昨日、集英社オンラインに「海軍大将・山本五十六も過去にダマされた…「水とCo2から石油を作る」技術が確立? ガソリン高騰の救世主となるか」と題する記事が載っていた。

また今日は西田昌司参院議員がYouTube週刊西田で視聴者の「水と空気から生成される人工石油「ドリーム燃料」が実用化の可能性があるのか」の質問に答えていた。

 

 

さすがは西田議員、このデタラメの本質を地球温暖化や再生エネルギーのデタラメと合わせて的確に回答していた。この短いYouTubeを見れば、こんなものは詐欺であることがたちどころに分かるというものだ。

 

しかし、世の中には泥棒も尽きないが騙される人間も尽きないのである。

今回の「水と空気から石油を作る」という「ドリーム燃料製造装置」の問題点は、またもや大阪府知事吉村洋文、つまりイソジン吉村が関わっていることで尚更お笑い好きな大阪らしい詐欺そして大掛かりな詐欺に仕立て上げられていることである。

 

3年も前になるのだが、吉村大阪府知事が松井市長も同席させて、たいそうな記者会見を開いた。

 

 

吉村「うそみたいな本当の話で、うそみたいなまじめな話をさせていただきたいと思います。皆様もよく知っているうがい薬を使ってうがいをすることによって、コロナの患者さん、コロナがある意味減っていく。コロナに効くのではないかという研究が出ました」

 2020年8月4日の記者会見で、大阪府の吉村洋文知事が、「イソジン」などの商品で知られる「ポビドンヨード」のうがい薬で陽性率が下がったという研究結果を発表したのである。

これにはみんなたまげた。

「素晴らしい、イソジンでコロナ撲滅か!」なんて驚いたのではない。こいつまたバカ言い始めたぞ、というおったまげ、である。その普通の人の感覚はその通りで、イソジンはいつの間にか消えてしまった。

吉村は「うそみたいなウソの話で、うそみたいなデタラメな話」をわざわざ記者会見まで開いて恥をかいたのである。

それから3年経って今度は嘘みたいな(じゃなくて嘘というより手品なんだが)「水と空気から石油を作る」という「ドリーム燃料製造装置」の実証実験を今年の1月に大阪府、大阪市などが支援して行ったのである。

 

恐らくこの手品装置を作った京都大学名誉教授と会社は、イソジン吉村の性格をよく調べたに違いない。つまり、嘘話でも大げさに説明すれば、吉村はアホだからすぐに信じてしまう。イソジンと同じく吉村を巻き込めばこの手品装置に権威が付いて文句をいう奴はいなくなる、と。

 

まずはこの「ドリーム燃料製造装置」はどういう仕組みか見てみよう。

エネルギー関連の情報ビジネス誌であるオルタナが次のような記事を書いている。

 

オルタナ

博士の人口軽油は燃焼効率が高いのでディーゼル燃費が40%伸びる‼️

そして透明な排気ガスしか出ず環境負荷も極端に少ない‼️

活性化させたH2O『ラジカル水』がなんと!CO2を自動で吸収して高速反応‼️

勝手にディーゼル燃料をバケツに生成してくれるので単価14円/ℓ以下で製造可能‼️

 

2023年1月、大阪市や大阪府などが支援して、「水と大気中のCO2などから生成する人工石油」の実証実験があった。この「ドリーム燃料製造装置」を開発したのは、京大名誉教授で立命館大学総合科学技術研究機構・上席研究員の今中忠行氏だ。同氏はオルタナの取材に対して、装置を「永久機関的」だと形容した。(オルタナ編集部)

 

    大阪市で行った実証実験の概要

 実証実験の主催者はサステイナブルエネルギー開発(仙台市、光山昌浩社長)だ。大阪府、大阪市、大阪商工会議所の三者の支援を受け、1月11日-17日の7日間、花博記念公園鶴見緑地で行った。

オルタナ編集部は今回、光山社長と今中氏の双方に取材した。

 両者の資料などによると、人工石油は大気中のCO2(二酸化炭素)と種油と電力だけで生成されるという。水を特殊な光触媒によってラジカル水にして、そこに種油とCO2を加えることで、人工石油ができるという。

今中氏は「種油が軽油なら人工軽油ができる。種油が灯油なら人工灯油ができる。種油を加えるのは一回目の反応だけで、二回目以降の反応には新しい種油は要らない」とオルタナ編集部に説明した。

