎に異なる結果がでており、有効性に関して不明な点が多いです。
小児科としては
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こどもで有効性を証明した研究がない
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亜鉛の味は悪い
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吐き気を出してしまうことがある
という点から、風邪には使用しないことをオススメしています。
科学的根拠に基づくこどもの風邪の治療:まとめ
長くなりましたので、風邪の時に有効性のある治療をここで列挙します:
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水分(できれば暖かい飲み物)をしっかりとる
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鼻の症状がひどければ生理食塩水を少量使用する
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加湿をする
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発熱して辛そうなら解熱剤を使用する
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2歳以上ならハチミツをスプーン0.5〜1杯使用する
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6歳以上ならトローチを使用してもいい
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喘息がある場合は気管支拡張薬を使用する
です。
ここに列挙されていない治療は、科学的根拠がないばかりか、副作用の恐れがあるため、安易に使用しないことをおすすめします。
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