小児科では、乳児の「初めての発熱」は突発性発疹(とっぱつせいほっしん)を考慮します。
初診で診断できないことが多く、発疹が後から出てきてビックリされるので、あらかじめ説明する小児科医も多いのではないでしょうか。

今回は、突発性発疹に関して、小児科的にこのくらいのことを知っておけば十分という内容をまとめてみました。

 

突発性発疹の特徴

 

突発性発疹は乳児など、2歳未満の小児に起こりやすいです。
発熱が3日〜5日くらい持続し、解熱前後のタイミングで発疹が全身に出現するのが特徴です。

 

発疹の出る順序は「体幹 → 手足→顔」のことが多いです。
淡い赤色の小さな斑点で、数日間かけて徐々に広がりながら、体中に出現することが多いです。

発疹は痕を残さず消えることがほとんどです。

 

突発性発疹と言われると「発熱と発疹だけ」という印象を与えてしまいますが、実はそうとも限りません。
突発性発疹は、下痢・軟便など軽い消化器症状が出ることがあります。

一方、咳・鼻水といった風邪症状は出ないことが多い印象です。

 

一番注意が必要な合併症は、熱性けいれんでしょう。
非常に稀ですが、脳炎や肝炎、血小板減少症などを起こすことがあります。

 

突発性発疹の原因

 

突発性発疹はウイルス感染によって起こります:

  • ヒト・ヘルペスウイルス6型(HHV-6)

  • ヒト・ヘルペスウイルス7型(HHV-7)

への感染が原因です。

 

原因ウイルスはHHV-6とHHV7の2種類あるため,別々のウイルスに感染し症状が出ると、突発性発疹は"理論上"は2回起こることがあります。

『これは2回目の突発性発疹ですね』と小児科で説明されることもあるでしょう。

 

突発性発疹にならないことも?

 

「私の子供、突発性発疹になったことがないです...」と相談されることがあります。

これは、ほとんどのケースで「不顕性感染」を起こしているのです。

 

突発性発疹に2回かかる小児がいる一方で、原因ウイルスであるHHV-6やHHV7に感染しても、全く症状がでない場合もあります。

 

このことを「不顕性感染」といいます。

不顕性感染では、気づかないうちにウイルスに感染して、症状が出ず、体の免疫がウイルスを退治した状態です。

 

『私の子どもは、突発にかかったことがない』という保護者の方は、おそらく「不顕性感染」だったのでしょう。

 

突発性発疹が起こりやすい年齢

 

突発性発疹は3歳までに起きることが多いです。

感染経路は、家族 (父母・兄弟・姉妹)や保育園の児童の唾液を介して感染することが多いです。

 

原因ウイルス(HHV-6やHHV-7)は健常な成人の唾液から検出されているため、何の症状もない大人から移ることもあるのです。

 

3歳までに突発性発疹になりやすいと説明しましたが、厳密には生後6ヶ月以降&3歳未満での発症が多いです。

生後6ヶ月以降は、母からの免疫(移行抗体)が消失するため、突発性発疹のウイルスにかかりやすくなるのです。

 

大体の目安ですが:

  • 1歳までに60%〜90%

  • 3歳までに100%

 が突発性発疹のウイルス(HHV-6やHHV-7)に感染すると報告されています。

基本的にはほぼ全員が感染するウイルスですので、過度な心配は不要ですよ。

 

突発性発疹の診断

 

突発性発疹は、基本的に臨床的に診断されます。
つまり、病歴・皮膚の性状を含めて、小児科医が入念に診察し、最終的に診断をします。

 

特徴的な皮膚の所見と経過ですので、診断に迷うことはそれほど多くありません。
確定診断に特別な検査は不要です。

 

病初期に『永山斑』と言われる口腔内の所見を認めることがあります。
口蓋垂の根元の両側に認められる粟粒大の紅色隆起です。

皮膚の発疹が出るまえに「永山斑」が見えることがあります。
 

突発性発疹の治療法や対処法

 

突発性発疹は、特別な治療はいりません

なぜなら、突発性発疹はウイルス感染症で、合併症を起こす可能性の低い予後良好な疾患だからです。

 

基本的に、発熱があれば解熱剤を使用するなど、対症療法だけで様子をみます。 

突発性発疹症の抗ウイルス療法はありますが、この薬は免疫機能の弱い子供など、非常に特殊な症例でしか使用しません。

 

脱水・熱性痙攣に気をつけましょう

 

発熱が持続する場合、脱水になりやすいです。

ミルク・母乳・水分の摂取がしっかりできているか注意しましょう。

熱性けいれんも起こりやすいです。

 

熱性けいれんは日本人の小児の7-8%前後で起こすといわれています。

けいれんを起こしてしまったら、早めに医療機関へ受診しましょう。

 

まとめ

 

今回は突発性発疹について、詳しく説明してきました。

6ヶ月から3歳までにかかる疾患で、数日の発熱し、解熱後に発疹がでるのが特徴です。

 

熱性けいれんを起こすことがありますので、あらかじめ熱性けいれんのことを知っておくと良いでしょう。

 

突発性発疹のまとめ

最後にまとめを載せておきます:

  •  6ヶ月〜3歳までに起こりやすく

  •  数日の発熱と、その後の発疹が特徴

  •  発熱の初期だと医療者でも見分けがつかないことがる

  •  治療は対症療法が中心