小児科外来をしていると『咳が出て辛そうです。薬を出して、なんとかしてくれませんか?』という相談は、ほぼ毎日のようにあります。
今回はこちらの質問に答えてみようと思います。
咳は体の防御反応です
風邪をひくと鼻や喉に細菌・ウイルスが増殖し、分泌物が増えます。
咳は、これら細菌・ウイルスが気管支や肺に入らないように、体は反応して防御してくれている証拠です。
『夜に咳で起きてしまうこともあります』というご相談もあります。
夜は喉や鼻にある分泌物が垂れ込みやすくなるため、咳が悪化しやすい傾向にあります。
これら分泌物は気管支や肺に垂れ込まないよう、眠っている間も体が守ってくれている証拠といえます。
咳のせいで、夜に一時的に起きてしまうことはあるでしょう。
ですが、翌朝以降、普段と同じくらいの体調であれば、特に大きな問題はないでしょう。
逆に、呼吸が苦しそう、食事・飲食ができない、ヒュヒューとした音が聞こえるなどは、お早めの受診が必要です。
肺炎になっていないか、心配です
咳が少し悪化してくると、気管支喘息や肺炎を気にする方も多いです。
ですが、咳や鼻水だけであれば、大きな心配はいらないことがほとんどでしょう。
肺炎であれば、発熱が持続することが多いです
例外はありますが、基本的に熱のない肺炎は多くはありません。
一時的に熱が出ても、解熱して食欲が戻り、咳のみが続いている状態であれば、肺炎まで心配する必要はあまりないと思います。
逆に、咳と発熱が4-5日続いている場合は、小児科に受診された方が良いでしょう。
気管支喘息は胸の音で見分けています
『咳が続いていて、喘息じゃないか心配です』という相談も多いですが、喘息発作による咳であれば、呼吸音に異常があります。
医師がしっかり診察して、喘息発作の時に聞こえるヒューヒューという音(喘鳴)がなければ、喘息の心配はあまりいらないと思います。
一方で、かぜの経過で喘息を発症することはありますので、息苦しい・呼吸が苦しそう、ヒューヒューという音が聞こえるなど、気になるところがあれば小児科でご相談されてください。
風邪の咳であれば、薬は不要なことがほとんどです
咳止めは飲んでも飲まなくても、咳の期間はそれほど変わらないことが分かっています。
実は咳止めとして処方される、コデイン、デキストロメトルファン(メジコン®︎)、チペピジン(アスベリン®︎)は有効性がはっきりしない治療なのです。
そして、咳止めにも副作用が多数ありますので、不要な薬は飲まない方がよいと考えています。
咳や鼻水のホームケア
1〜2歳以上であれば、はちみつを試しても良いでしょう
いくつかの研究で、1〜2歳以上で、風邪による咳にはちみつが有効であった、と報告されています。
はちみつであれは、副作用もありませんし、甘くてお子さんも飲みやすいと思うので、試されてもよいでしょう。
(*但し、1歳未満のはちみつは、ボツリヌス症のリスクがありますので、使用しないでください。)
鼻水があれば、ご自宅でも鼻水を吸ってあげても良いでしょう。
最近は、電動の鼻水吸引機も5000〜10,000円で販売されています。
ハナぴゅあ®︎やニールメッド・ベビーミスト®︎といった、鼻に生理食塩水を点鼻する方法もあります。
これを使用すると、鼻水が出やすくなったり、鼻の通りが改善し、結果として咳が軽くなったり、夜間に眠りやすくなることがあります。
まとめ
風邪による咳であれば、心配いらないことがほとんどですし、薬も不要なことが多いです。
小児科医に診察され、胸の音に異常がなければ、ひとまず安心してよいでしょう。
痛み止めを使用しても虫歯が治らないように、咳止めを使用すれば風邪が治るわけではありません。
風邪の場合(虫歯と違い)、免疫力で自然に治ることがほとんどですので、回復をゆっくり待つのも良いでしょう。
1〜2歳以上であれば、はちみつを試してみてもよいと思います。
はちみつに関しては、夜間の咳を抑える効果があるかもしれないと言われています。
生理食塩水の点鼻なども咳や鼻汁に有効と考えられています。
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