【Q. 今シーズンはインフルエンザの広がりが早いと聞きました。ニュースでは異常行動の事故も報じられていますが、どんなことが起きるのでしょうか。】


全国的にインフルエンザ患者が増えており、休校や学級閉鎖も多くみられます。こうした中、インフルエンザに感染した子どもが自宅で飛び出したり、転落したりする事故が報じられることがあります。

過去のデータを見ると、10歳未満および10代で異常行動が報告されることが多く、その内容は突然走り出す、外に出ようとする、襲われているように感じて混乱する、幻覚に近い言動を示すといったものです。


【Q. 異常行動は薬の副作用ではないのでしょうか。】


以前は抗インフルエンザ薬が原因ではないかと懸念されたことがありましたが、現在は薬ではなくインフルエンザそのものによって起こると考えられています。高熱や感染による脳の一時的な機能の乱れが背景にあると考えられています。


【Q. 発熱後のいつ頃に起こりやすいのですか。】


一般的には発熱から2日以内に多いとされています。ただし熱が下がったからといって完全に起こらないとは限らず、回復期でも注意が必要な場合があります。


【Q. どんな症状に注意すべきでしょうか。】


突然立ち上がって外に出ようとする、意味不明な言動、異常な焦燥感、幻覚に近い反応、叫び声や混乱などが報告されています。

多くは短時間で落ち着きますが、行動が急で危険につながる恐れがあるため、周囲の安全確保が最も大切です。


【Q. 自宅でどのように見守ればよいでしょうか。】


窓やベランダのない部屋、または2階建てなら1階で過ごすなど、転落につながりやすい場所を避ける工夫が勧められています。

窓やベランダの鍵、玄関の鍵を施錠しておくことも重要です。

大人が目を離さないことが理想ですが、難しい場合があるため、事故を防ぐ環境づくりが現実的な対策になります。


【Q. 必要以上に心配しなくてもよいのでしょうか。】


異常行動の多くは短時間でおさまり、後遺症を残さない一過性のものです。ただし、走り出す、転落するなど行動そのものが危険につながる可能性があるため、注意は必要です。

体調変化や意識の異常が続くときは、脳症の可能性もゼロではありませんので、早めの受診を検討してください。


【Q. 子どもがインフルエンザで高熱のときに、突然起きて怖がったり、意味不明な言動をしたりすることがあります。これは異常行動でしょうか。】


発熱後1〜2日以内に、急に走り出したり、混乱したり、幻覚に近い反応を示したりすることがあります。これはインフルエンザでよくみられる一時的な混乱で、多くは短時間で落ち着きます。


