『1歳未満に蜂蜜(はちみつ)を与えないでください』は聞いたことがある方が多いかもしれません。
例えば、厚生労働省のホームページを参照すると、以下のポイントが記載されています:
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1 歳未満の赤ちゃんがハチミツを食べると、乳児ボツリヌス症にかかることがある
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ボツリヌス菌は熱に強いので、通常の加熱や調理では死滅しない
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1歳未満の赤ちゃんに、ハチミツやハチミツ入りの飲料・お菓子などの食品は与えない
簡単に説明すると、1歳未満のこどもが蜂蜜(はちみつ)を食べると、乳児ボツリヌス症になる可能性があるので、蜂蜜(はちみつ)を与えないでください、ということです。
一般の方々からすると、乳児ボツリヌス症は聞き慣れない病名かもしれません。
この病気は、ボツリヌス菌が腸内で増殖し、ボツリヌス毒素が放出されて生じます。
ボツリヌス毒素は神経から筋肉への伝達を妨げる効果があり、筋肉がいつも通りに動けなくなってしまいます。
このため、便秘が数日間続き、全身の筋力低下が生じ、呼吸ができなくなってしまうことがあります。
ボツリヌス菌は保存食品・発酵食品に含まれています。
日本では、蜂蜜(はちみつ)、いずし、サトイモの缶詰、真空包装された辛子レンコンなどの食品があげられます
米国では、野菜・果実・食肉製品などの自家製瓶詰や缶詰が注目されています。
欧州では、塩漬や発酵した食肉製品、沿岸部では魚介類などもあげられます。
乳児ボツリヌス症については、国内では蜂蜜(はちみつ)が原因食品として複数回報告されています。
国内において蜂蜜(はちみつ)が推定原因とされる症例は、1989 年までに 12 例ありました。
2017年2月に1例が新たに報告され、合計で13 例の報告があります。
2017 年2月の症例では、離乳食として市販のジュースに ハチミツを混ぜたものを飲んでいた 5 か月乳児が発症し死亡しています。
このように、1歳未満の赤ちゃんにとって蜂蜜(はちみつ)はリスクの高い食品として考えられています。
では、なぜ1歳未満の赤ちゃんに乳児ボツリヌス症が多いのでしょうか?
ボツリヌス菌は土壌や食品などにいますが、大人の口から体内に入っても、ボツリヌス菌は他の腸内細菌に負けてしまうため、通常は何も起こりません。
赤ちゃんの場合、大人ほど腸内環境が整っていません。
このため、大人とは異なり、ボツリヌス菌が腸内で定着し、増殖し、最終的に毒素を放出してしまいます。
では、1歳以上なら蜂蜜(はちみつ)の摂取しても大丈夫なのでしょうか。
一般的に、1歳以上であれば、蜂蜜(はちみつ)はリスクの高い食品とは考えられていません。
というのも、乳児ボツリヌス症が起こりやすいのは、生後半年くらいまでで、1歳を過ぎての報告はゼロではありませんが、非常に少ないです。
細かいことを言い出すとキリがないですが、1歳2ヶ月くらいまではアメリカで報告されてはいますが、そもそも蜂蜜(はちみつ)が原因とは確定されていません。
このため、1歳以上なら蜂蜜(はちみつ)の摂取は基本的には安全と考えています。
蜂蜜(はちみつ)でしか摂取しないといけない特別な医学的な理由はないので、1歳以降の稀な報告例が気になるようでしたら、1歳数ヶ月以降まで待ってみるのも選択肢の1つと思います。
1歳以上なら基本的には安全と述べましたが、幾つか例外はあります。例えば、
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抗菌薬を内服している
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お腹(腸)の手術をした
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腸や免疫に関連する基礎疾患がある
などに該当する場合などは、腸内の細菌叢が乱れている可能性があり、主治医の先生とよく相談された方が良いかもしれません。
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