特殊な光触媒は二酸化チタン、鉄、プラチナなどでできているという。この光触媒を水にさらし、UVライト(ブラックライト)を当てることで、「ラジカル水」を生成できるという。

人工石油の生成コストは、軽油の場合1リットル14円

 同社の試算によると、種油10リットルとラジカル水8リットルから合成燃料1リットルが生成できる。この過程で種油10リットルがそのまま残るので、次の反応に使い回せる。残りの7リットルは排水される。人工石油の生成量は5~12%で、1回の反応に3~5分程度掛かるという。

人工石油生成装置の特許は今中氏が代表を務めるアイティー技研(滋賀県草津市)が保有しており、実証実験では同社の装置を貸し出した。この装置は、大気中からCO2を取り込む「炭酸固定装置」と、光触媒を使って合成燃料を生成する装置の2つに分かれる。

 サステイナブルエネルギー開発の試算によると、人工石油の生成コストは、軽油の場合、1リットル14円となる。内訳は、ポンプやUVライトの電気代、原水の費用、メンテナンス代などだ。種油は使い回せるため、コスト計算に入れていない。

「ドリーム燃料製造装置」で生成した人工石油で発電機を回した場合、発電コストは「1kW時当たり3円」と驚異的に安くなると光山社長は試算する。

サステイナブルエネルギー開発は今後、「ドリーム燃料製造装置」を第三者に月額数十万円でリースし、月産4万3200リットルもの人工石油生成を見込んでいる。リースに出した場合、装置の設置工事費用を加えると、人工石油のコストは「1リットル50円ほど」になるという。

(引用終わり)

 

他のネットには次のように解説されている。

「この技術の要諦は本来は電気分解を用いて水素を取り出すところを、逆浸透膜とUVライトを用いる点にあるようだ。ラジカル水を含んだ水素と二酸化炭素の結合を常温常圧下で行えるとしている。使用する電力はポンプを動かす電気動力だけのようだ。」

 

 もうこれを読んでみて使われている言葉が怪しいと思わないか。

「ラジカル水」とか「特殊な光触媒」とか「種油」とか。

そしてその仕組みも科学的な言葉を使いながらまともな説明はほとんどしない。水と空気から石油を合成するのに、電気つまりエネルギーはほとんど不要で、種油と特殊な光触媒さえあればできるという。あほちゃうか。そんなもんで石油ができるわけないじゃろう!

欲の皮の突っ張った強欲な年寄りにネズミ講的な投資ウソ話、すぐにも3割5割の利子は当たり前に付く

なんて大げさにマイクで語りかける詐欺師そのものじゃないか。

 

 私はこの「水と空気から石油を作る」という話をネットでみてすぐに思いついたのは、集英社オンラインも指摘しているように、海軍大将・山本五十六も過去にダマされたというお話だ。

吉村はアホだからそんな昔の話は知らなかったに違いない。また知っていても騙されやすい性質だから、こんな馬鹿げた説明にコロッと騙されたのだろう。

 

集英社オンライン

「海軍大将・山本五十六も過去にダマされた…「水とCo2から石油を作る」技術が確立? ガソリン高騰の救世主となるか」

…今から84年前、そんな夢物語に飛びついた近現代史の大物がいた。

ハワイ真珠湾攻撃を指揮した連合艦隊司令長官の山本五十六である。

1938年激しい戦下にあった日本は、国家総動員法を制定。これにより軍は議会の承認がなくても人や物資を調達できるようになった。その背景には、長引く日中戦争によって、物資が不足するという喫緊の事態があった。

当然、航空機の燃料、つまりガソリンも足りていなかった。そんな中、ある男の発明に日本海軍が注目したのだ。

山本五十六を騙した男、男の名は本多維富。本多は「水からガソリンを作る」という何とも信じがたい発明に成功したという触れ込みで、時の政財界人、大学教授、公爵、大手メーカーなどが後ろ盾となり、名を上げていた。

そのアンビリーバボーな話は、海軍次官の山本五十六の知るところとなる。そして彼は真偽を確かめるために実験を命じたのだ。

実験が行われたのは、1939年(昭和14年)1月、海軍省の庁舎。

そもそも本多維富は「藁から真綿を作る」など、非科学的な製造法を周囲に信じ込ませてきた前科があった。そのため彼のことを詐欺師、ペテン師と断定する、否定的な立場の人間も数多く存在した。