熱せん妄や、もともと夜驚症の傾向がある子どもでは発熱で症状が強まることもあり、見た目は驚くような行動でも、時間経過とともに元に戻ることが特徴的です。


【Q. 異常行動と脳症は何が違うのでしょうか。】


異常行動は一過性の混乱で、落ち着けば普段どおりの意識に戻ります。

一方、脳症では次のような症状が続く、あるいは明らかに強い異常が現れます。


意識が戻らない、呼びかけに反応しない

返事ができず、会話が成立しない

けいれんが止まらない、何度も繰り返す

ぐったりして目が開かない

異常な行動が長く続く


脳症は「意識が持続しておかしい」ことがポイントで、短時間の錯乱とは違います。


【Q. 起こった状況で見分ける方法はありますか。】


異常行動の場合

突然始まるが、数分〜数十分で落ち着き、意識は元に戻る

日中は比較的ふだん通りに見える

その場の環境を危険から守ることが中心になる


脳症で疑うべきとき

混乱が長く続く

落ち着いても普通の反応に戻らない

目が合わない、言葉が出ない

嘔吐を繰り返してぐったりしている

けいれんがある


この違いが最も重要な判断材料になります。


【Q. 家庭で気をつけることはありますか。】


窓やベランダの鍵を閉める

2階以上に住んでいる場合は1階で過ごす

玄関の施錠を忘れない

急に走り出しても外に出られない環境にしておく


異常行動自体は短時間でも、行動の内容が危険につながるため、環境整備の意味が大きいです。


【Q. いつ受診すべきかの目安はありますか。】


次のような場合はためらわず医療機関に相談してください。


意識がはっきりしない状態が続く

呼びかけに反応しない

けいれんがある

嘔吐が何度も続く、ぐったりして水分が取れない

異常行動が繰り返し起きる、落ち着かない


【まとめ】


異常行動の多くは短時間で回復しますが、脳症は意識の異常がはっきり続く点が決定的な違いです。

大人が目を離せない状況が理想ですが、難しい場合もあるため、まずは自宅の環境面で危険を減らす工夫が重要です。






Q. 6歳の子どもがインフルエンザAと診断されました。高熱のあと、夜に突然飛び起きて怖がったり、意味の分からないことを言ったりしました。吐き気もあります。熱せん妄でしょうか、それとも異常行動や脳症の心配をしたほうがいいでしょうか。


6歳の男の子。夕方から高熱が続き、翌日医療機関を受診してインフルエンザAと診断され、ゾフルーザを服用したとのことでした。その後も39〜40度台の発熱が続き、解熱剤の使用でいったん熱は下がったものの、就寝後に突然起き上がって恐怖を訴え、しばらく意味の分からないことを話していたとの経過です。その後も再び起きて怖がり、えずきもあったため、インフルエンザ脳症の可能性を心配されているとのご相談でした。




A. 発熱に伴う一時的な混乱である可能性が高いと思われます。


インフルエンザで高熱が続くと、睡眠中に突然起きて混乱したり、恐怖を感じたような反応を示したりすることがあります。一般的には短時間で落ち着き、日中は普段どおりに意識がはっきりしていることが多く、今回のエピソードはその範囲に近い印象です。また、もともと夜驚症の傾向があるお子さんでは、発熱や疲れによって普段より強く反応が出ることもあります。


一方、インフルエンザ脳症の場合は、意識が戻らない、返事ができない、けいれんが止まらないなど、明確で持続的な神経症状を伴うことが多いとされています。ご相談の内容だけから判断すると、そのような兆候は現れていないように思われます。


吐き気については、ウイルスによる全身症状の一部としてみられることがありますし、空腹で食事をとったあとにすぐ横になったことなども関係しているかもしれません。嘔吐を繰り返したり、ぐったりして水分が取れないような場合には受診を検討していただくのがよいと思います。


現在のところ、意識が戻り、水分も取れているのであれば、夜間は様子をよく見守りつつ、翌朝の状態を確認して判断されてもよい状況と考えられます。もちろん、少しでも様子がおかしいと感じた場合には、ためらわず医療機関へ相談してください。


最初の1年(0〜1歳)は、保護者にとって分からないことが多く、外来でも「生まれてから1歳までの目安を教えてほしい」「この時期はどんな感じですか?」といった質問をよくいただきます。

ここでは、生後0〜1歳までのおおまかな成長・発達の目安について解説します。

 

 

|| 生後1年は劇的な成長・発達の時期

 

赤ちゃんは生後1年で非常に大きな成長・発達をとげます。

体格がしっかりしてくるだけでなく、運動機能、認知機能、意思疎通、社会とのかかわりなど、幅広い分野で急速に発達します。

 

 

|| 数字からみる赤ちゃんの成長

 

赤ちゃんの成長を、具体的な数字から確認してみましょう。

  • 体重は3倍になる(3kg→9kg)

  • 身長は1.5倍になる(50cm→75cm)

  • 脳のシナプスは 50兆から1,000兆になる

と成長します。

これほどまでに劇的な成長がみられるのは、生涯の中でも最初の1年だけです。

 

|| 生後1年は本当に重要な時期です

 

新生児・乳児期の脳の発達に関する研究では、「ポジティブな経験が脳の発達に重要である」ことが分かっています。

特に保護者と子どもの関わりは、その後の脳の発達、感情の育ち、学習能力などに大きく影響します。

 

逆に、この時期にアルコール、鉛、違法薬物などの有害物質にさらされると、脳の発達を大きく妨げることがわかっています。

 

 

|| 粗大運動の発達について

 

粗大運動とは、首を支える、寝返りをする、座る、立つといった大きな動作のことを指します。

最初の1年は、この粗大運動が「頭 → 体幹 → 足先」の順に発達していきます。

 

 

■ 粗大運動の発達の順番

 

粗大運動の発達の順番も決まっていて、「頭→体幹→足先」の順です。 

乳児の発達をみていると:

  1. 首がすわる

  2. 寝返りをする

  3. 座る

  4. ハイハイをする

  5. つかまり立ちをする

  6. つたい歩きをする

  7. 歩く

という順です。

 

これらをみると「頭→体幹→足」の順に発達しているのに気づくでしょう。

 

この時期に気をつけるのは;

  • 月齢相当の運動機能があるか?

  • 運動に左右差がないか?

