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あのYouTubeは計測データを示せばそれが科学だと思われる人にとっては非常に説得力があるようで、多くの人が賛同しています。まあ、それに反論するのも馬鹿馬鹿しいのですが、しかし、似非科学は見分けるのが難しいし、時に説得力があるのです。

 

彼は理想的な再生はスピーカーの間に音が並ぶと述べています。これは余りにも浅薄な知識としか言い様がありませんし、もし、彼がそのようにしかStereophonicの音像を体験できないのだとしたら、彼の聴覚は位相差や時間差についておそらく知覚できないのでしょう。

聴空間(人間が聴覚で知覚する空間を聴空間と言います。ステレオ装置は聴空間を再現するための技術の一つと言えます)の再現には、昔から様々な試みがなされています。また、2つのスピーカーの外に音が定位したり、上から音が聞こえたりという現象は昔からよく知られており、研究も数多くなされています。

 

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jasj/39/8/39_KJ00001453423/_pdf/-char/ja

 

上記の論文には、ステレオ再生でどのように聴空間の再現がなされていくのかの歴史的な経緯や実験的な観察の歴史が述べられ、私たちが、たった二つのスピーカーからの再生で、音が後ろから聞こえたり、スピーカーの外に定位したり、Michael JacksonのJamのように耳元で男がささやいたりという事がどのように起きるのかが書かれています。

 

是非、この論文、読んでみてください。この論文を読むと、なぜ、YG Acousticsが位相特性を重視しているのか、そして、なぜハイエンドスピーカーはたった二つのスピーカーで部屋中に3D的に音をちりばめられるのかがなんとなく理解できると思います。

そして、こういった理論をミキサーの方たちは学んでいて、そして経験的にもいろいろな知見を積み重ねて、ステレオ空間をデザインしているんだという事が、以下の文章には書かれています。

 

https://www.jstage.jst.go.jp/article/itej1997/57/7/57_7_772/_pdf

 

この文章に書かれているように様々な工夫をして、ミキシングされた音を私たちのリスニングルームで再現するためには再生装置にかなりの正確度が求められることは想像に難く有りません。それは、ある信号に対して、正確にスピーカーの振動板を動かす技術としての正確度です。しかし、残念ながら、動的な現象である音楽がどのように正確に再現されるのかを静特性とも言えるSing波を測定しただけの周波数特性で語るのは不可能です。勿論周波数特性も重要でしょうが、動的な時間特性や位相特性も同様に重要なはずで音楽信号に対して、それらがどこまで保障されるのかを計測することは今の技術でも困難なのではないかと思うのです。もしかすると、私が知らないだけで、かなりの確度で出来るのかも知れません。

 しかし、どんなに正確に測っても少なくとも二つの耳で聞く音の良し悪しが実際には人間の頭部で反射したり減衰したり頭部を回り込んだりする音として認知され、それも単純に静的ではなく頭の動きによって生じる変化すら脳内での処理に畳み込まれて聴空間の認識を行いそれらの結果として判断されている以上、実際に音を聴いて、良いか悪いかを判断せざるを得ない、というのが今のオーディオ技術の限界なのではないかと思うのです。

 

これらの文章を読むと、創造の館の動画の中でも第一級に愚かな動画、

 

このB&Wの音の解説動画がいかに愚かしいかがわかると思います。

まさしく、科学の仮面をかぶった、妄信です。音量だけでステレオ音像を説明している時点で、理解のほどがしれます。

 

 

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創造の館が理論的だとおっしゃって居る方たちは、もう少し音の認知がどのようにされているのか、そして、周波数特性や歪み特性が音の良し悪しを決める、非常に限局的な要素でしか無く、それ以外の要素が非常に大きいのだという事をきちんと認める必要があると思います。

 

彼はまた、こんな動画をあげています。全てを周波数特性と歪み特性で語ることの愚かさをもういい加減、知るべきでしょう。

そして、20kHzまでの周波数特性が一直線なら、音は同じ、というのは愚かな主張です。なぜなら、音楽は20kHzまでの正弦波で構成されているわけでは無いからです。例えば、矩形波に近い波形には、周波数としては20kHzよりも遙かに高い周波数の音が含まれています。その波形を正確に再現しようと思ったら、アンプの再生周波数はどんなに高くても高すぎることはないのです。

 

この説明に納得している方は、是非とも人間の音の知覚について学んでほしいものです。もっと複雑で、その複雑さ故に解析し切れていないというのが現状なのです。

 

その意味で、SoulNoteの設計者加藤さんがおっしゃっている、計測データからの決別というのは一つの英断だと思うのです。