以前に記事にしていました

富山呼吸器外し:「6人余命24時間内」殺人立件困難か

の、末期がん患者の人工呼吸器を、担当医が外した事が殺人罪にあたるかどうかという問題で、

先日富山県警は医師を殺人罪で書類送検しました。


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射水病院の2医師、延命中止で書類送検
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20080724-OYT8T00287.htm
 

 富山県の射水(いみず)市民病院で末期がんなどの患者7人が人工呼吸器を外され死亡した問題で、県警は23日、同病院元外科部長の伊藤雅之医師(52)を7人全員について、元外科第2部長の男性医師(47)を1人について、それぞれ殺人容疑で富山地検に書類送検した。


 しかし、遺族が厳罰を求めておらず、死期がどの程度早まったかも不明として、


県警は「厳重処罰相当」との意見は付けず、最終判断を地検に委ねた。


 発表によると、伊藤医師は、同病院の外科部長だった2000年9月~05年10月、54~90歳の男性4人と女性3人の人工呼吸器を外すなどして 死亡させたとしている。うち1人は、元外科第2部長の男性医師が人工呼吸器を外し、伊藤医師も報告を受け、責任ある立場だったとしている。


 県警は鑑定などから人工呼吸器外しと死亡に因果関係はあると判断。伊藤医師は家族の同意があったと説明しているが、書面に残っていないなど、県警 は不十分だったとしている。この問題を機に、厚生労働省は昨年、終末期医療の指針をまとめたが、医師の免責基準などは示されていない。


(2008年7月24日 読売新聞)

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発覚2年4か月書類送検/射水市民病院延命中止

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/toyama/news/20080724-OYT8T00061.htm?from=nwlb

 射水市民病院の延命治療中止問題は、県警が、伊藤雅之元外科部長(52)と元外科第2部長(47)を富山地検に書類送検し、大きな節目を迎えた。 発覚から約2年4か月。県警は「正当な医療に当たらない」などと慎重に捜査した結果を強調。一方、伊藤医師はこの日、「家族にとって最善ならば(外す)選 択をする」とした判断に誤りはなかったとした。


 発表によると、県警は、人工呼吸器の取り外しは〈1〉現在の法体系では殺人罪に当たる〈2〉正当な医療行為や尊厳死には当たらない――と判断した。


 1991年の「東海大学安楽死事件」など過去の事例などを参考に慎重に捜査。〈1〉患者の容体が不治かつ末期〈2〉インフォームドコンセントに基 づく患者本人の意思表示――などの要件が満たされていないと結論づけた。臓器移植法に基づく、脳死の条件も7人とも満たしていなかったという。

 ただ、末期がんの女性(54)と、多臓器不全の男性(90)の2人について、本人の意思を受けるなどした家族が、延命中止を求めたが、「尊厳死に対する国民の理解が得られていない」とした。


 呼吸器取り外しを巡っては、北海道立羽幌(はぼろ)病院の女性医師が2005年、和歌山県立医科大付属病院紀北(きほく)分院の男性医師が07年、患者1人を死亡させたとして殺人容疑で書類送検されたが、検察は不起訴とした。


 問題発覚後、日本医師会や全国の病院で終末期医療の中止に関する指針の策定が相次ぎ、延命医療の中止に関する意思統一を図る動きが盛んになっている。

 前田正一・東京大学大学院准教授(生命・医療倫理)は「末期医療中止の問題は、秘密裏に判断されるべきではない。今後、法的・倫理的な問題が生じた時に適切な対応ができるように、倫理委員会など制度を早急に整備すべきだ」と指摘した。


2008年7月24日 読売新聞)

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さて、今回大きなトピックスとして取り上げられている内容とは、

警察が医師を殺人罪で書類送検をしたという事実です。


それを事実として伝えるのは、マスコミの役割でしょう。

しかし、上記の記事を読む限り、私は非常なる違和感を禁じ得ません。



それは、書類送検という、あくまで事務的処理に対して、

県警と、特に新聞の独自の特別な価値観が差し入れられている事です。



それは、いわずのがなの、この部分。


>県警は「厳重処罰相当」との意見は付けず、最終判断を地検に委ねた。



・・・なんですか?この一文は?


記事は、警察発表を元に作成されているのです。

という事は、警察がわざわざ発表の時に、


「・・・え~~~、つきましては、今回は『厳重処分相当』の意見書は付けずに、書類送検しました。」


・・・なんて言った訳ですか?