という点を特に注意しています。

 

■ 寝返りができるようになったら、腹ばいの時間を取り入れて

 

6か月ごろには寝返りができるようになります。

この頃からは、保護者が見守れる環境であれば、腹ばいの時間を取り入れることが推奨されます。

 

「うつぶせ寝をやめて、仰向けに寝かせることで乳児突然死症候群(SIDS)を予防する」と報告されてから、仰向け寝が推奨されています。

 

乳児突然死症候群(SIDS)の予防には仰向け寝が有効とされていますが、仰向け寝ばかりだと運動発達の遅れが指摘されることもあります。

寝返りができる時期からは、1回15分程度など時間を決めて、腹ばいの時間を作ることが望ましいでしょう。

 

|| 微細運動の発達について

 

微細運動とは、手先を使った細かい動作を指します。

 

最初は手を握る動作から始まり、やがて握ったり離したりができるようになります。

その後、両手で触って遊ぶ、右手から左手に物を持ちかえるなどの動きがみられるようになります。

さらに発達が進むと、指先で物をつまんだり、クレヨンなどを持ったりすることができます。

 

この時期は、おもちゃや日常の物を利用して、微細運動を促してあげると良いでしょう。

 

こちらはあくまで「目安」であり、月齢ごとに発達のスピードには個人差があります。

 

「少し遅れているかも」と感じても、多くは成長の範囲内です。ただし、大きな左右差や発達の停滞が見られる場合は、小児科での相談が望ましいです。

 

 

おむつ皮膚炎の治療のポイントは;

  • A:Air(空気)

  • B:Barrier(バリア)

  • C:Cleansing(清潔)

  • D:Diaper(おむつ)

  • E:Education(教育)

の5つに分けられます。1つずつみていきましょう。

 

A:Air(空気)

 

おむつを長時間着けているとお尻や股が蒸れてしまい、おむつ皮膚炎を起こしやすくなります。

おむつを交換する時や入浴する時など、日常生活の中でおむつを外す機会は意外と多くあります。

その際に「皮膚をきれいにしたら、乾燥させることも大切です」と考えられています。

 

 

B:Barriers(バリア)

 

おむつ皮膚炎がひどい時には、皮膚にバリアを作ってあげることで、排泄物(尿や便)との接触を減らすことができます。よく用いられるのは次の2種類です。

  • 亜鉛華軟膏

  • ワセリン

の2種類でしょう。

 

亜鉛華軟膏はジクジクした皮膚を乾燥させる作用があり、古くからおむつ皮膚炎に使われてきました。

ワセリンは皮膚の表面にとどまり、尿や便の刺激から皮膚を守ってくれます。

 

このほか、症状によっては医師が処方する以下の薬を使うこともあります:

  • ステロイド軟膏

  • 抗真菌作用のある塗り薬

ステロイド軟膏は、炎症が強いときに短期間使用します。陰部は薬の吸収率が高いため、漫然と長く使うのは避けます。

 

抗真菌薬は、カンジダ感染を合併している場合に使用します。おむつ皮膚炎ではカンジダ合併が比較的多く、特徴的には股のしわにも赤みが出ることがあります。

 

C:Cleansing(皮膚の清潔)

 

おむつの中は尿や便のため不潔になりやすいため、普段より頻回におむつを替えると良いでしょう。

おむつを替えるときは皮膚をきちんと清潔にすることが大切です。

 

ただし、お尻拭きで毎回強くこすると皮膚を傷めることがあります。

そのような場合は、お尻シャワーなどで軽く洗い流すとよいでしょう。

 

 

 D:Diaper(おむつ)

 

おむつそのものについては次の2点が大事です:

  • おむつを頻回に替える

  • 吸収力のよいおむつにする

 

 E:Education(教育)

 

教育は主に小児科医や皮膚科医の役割ですが、保護者への指導として重要です。

  • 皮膚を清潔に保つ

  • おむつを頻回に替える

  • 吸収力の高いおむつを試してみる

  • 皮膚にバリアを形成する(亜鉛華軟膏・ワセリンなど)

をきちんと指導することです。

 

 

■ 余分な成分は避けましょう

 

市販のスキンケア製品には「天然成分配合」「ビタミン入り」といった表示のものがありますが、おむつ皮膚炎の治療には不要な成分であることが多いです。

かえって刺激になり、炎症を悪化させる場合もあります。

おむつ皮膚炎の治療に必要なのは、シンプルなバリア機能を持つ薬剤であり、余分な成分は避ける方が安全です。

 

 

|| まとめ

 

今回はおむつ皮膚炎の治療について解説しました。まとめると次の通りです。

  • A(Air):皮膚は適度に乾燥させる

  • B(Barrier):軟膏などで皮膚にバリアを作る

  • C(Clean):皮膚を清潔に

  • D(Diaper):吸収力のよいおむつにしてみる

  • E(Education):余分な成分の入っている塗り薬は避ける(特に市販薬)

これらを意識することが、おむつ皮膚炎の改善と再発予防につながります。

 

 

  • 『とびひ』が流行っているって聞いたのですが、どんな病気なのでしょうか?

