急に熊本県菊陽町のニュースが激しく出回り、山間の無人駅は台湾人が列を作り、近所の飲み屋もかなり儲かっているという。

 

 

台湾の半導体製造大手・TSMCが熊本・菊陽町に建設した第1工場の開所式が2月24日に開かれたのだ。岸田もビデオで祝辞を読み、斎藤経産相は、第2工場への支援について最大7320億円を助成すると発表した。第1工場と合わせると、最大で1兆円を超える支援だってよ。

なんで政府はこんなにも舞い上がっているのだろうか。

 

何だか知らんが、岸田は海外向けの支援には金に糸目はつけない。日本国民のことには全く関心がないが、海外なら財源など問題にもしない。(日本国民は支払う側であり、受け取る側ではない。日本国民は収奪される側であり、幸せにするつもりはないと岸田!移民は宝、外国ファーストの岸田!)

ウクライナ支援には10兆円超、北朝鮮には5兆円超(これは噂にすぎないが)、そして台湾企業にも1兆円。これらは一つも国会で審議しない。野党も知らん顔だ。与野党ともに儲かる話なのか、野党の怠慢なのか?

 

というのもITビジネスアナリストの深田萌絵氏がこの台湾のTSMCへの政府支援のめり込みにかなり前から批判していたからだ。しかし私は余り関心がなく記事を見てこなかった。

菊陽町開所式や近隣の土地の値段が上がった等の話から、それで地元の雇用は増加したのか、してないんじゃないか、またTSMCによる環境汚染、水質汚染が心配されているようだしということで少し調べてみた。(主に深田萌絵氏の記事)

 

一番の疑問は一民間企業しかも他国の企業にこれほどの大金を補助金とだして見返りはあるのか、ということだ。なければ税金の無駄遣い以上に税金の詐欺・横領、背信行為となるが。

なぜこんなにも補助金を出すようになったのか。

 

半導体エンジニアの「情ポヨ」氏が次のように解説する。

「TSMCの2022年売上高は2兆2523億台湾ドル(約10兆6000億円)である。前年比44%増というすさまじい成長だ。その中で日本向けは地域別増加率で最大である66%増だが、TSMC全社売上比での割合は5.3%に過ぎない。売上高5%前後に過ぎない日本にTSMCが進出したことに首をかしげる方は多いだろう。

TSMCの地域別売上で最大なのはアメリカで、全社売上の66%を占める。一部にはアメリカで半導体ファブ(工場)を作るのが理にかなっているとの意見もある。

 

しかし、この5%の売上高の半分以上が、実はソニーの半導体子会社ソニーセミコンダクタソリューションズ(以下ソニー)であることを知れば、見える景色は変わるだろう。今回のTSMC進出は日本最大顧客のソニーがいたからこそである。(トラ注:そしてソニーはアップルに作った半導体を納入している)

TSMCは台湾南部の台南にある工場14Aをソニー専用工場としてロジック半導体を生産している。そして工場14Bを同じくソニー専用工場として建設する予定だったとされる。ソニーのCMOSイメージセンサー(CIS)は積層構造となっており、画素部はソニーで内製しているが、回路部は外部調達しておりその大部分をTSMCに製造委託しているのである。

 

一方、経産省は2019年頃から先端半導体ロジックの製造拠点を日本に確保すべくインテルやTSMCなどと交渉を行っていたと報道されている。ただ、その時点では海外の大手半導体企業が日本に工場を作るビジネス的なメリットは何もなかったのである。

TSMCは2021年3月に日本政府からの190億円の助成を受けることで後工程向けの3DIC研究センターをつくば市に設立したが、それは業界内でお付き合いとも言われているもので、前工程に関してはコストメリットがないため前向きな回答はなかった。

 

車載半導体不足で潮目が変わる

この流れが変わったのは2020年末から自動車向けの半導体不足が顕著になったためだ。2021年に自民党は半導体戦略推進議員連盟を設立した。同年5月21日には初会合を開き、その中で甘利明会長は「日本にとって半導体戦略は今後の国家の命運をかける戦いになる。この議連がその先陣を切っていきたい」と語った。

この動きを受け経産省も積極的な交渉を始めたのは間違いないだろう。その結果、TSMCは2021.10.14の四半期決算説明会で日本に半導体ファブを建設すると正式に明らかにした。

2021.11.9にTSMCは正式に半導体製造を受託する子会社Japan Advanced Semiconductor Manufacturing(JASM)を熊本に設立すると発表し、ソニーも少数株主として参画した。建設地が熊本なのは、熊本県菊陽町にソニー熊本TECの拡張を見込んで隣接地に工業用地を確保していたことや熊本で2000年から半導体工場を運営してきたソニーの人員を含めた協力が得られるからだ。

 