でも、発表では、


>県警は、人工呼吸器の取り外しは〈1〉現在の法体系では殺人罪に当たる

>県警は「正当な医療に当たらない」などと慎重に捜査した結果を強調。

>県警は鑑定などから人工呼吸器外しと死亡に因果関係はあると判断。


・・・と、医師を殺人罪にする気満々じゃないですか?

これらの県警の発表からすると、上のように言った訳がありません。


となると、結局新聞記者が質問したんですよね?


「OX新聞社のXXと申します。


・・・今回医師を殺人罪で書類送検となりましたが、

県警としては『厳重処分相当』の意見書といったものを添えられたんでしょうか?


ひょっとして、こういった記者の質問があったのならば、

当然県警としては「ありません。」でバッサリでしょう。

なぜなら、この記事を見る限り、警察は意見書など


もしもこういう質問が新聞記者から出たとするならば、

記者はこの事件において医師の厳重処分を期待しているとしか思えません。

逆なら、


「重い処分は求めない、などの意見書をつけられたんでしょうか?」


と質問して、記事にも


>「重い処分は求めない」との意見書を付けずに、最終処分を地検に委ねた。


となるはずですよね。



つまり、新聞は


書類送検だけじゃ物足りない。

厳重処分相当の意見書でも付いてて、

医師の殺人罪起訴濃厚というスキャンダラスなニュースが欲しい!




という欲望をもって、この記事を書いたとしか思えないのです。





大体、この県警の意見書って何ですか?この「厳重処分相当」って?


今までそんなの付いた書類送検ってあったんですか?

そのあたり詳しくないのでググッてみましたが、

これまでそういった意見書が付いた書類送検ネタって無いんですけど?


意見書といえば、

「重い処分は求めない。」と言う意見書や、「悪質性は低い」といったもので、


『事務的に書類送検しましたが、起訴するほどでもないですよ~~。』


という、県警の奥ゆかしい心情が意見として添付されたようなもののようですねw


つまり、今回の「厳重処分相当」という意見書は、

ひとえに新聞記者がスキャンダラスなネタ欲しさに作り上げているとしか思えませんね、コノヤロー(-_-メ


大体、意見書が添えられる事自体、書類送検の意味を解り難くしています。


書類送検を調べてみると、

原則として、司法警察員が犯罪捜査をしたときは、
速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない刑事訴訟法246条本文)。


すなわち、司法警察員が犯罪だと感じて捜査をした場合、

結果がどうあれ原則的に検察官に送致(書類送検)する訳ですから極めた事務的な手続きであり、

ここに意見書などといった主観が差し入れられている事自体不自然で、

事件が起訴になるか不起訴になるかの権限は全く検察官にのみ許されていることで、

警察にも、ましてや新聞記者にも権限などないはずなのに、

新聞記者が紙面上で自らの独自の価値観満載で

>県警は「厳重処罰相当」との意見は付けず、最終判断を地検に委ねた。

などと書くのは、差し出がましい事だと思います。

・・・まあ、これも「報道の自由」なんて身勝手な自由を振り回して正当化するだけなんでしょうけど、




・・・と、ここまで書いて、この記事に気づきました・・・。


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医師を書類送検、起訴困難 富山の呼吸器外し、県警

http://www.chunichi.co.jp/s/article/2008072301000885.html

2008年7月23日 21時15分


 富山県の射水市民病院で2000年から05年にかけ、人工呼吸器を外された50-90代の末期患者7人が死亡した問題で、県警は23日、起訴は困 難とみて「重い刑事処分は求めない」とする意見書を付け、殺人容疑で同病院の元外科部長(52)と当時の第2外科部長(47)の2人を書類送検した。


 柴田浄明捜査1課長は「あえて書類送検することにした」と述べた。富山地検は不起訴とする見通し。

 県警は、2人は患者が死亡することが分かっていながら呼吸器を外したとした。しかし遺族に被害者感情がないことや厚生労働省の終末期医療の指針に照らし合わせて、「重い処分は求めない」とする意見書を添付することにしたと説明した。

 県警は、元外科部長は入院中の末期患者6人の呼吸器を外し死期を早め、残る1人の60代男性については2人が共謀し、第2外科部長が呼吸器を外し死期を早めた疑いがあるとした。

(共同)
 
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・・・なんですかorz

意見書とは、「重い処分を求めない」とするものであったと言うのに、

読売のフィルターを通ると、「厳重処分相当」の意見書はなかったと書く訳です。


ああ、なんというメディアリテラシー。

「だって、ウソは書いてないモン!」

とでも言うんでしょうね。