  • 虫刺されやあせもだと思ったら、急にジュクジュクしてきた

  • 体のあちこちに、じゅくじゅくした発疹ができて痒がっている

など、いった皮膚トラブルでご相談いただくことがあります。

 

今回は、とびひ(医学的には伝染性膿痂疹)について詳しく説明します。

*「とびひ」は医学用語で伝染性膿痂疹といいます。

 

 

|| とびひ(伝染性膿痂疹)のポイント

 

  • 「とびひ」は医学的に「伝染性膿痂疹」といいます

  • 治療の中心は『皮膚の清潔と抗菌薬入りの軟膏』です

  • 周りへの感染予防にも気配りしましょう

 

 

||「とびひ」って何ですか?

 

「とびひ」とは、医学的には伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)と呼ばれる皮膚感染症です。

擦り傷、虫刺され、あせも、アトピー性皮膚炎などで皮膚のバリアが壊れたところに細菌が入り込み発症します。

 

 

|| 流行しやすい年齢・季節について

 

とびひは特に6歳以下の子どもに多く見られます。

この年齢の子どもは皮膚トラブルが多く、汗疹や虫刺されがきっかけで発症しやすいのです。

 

発症しやすい季節は5〜6月の初夏に多いとされます。ただし季節を問わず発症するため、年間を通じて注意が必要です。

 

 

|| 原因菌について

 

代表的な原因菌は次の2種類です;

  • 黄色ブドウ球菌

  • 溶血連鎖球菌(溶連菌)

 

健康な皮膚ではこれらの菌が症状を起こすことはまれですが、ちょっとした傷や乾燥、アトピー性皮膚炎をきっかけに感染します。

 

一般的に、水ぶくれ(水疱)ができやすいのは黄色ブドウ球菌です。

発疹部位には細菌が多く存在し、掻いた手や爪を介して周囲の皮膚に広がります。

 

 

|| とびひの症状を教えてください

 

とびひの特徴は;

  • 水ぶくれである水疱

  • 浸出液をともなう発疹(膿痂疹) 

が皮膚にできます。

 

これらの発疹には細菌が多く含まれ、掻き壊すとさらに広がっていきます。

発疹や水疱の大きさはさまざまで、掻いた手を介して全身に広がることもあります。

 

 

 

|| とびひの治療について教えて下さい

 

 

治療の基本は3点で;

  1. 皮膚の清潔

  2. 抗生剤入りの軟膏

  3. その他

です。

 

 

1.まずは皮膚の清潔が基本

 

皮膚を清潔に保つことが最も重要です。

シャワーとボディーソープでしっかり洗い流しましょう。患部は1日2回程度の洗浄が勧められます。
 

 

2.抗生剤入りの軟膏について

 

一般的に使用されるのはフシジン酸(フシジンレオ軟膏など)やバシトラシン含有軟膏(医師処方が基本)です。

1日2〜3回塗布し、細菌を減らします。

 

 

3. その他のポイント

 

痒みが強い場合は抗ヒスタミン薬を併用することがあります。

発疹が全身に広がり、軟膏だけでは対応困難と判断される場合には、抗菌薬の内服治療を行うことがあります。

爪は短く切り、掻き壊さないようにしましょう。

かゆみが強いときは軟膏の上からガーゼで覆うのも有効です。

 

|| 再受診について

 

発疹や傷の赤み、腫れ、広がりが悪化する場合は再度受診し、治療方針を見直す必要があります。

 

|| 周りの人への感染予防

家庭内感染を防ぐためには、タオルや衣類の共用を避けることが大切です。

抗菌薬入りの軟膏を塗った後にガーゼで覆い、患部が他の人や物に触れないようにしましょう。

 

 

|| 保育園やプールについて 

 

  • 保育園にいってもいいですか?

  • プールに入ってもいいですか?

といった質問を受けることがあります。

 

発熱がなく元気であれば登園・登校は可能です。

ただしプールは、皮膚がジュクジュクしている間は避け、かさぶたになるまで控えたほうが良いでしょう。

黒くかさぶたになり、滲出液や痒みがなければプールも可能です。