この熊本での計画は、先に説明したTSMCが台南で進めていた14B工場計画を丸ごと熊本に持ってきたものである。しかし、このままではTSMCとソニーのためだけに税金が使われることになり、肝心の車載半導体の確保にはつながらない。そこでデンソーを少数株主に迎え入れ22/28nmノードプロセスに加え、日本では初めての12/16nmノードFin-FET技術の半導体を製造することになった。

とはいえ、製造の大部分がソニー向けであることに変わりはない。また、課題であった高コストに関しても建設費用の半分近くを日本政府が助成することになり、そのための法律(特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律)も2022年3月1日に施行された。その認定第一号としてJASM/TSMCが選ばれ最大4760億円の助成が決まったのである。

(中略)

ソニーとTSMC、そしてアップル

2022年12月12,13日にアメリカのIT大手アップルのティム・クックCEOが熊本を訪れた。

2023年に発表されたiPhone15のカメラにも従来同様にソニー製のCMOSイメージセンサー(CIS)が採用された。しかし新型CISの製造に苦戦していたことがソニーの四半期決算発表会で明らかになっている。その製造遅延に関しては当然アップルも把握しており、クック氏の熊本訪問は悪く言えば尻に火をつけにきたと考えられる。

このことでソニーは厚木にいる技術者も熊本での立ち上げ支援に充当したことが漏れ伝わっている。そして、クック氏のもう1つの目的にはJASMの建設が予定通り進んでいるかの確認もあっただろう。日本政府の都合で本来の計画(TSMC台南製造)から熊本に変更されたわけで、それによってアップルの製造計画に影響があってはならないからだ。クック氏は購買・SCM(サプライチェーン・マネジメント)部門出身のプロであることを理解していれば上記の理由は理解できるだろう。

 

アップルは購買力が頭抜けているだけではない。同社には製造メーカー出身のエンジニアが多く採用されている。この技術詳細やコストを熟知したエンジニアたちが短期・中期(5年先)・長期(10年先)のシビアな技術仕様を作成し、購買部門がフォーキャスト(予測)を提示する。アップルのサプライヤーはこれらの要求を実現するために開発計画や設備投資計画を立案し実行するのである。

現在報道されているJASM第2工場や第3工場、ソニー熊本TECの新工場建設も他の顧客からの需要ももちろん考慮するがこのアップルからのフォーキャストをベースにして投資が検討されているはずである。アップルはTSMCの2022年売り上げの23%、2021年は26%を占める最大顧客である。ソニーのCIS部門の最大顧客ももちろんアップルである。

TSMCもソニーももちろん他のサプライヤーも最大顧客アップルの要求を満たすために、それこそ馬車馬のように走り続けるしかないのである。要求を満たせなくなった場合、ジャパンディスプレイ(JDI)のようにシビアな判断が待っており、その厳しさからサプライヤー企業の中からは「毒まんじゅう」になぞらえ「毒リンゴ」と揶揄する声もあるほどだ。

毒リンゴを食べたウェーハ姫のハッピーストーリーは果たして描けるだろうか。

(引用終わり)

 

この「情ポヨ」氏の解説によれば、結局はTSMCの後ろにアップルがいて、日本は自動車用半導体不足に困ったことを解決するという単純な目的のために、大金をTSMCひいてはアップルのために調達してやったということになる。それでも日本にメリットがあればいいのだが。

 

 

まず深田氏が批判しているのは二つだ。

ひとつは、1兆円支援しても「自動車産業もTSMCが熊本に来ても優先的に供給を受けられない約束になっているので何のメリットもない」と深田萌絵氏は書いている。

 

 

「半導体不足がもう終焉に向かっていて、今から増産すれば余ってどうなるのか。業界の中でもそのリスクが危ぶまれている。それなのに外資にだけ大金をつぎ込む。その助成金を出すプロセスも、きちんとオープンにして審議がなされなければいけない。

この前NTT法廃止の総務省の委員会に出たが、結論ありきのアリバイ作りの委員会だった。しかも一瞬だけ告知してすぐに募集を締め切り、外部の人に気づかれないようにしている。参加できないように閉め出している。

TSMCでも同じようなことをやっているのかもしれない。ほぼ一兆円の大金をなぜ我が国は自由に使えるか。審議もせずに一人の者が、俺が使うからと勝手に決定しているのだ。」と深田氏。

 

そして関連中小企業にメリットはあるのか。

「TSMC誘致で日本の半導体産業は復興するという夢物語を語っている人がいるが、TSMCの工場が完成しそうになったら台湾から600社ものサプライヤーが熊本だけではなく、九州全体に来ることになりそうなのだ。

そうなればTSMCが日本に来るから儲かると思って喜んでいた日本の中小企業のライバル社も一緒に台湾からやってくる。そして台湾の会社の方が安いので日本の中小企業は根こそぎ仕事を奪われてしまう。そして日本の半導体産業の地盤的なものは壊滅的な打撃を受ける。