実際、山本五十六に実験を中止するように直談判した者もいるそうだ。

それでも、GOサインは出た。

燃料不足が差し迫った状況の中で、山本はその真偽を確かめるという使命感以外に、わずかな可能性にロマンを感じていたのかもしれない。

インチキがバレた瞬間

 注目の実験は水に7種類の薬品を混ぜた液体に火をつけたところ、見事燃え上がったため、成功となるのだが、物言いがついた。

実は目を皿のようにして事の行方を注視していたスタッフがいたのだ。それは18名の航空本部の製図工だった。

「十八枚のスケッチと実験成功の薬瓶を照合したところ、スケッチの中に成功した薬瓶は見あたらず、逆に昨日のスケッチの中から一本の薬瓶が失われているのが分かった。(中略・・)かわりにスケッチとは異なる薬瓶が一本紛れていた。ガソリンとなった薬瓶だった。たしかに、すり替えが行われたのだった」(引用:山本一生『水を石油に変える人 山本五十六、不覚の一瞬』)より

 そこで、再度実験が行われるが、結局インチキであると結論づけられる。

そもそも水素と酸素の化合物で、もしガソリンが生成されるとしたら、酸素が炭素に変化しなければならない。そうした当たり前の科学知識を山本五十六ともあろうものが持ち合わせていなかったのか?

燃える闘魂・アントニオ猪木も、生前はサトウキビの絞りカスから新たなエネルギーを生み出そうと奔走するものの、事業は失敗し、多額の借金を抱えた。

 しかし、アントニオ猪木流に言うならば、「出る前に負けること考えるバカがいるかよ!」(猪木名言)であり、山本も常識的に重々承知していたが「やってみなければ結果は分からない!」という心境だったのかもしれない。

(引用終わり)

 

この詐欺師の話は最近読んだ大谷敬二郎「憲兵 元東部憲兵隊司令官の自伝的回想」のなかにも出てくる。引用してみよう。

「…この水からのガソリンは、政界仲間では知れわたっていた。それが、どうして海軍の耳に入ったものか、ある日、海軍の将校がこの男(トラ注 発明家と称する詐欺師)の研究所を訪れた。そして、そのバックに政客辻嘉六氏がいることを知った。海軍艦政本部からは、辻氏にあててこれが実験を見せてもらいたいと申し込んできた。事の真実を信じ込んでいる辻氏は、もちろん大喜びでこれを承諾した。この男はまもなく、いくばくかの実験材料を携えて、海軍の水交社にカンヅメにされてしまっ た。そしてこの男の実験が始まった。

ちょうど、そのころだった。陸軍航空本部の某課長がわたしを訪ねてきた。

「水からガソリンをつくるとのことで、海軍がこれを実験していると聞く。もしこれが成功するならば、海軍の独占とすることなく、ぜひ陸軍も一枚加えてもらいたい。ついては、そういった運びになるよう憲兵に協力してもらえないか」

わたし(大谷)は陸海軍のとらぬ狸の奪い合いかと苦笑したが、

「水からガソリンというが、これは科学的にも根拠のあることか」と反問したところ、この課長、

「わたしもよくわからないが、ドイツにはそういった情報もあるということだ」

と、至ってたよりない返事だった。だが、陸軍もこの実験なるものに色目をつかっていた。

 さて、水交社での実験は、海軍技術陣の前で公開されることになった。多くの技術者を前にして、くだんの男は、わけのわからぬ薬品を使って苦心惨憺である。だが、いつまでたってもできない。試験瓶を前にして夜、十二時、一時をすぐることも稀でなかった。この男、 研究につまると今日は頭が痛い、身体の調子が悪いといって寝込んでしまう。海軍では、この男の研究態度というか、その実験なるものに疑問を持った。これはあやしいと感づいたのである。そこで、海軍は一策をとった。実験用に与えた試験瓶をひそかにスケッチしておいた。それから見学の技術者たちは、あまりこの実験室には出入りしなくなった。

一週間もたった真夜中のことである。

「できました、できました、やっとできました」

この男、試験瓶をふって嬉しそうである。

なるほど、立派なガソリンである。天然のものと寸分違わないものだった。だが、この男の手にしている容器は、海軍のスケッチしたものではなかった。いつのまにかすり替えられていたのだった。

