•  かぜをひいてしまったようです。悪化しないように早めに受診しました。

  •  咳が辛そうなので、咳止めの薬をください

  •  鼻水で鼻が詰まってしまうので、鼻水を止める薬をください

  •  熱が出てしまったので、受診しました

当たり前のことですが、お子さんもかぜをひくと、咳や鼻水は出ますし、場合によっては発熱することがあります。

 

このため、お子さんの辛い症状を「薬でなんとかできないか」と考えて受診先で相談される方もいるでしょう。

 

医療者の視点からすると、「かぜ薬の有効性」を保護者が期待して受診されているようにも感じることがあります。

  •  明日には熱が下がりますか?

  •  鼻水はどのくらい続きますか?

  •  咳は軽く済みますか?

一見すると非常にシンプルで簡単な質問ですが、目の前で診察したお子さんが「明日、熱が下がるのか」「鼻水がどのくらい続くのか」を、確信をもって答えられる小児科医はまずいないでしょう。

 

もし、自信満々で答えていたとしたら、かなりの確率ではったりです。小児を診る多くの医師は、「おそらく治るであろう」と思われる症状の期間を予測してお伝えしていることが多いと思います。

この「予測」ですが、医師個人の経験による予測のこともありますし、過去の研究結果をもとに説明する方もいます。

 

小児のかぜはウイルス感染症が大半で、残念ながら特効薬はありません。このため対症療法が中心となりますが、重要なことは余分な薬は使わず、しっかり水分・食事を摂取し、十分な休息をとることです。

 

一方で、こどもを育てる保護者の視点からすれば、「どのくらいの期間で軽快するのか」「合併症の割合(確率)はどのくらいか」「どのような症状で受診すればよいのか」といった点がわからず、出口のないトンネルのように感じて不安になる方もいるでしょう。

 

今回は、「かぜは自然に治るという感覚を育てる」ために必要な、「かぜの自然経過」について解説していきましょう。

具体的には、

  •  こどもはかぜをどれくらいひくのか?

  •  かぜ症状の期間

  •  合併症の割合

  •  どのような時に受診すればよいか

といった4点を中心に説明していきます。

 

かぜ症状の期間について

 

かぜ症状の自然経過を知ることで、こどもの咳や鼻水の期間が長いのか、短いのか、どれくらいで軽快が見込めるのかが分かります。

乳幼児は年に5−6回、年齢が上がるとかぜになる回数は減ってきます

 

乳幼児は年に平均して5−6回ほどかぜをひきます。
大人はせいぜい2−3回が平均ですから、倍近くかぜに罹患しているのがわかります。


実際のデータはこちらです↓

かぜの原因はウイルスですが、以下の種類がメジャーです。

 

ウイルス

割合

ライノウイルス

30-50%

コロナウイルス

10-15%

インフルエンザウイルス

5-15%

RSウイルス

5%

パラインフルエンザウイルス

5%

アデノウイルス

< 5%

エンテロウイルス

< 5%

ヒトメタニューモウイルス

不明

不明

20-30%

 

原因として最も多いのがライノウイルスですが、ライノウイルスの数も100以上あるため、繰り返しかぜにかかってしまうのです。

 

保育園に通うと風邪の回数は増える

 

先ほど提示した「年に平均5−6回」のかぜは、保育園に通っている小児も、そうでない小児のデータも入っています。

確かに「保育園に通い出したら、風邪の回数が増えました」とご相談されることは非常に多いです。

 

保育園・幼稚園に通い始めると、様々なお子さんとの接触の機会が増えます。このため、かぜを頻回にひくようになると考えられています。

 

 

自宅

保育園

感染症, 平均回数

4.7回

7.1回

かぜ, 平均回数

3.9回

6.3回

 

自宅で育児をした場合と保育園の通園した場合に、感染症にかかる回数を比較した研究があります。

保育園に通園した場合、自宅で育児をしている場合と比較して、感染症の回数が1.5〜2倍ほど増えているのが分かります。

 

 

自宅

保育園

6回以上

29%

73%

60日以上

18%

73%

 

年間に6回以上の風邪ですと、2ヶ月に1回風邪をひく感覚ですが、保育園に通園した場合、7割近くのお子さんが頻回に風邪をひいているのがわかります。

 

保育園にいくと、小学生になった時に風邪をひきにくくなる

 

このような話をすると、保育園に行くと風邪を沢山もらうから損をしているような感覚に陥ってしまう方がいるかもしれません。

しかし、乳幼児期にかぜを頻回ひくことで、免疫システムが強化され、のちに風邪をひきにくくなった研究結果もあります。

3歳未満の小児で、1クラス6人以上いる保育園に通っていた場合、保育園に通っていない小児と比較して、乳幼児期は頻回にかぜをひきやすの傾向にあります。

 

しかし、6ー11歳の期間は、保育園に通っていた小児と比較して、かぜをひきにくくなっているのが分かります。

 

乳幼児は...

  •  1年に5−6回ほどかぜをひきます

  •  保育園・幼稚園に通園していると、かぜの回数は多い傾向です

  •  乳幼児期に保育園でかぜを頻回にひいたお子さんは、小学生の時期はかぜをひきづらくなります