自動車産業も、TSMCが熊本に来ても優先的に供給を受けられない約束になっているので何のメリットもない。お金だけ持っていかれ、水は吸い上げられて汚れ、地元の中小企業に仕事が来るわけでもないという構造になっている。もうTSMCに全部吸い取られて、日本から何も無くなってしまう。それが今もう始まっているのだ。」

 

また2年前の深田萌絵氏の記事だが、日経新聞中国版の日経中文網の記事を引用して、日本政府は日本企業を援助するべきではないかという真っ当な批判記事を書いている。当時は4000億と言われていたようだが、今ではその3倍にものぼっている。

 

 

2022年1月13日

日経「中文網」がTSMC誘致に4,000億円を酷評

今回のTSMCを日本に誘致するために4,000億円を出すことに対して、日経中文網(日経新聞中国版)が酷評している。

「TSMCの工場建設のために日本が巨額の補助金を出す価値はあるのか」日経中文網

「TSMCはソニーグループと協力して、熊本県に新工場を建設する方針を確定しました。
総投資額は8,000億円と言われており、日本政府はその半分程度の助成金を出す見込みです。日本政府が海外企業に巨額の支援をすることはまれであり、今後も浮き沈みが予想されます。
世界的な半導体不足の高まりを背景に、TSMCはアメリカと中国本土に次ぐ3番目の外国投資先として、日本を選択しました。
経済安全保障と危機に対処するための半導体の優先調達の視点から、日本は1年以上にわたって熱心にTSMCを待ち続けており、台湾で90%以上の生産を行うTSMCはついに日本の要請を受け入れました。
しかし将来的にはまだまだ多くの障害があります。補助金の支給方法です。日本政府は10月末の衆院選後に作成された2021年の補正予算にTSMCの補助金として数千億円を含める予定。
これまで日本政府は、外資にこれほどの多額の支援を提供したことはありません。TSMCに血税が注がれると多くの批判が上がるでしょう。
今回はソニーやデンソーなどの日本企業の参加によりTSMCの工場建設の調整が進みました。多くの日本企業が新工場に投資をすれば、TSMCに税金を注入するだけの状況を回避できます。
しかしTSMCはこれまで合弁事業という形で半導体工場を運営したことはほぼありません。
TSMCはその強力な技術と厳格な利益管理により、資本拠出という形でほかの企業と協力することを望まない。業界全体で「最も嫌われている合弁会社」として知られています。2020年のアメリカの新工場も、TSMCが単独で資金を提供しています。」

 

「そもそもオールドテクノロジーの工場建設に、なぜ8,000億円もかかるのだ」
という声も一部で上がっている。そしてソニー内部の方からの情報だが、
「ソニーは以前から独自にTSMCを誘致する方向で動いてはいたが、経産省に反対をされていた。それでいったん下火になったかのように見えたが、なんとTSMCの台湾ロビーが日本の愛国政治家を説得して、日本政府に金を出させる方向で、話がつきそうになっている」
という、恐ろしい裏話も出てきている。

日経中文網で言われているとおり、それだけの巨額の金があるのなら、なぜ日本企業に出さないのだ。普通に考えてそれが正しいはずだ。

日本は自力で半導体産業を再建できる

日本は自力で半導体産業を再建することができる。TSMCが使っている半導体の製造装置や素材などの多くは日本が提供しているものだからだ。

その日本企業のサプライチェーンを分断し、日台の半導体サプライチェーンを構築しようなど、そのようなバカげたことはすぐに止めるべきだ。

日本国民の許可も得ずに4,000億円を外資に突っ込もうなど、そのような気が狂った提案は止めてほしい。見捨てられた日本国民の方をキチンと振り返って、日本の半導体産業、日本の半導体サプライチェーンを、日本人の手で再構築してもらいたいと望んでいる。

「日台で経済安全保障のためにTSMCを誘致する」
それこそウソだろう。TSMCは中国、台湾、アメリカのすべての国と仲良くしていて、情報がそれぞれに流れていく。しかも中国人の会社だ。

日本でできることを日本人の手でやらずに、日本国民の血税を外資に流し、経済安全保障上の問題があるなどと言ってTSMCに金を出し誘致するのはおかしい。理論上間違っている。

経済安全保障上の問題が起こるのであれば、日本国内で完全に行うべきだ。

ということで、TSMC誘致、補助金4,000億円には断固反対だ!

(引用終わり)

 

深田氏は愛国者として台湾、中国、そして日本の政治家がつるんで日本の産業を棄損しようと企んでいることに憤っているのだ。単に経済合理性でだけで動いているのではないTSMCの日本誘致と巨額補助金だ。日本のために使われるのならいざ知らず、結局はアメリカのため、台湾や中国のために日本がいいように使われるのなら、この誘致に関わった者たちは売国奴というしかない。

 

 

 

深田氏が憤っているのは、もう一つTSMCによる環境汚染のことだ。これは蒲島県知事の問題にもなってくる。菊陽町には何のメリットもないのだった。そのことは次回に。