たまに見るオーディオ系のYou Tubeですが、少なくとも私には、あんまり同意できるところがありません。

私がまだ、沼にハマる前にはこれに似た情報をよくWeb上で読んで信じていましたし、信じてもいました。でも、今思えば、おそらく彼らは本当にハイエンドな組み合わせの音は聴いたことがないんじゃないかなと思います。

 

 

例えば、この動画の冒頭、アナログレコードの音がCDより豊かに聞こえるという質問に対して、それは逆だと。うーん、システム次第だと思います。我が家では少なくとも同額ではアナログレコードの再生系の方が音が良く感じます。

元々、私の耳の周波数レンジはそれほど広くはないので、周波数が20kHzまで伸びていようが伸びていまいが関係ないのですが、それでもLPレコードの方がよく聴こえました。

アナログレコードは、左右のチャンネルはレコード溝の同じ場所に振動として記録されるので、左右のアナログ回路によほど差がなければ、基本的には左右チャンネルの時間的ズレはほとんど生じないはずです。一方で、CDは一つのデータとして、左右チャンネルが交互に記録され、再生時にクロックに従って時系列に再構築されますので原理的に左右チャンネルの同時性が失われやすい宿命を負っています。私はレコードの音の良さはこういった、左右のチャンネルの時系列の乱れの少なさが影響しているのかなと思っていますが、とにかく音の分離がいいのです。一方でCDは安いプレーヤーで聴くと音が渾然一体となってしまって、平面的に聴こえます。おそらく、この聴こえ方の差を機器で測定しようと思うと、ns単位の時間的な位相の差異を測定しなければわからないのじゃないかなと勝手に想像しています。

 

だって、そもそも耳は平行に2つしかないのにわたしたちは、上から音がするとか、下からするとか、聴き分けられるし、後ろと前もちゃんと聴き分けています。これは、耳に入ってくる音が頭で反射し、耳介で反射して鼓膜に届く微妙な時間差と周波数のずれから聞き分けていると言われています。秒間340m進む音が例えば2メートル前で2メートル離れて別々に発せられれば、おそらく多くの人が違う場所で音がしたことを聞き分けるはずです。この時の左右の耳に届く音の時間差は僅か30ns程度。このわずかなズレや音の大きさ、頭での反射の違いを脳が判別し、位置を特定しているのです。この位相のズレや音の強弱を利用すると2chステレオでも立体的に音が聞こえます。例えば、YMOのライディーンをきちんとしたステレオシステムで再生すると頭の後ろ斜め上からピュンピュンとゲームの射撃音がします。これを周波数やダイナミックレンジだけの測定でうまく再生できるかどうかを言い当てることは不可能ではと思います。

 

最近は聴覚の研究も進み、その時間的分解能や周波数などの時間変動を正確に測定する必要性がわかってきています。

下記にある研究の論文を添付してみます。

https://www.taf.or.jp/files/items/548/File/P236.pdf

 

先のYOU TUBEチャンネルを見るにつけ、人間の聴覚特性についての理解が足りないなと感じます。私たちはなんで音が立体的に聞こえるのかについて最近ようやく理解が進んだところですし、僅か2chのステレオ再生でもなんで音が立体的に聞こえるのかについての全てを理解している訳ではないのです。

 

ですから、機器による測定だけではなく、人間の聴覚を頼って、オーディオ機器を作る必要があるのだ、と私は理解しています。測定は重要だとは思いますが、それは私たちがオーディオ機器の性能について知らなければならないことが1万個あるとすれば、その中のわずか数個について測定しているにすぎないでしょうし、実際、聴覚についての私たちの理解もせいぜい1万個のうち1000個がいいところでしょう。

 

そう考えれば、オーディオメーカーの方達が耳を頼りに音を作り込んでいるのは納得できますし、重要なファクターのうちの一つである、左右の音の時間差について、原理的にずれがないアナログレコードやアナログテープの音の方がデジタルよりも、良いと感じるのは納得がいくし、真実なのだと思います。