小難しい話を長々と連載して申し訳ありません。しかし、この連載には、ネットワークオーディオの音質を考える上で重要な示唆が含まれていると感じますので、是非、興味がある方は読んでみてください。興味の無い方は、お許し下さい。
なぜ、ベクトルの概念が必要なのか
妨害:Non-Data Disturbanceをなぜ、単なる数値では無く、ベクトルとして扱う必要があるのでしょうか。
実は、「電源の変動が小さいこと」と「ケーブルを流れる高周波電流が小さいこと」は、同じではありません。ある装置が一方を抑えても、もう一方にはほとんど作用しないかもしれません。さらに、最終的な再生回路が、どちらに敏感かも違う可能性があります。
また、ある一つの値の変化、例えば、電源電圧の変動が、クロックのジッターやコモンモードノイズを変化させることは容易に想像が付きます。ネットワークオーディオの音に関係するであろう、各種パラメータは互いに影響し合っているのです。これらを記載するには、単なる数値での記載では足りません。
そこで、妨害:NDDを一つの数値にまとめず、複数の物理量を並べたベクトルにします。こうすることで行列を導入すれば、相互が影響し合う線形量として扱う事ができます。
実は、このベクトルの概念を導入するべきだ、というアイディアは、何と! ChatGPTでは無く、DOCONOのアイディアなんですよねーー、と自慢。
今回の出発点として選んだのは、次の五成分です。ちなみにこの5成分を考えたのはもちろんChappyです。
| 成分 | このモデルで表すもの |
|---|---|
| V_CM | 指定したLAN信号線とローカル基準との間の、コモンモード電圧の変動 |
| I_CM | 同じ信号線群に流れる、コモンモード電流 |
| V_Power | 電源HOTとローカルGNDの間の差動電圧の変動 |
| V_GND | ローカルGNDと、別に指定した基準点との電位差の変動 |
| δt_Clock | 指定したクロックのタイミング変動 |
ここでV_CMとI_CMの両方を入れるのは、電圧と電流が、経路のインピーダンスを介して関係する別の量だからです。
例えば、単純な抵抗性の経路なら、同じコモンモード電圧でも、経路の抵抗が10分の1になれば電流は10倍になります。「電圧だけ分かれば十分」とは限りません。
GND電位変動も、電源電圧変動とは分けます。
電源のHOTとGNDが、外部基準に対して同じだけ上昇した場合、HOT–GND間の電圧は変わりません。しかし、外部基準に対するGND電位は変わっています。
また、同じ機器内部でも、デジタル回路の帰還電流が共通のGNDインピーダンスを流れることで、別の回路に誤差電圧を生じさせることがあります。
ただし、この五つは、無条件に独立した「五種類のノイズ」ではありません。測定点、基準電位、電流の定義を指定し、同じ現象を重複して数えないようにします。
クロックについても、LANのビットクロックなのか、内部の作業クロックなのか、音声サンプリングクロックなのかを区別する必要があります。複数のクロックが重要なら、成分を増やします。
ベクトルにする理由は、複雑に見せるためではありません。異なる性質の変動を、途中で一つの数字に潰してしまわないためです。
Gを行列にする理由は、「妨害の種類が変わる」ことにあります
上記の式の、Rが五つの成分を持つなら、上記の式の伝達特性Gも、一つの数値では足りなくなります。
さらに重要なのは、ある種類の妨害:NNDが、そのまま同じ種類として伝わるとは限らないことです。
例えば、ある電流がGNDの共通インピーダンスを流れ、電位差を生じさせる場合には、電流の変動が電圧の変動へ変換されています。
そのような変換を含めて扱うために、Gを行列にします。
[ g11 g12 g13 g14 g15 ]
[ g21 g22 g23 g24 g25 ]
G = [ g31 g32 g33 g34 g35 ]
[ g41 g42 g43 g44 g45 ]
[ g51 g52 g53 g54 g55 ]
行は「出力側のどの成分か」、列は「入力側のどの成分から来たか」を表します。
例えばg₃₃は、入力側の電源変動が、出力側の電源変動としてどれだけ伝わるかです。g₄₂は、入力側のコモンモード電流が、出力側のGND電位変動へ結合する作用を表す項になります。
また、電源変動がクロックタイミングに影響する経路を仮定するなら、それをg₅₃として記述できます。
つまり、対角成分は同じ種類の妨害の伝達、非対角成分は異なる種類への変換を表します。
基本式の形は変わりません。
ただし、今度はRとNが列ベクトル、Gが行列です。Nも、Rと同じ五成分に分けた付加妨害を表します。
実際には伝達特性は周波数に依存するため、Gₙ(f)と書く方が正確です。また、電圧・電流・時間という異なる単位を扱うので、各係数には対応する単位が必要です。
これは、動作条件を定めた線形近似モデルです。クロックで駆動される回路の周波数変換や非線形作用まで、固定の5×5行列一つで完全に表せるという意味ではありません。
ここまで来ると、ほぼAI君が書いてくれています。私は理解をするのがやっとです。という訳で次回に続きます。