この男は詐欺罪で検事局に送られた。それに、この事業化のために奔走していた辻氏も傍杖(そばづえ)をくって警視庁に引っ張られた。」

(引用終わり)

 

海軍はこんなバカな詐欺師に騙されたのであるが、それは時局の然(しか)らしむるところであった。

今の日本もガソリン不足で同じような時代なのかもしれない。詐欺師にはそこが狙い目なのだ。

しかし、海軍の偉いところは常識をもってこの男の実験を疑ったことである。

現代のイソジン吉村は海軍の常識も持ち合わせていないようだ。詐欺師の付け込むスキが大きく広がっているのだ。

 

この詐欺実験の片棒を担いでいるのが、京大名誉教授の今中忠行で、詐欺の理論づくりと権威付けを行った。つまり、京大名誉教授が詐欺や嘘などいうはずがないと思わせるために。

 

 いかにも怪しい京大名誉教授の今中忠行

そして、イソジン吉村は簡単に引っかかった。

大学教授でも金を目当てにこういう詐欺に協力するバカはいくらでもいるのである。

 

この実験の様子や解説はYouTubeにも載っている。

 

 本気で信じているのか単なるバカなのか!

 

三橋貴明氏にまで詐欺のお先棒を担がせようとした!

 

さて、投資詐欺話もそうだが、ちょっと小難しい用語をちりばめて大きく儲かると言われると、経済知識のない情弱者は簡単に騙される。しかし、経済や社会の仕組みをちょっとだけ常識をもって眺める力があれば、投資詐欺話やネズミ講の嘘など簡単に分かるものだ。

 

しかし、科学ものになると普通の人はよくわからない。理屈では負ける可能性もある。

我々の武器は常識と経験と直感だけだ。

ここで真面目な科学/技術者がこの嘘話をとっても丁寧に解説してくれている。

 

まずは武田邦彦氏

・水とCO2から石油が出来るというのはドリームではなく、通常の生物活動である。

もちろん、人間も現在の価格で石油はいくらでも作れる。

ただし、通常は水とCO2から石油を作ると、どんなに頑張っても石油を作ると石油から得られるエネルギーの5倍以上はかかることが証明されている。

したがって、1kcalの熱を得るために5kcalの石油を使うことなるので、だったら最初から石油を燃やせばいいじゃないかってことで誰もやらない。

・水と二酸化炭素から石油(このニュースだと軽油らしいが)を作るにはその石油が燃えるときに出るエネルギー以上のエネルギーを投入しないといけない。

エネルギーを入れなくても石油ができるならそれは永久機関になっちゃいますな。

やっぱ大阪って維新が牛耳ってるせいで科学のわかる人は役所にはもういないんじゃない?
こないだのイソジンが効くって会見も「どうしてそのような意思決定がされたのか」を検証してないので何一つ役所内の問題点は解決されてないし、今後もこういう詐欺に引っかかり続けるよ。

 

次は二つのYouTube動画だ。大場紀章という方が解説している。

一つ目は、そんなに儲かるなら、装置のレンタルなんかやらずに、自分で石油を作ったほうが儲かるのになぜやらないの、という指摘だ。

 

二つ目の動画は、まさに科学的な解説であり得ないことを論破している。

別に永久機関は存在しないなんて小難しいことは言わない。

石油を作るのに二酸化炭素はどれだけ必要なのか、そのための空気はどのくらいの量なのか、どういう風に吸着させるのか、という技術的な観点からだ。

簡単にいうと、すっごい空気量とそれをある時間で石油にするためには装置内を暴風という形で通さないとできないらしい。

もちろん詐欺師たちは、それは簡単です。「ラジカル水」と「特殊な光触媒」が可能にするんです、というだろう。

そして作った石油は海軍での実験のように「手品」ですり替えたに違いないんだけど。

 

   人工石油の正体を解説

 

 

 大場氏は、このようなエネルギーに関する詐欺話はいくらでもあるという。

だから、イソジン吉村が関わらなければ、装置を騙されて購入した後詐欺として大騒ぎになるんだろうけど、

イソジン吉村が最初から権威付けに出てきたから、単純に詐欺と言えなくなった。それがこの詐欺集団の狙い目だった。でも逆にここまで話が大きくなれば詐欺の成功確率はかなり低くなるんじゃないか。

そしてイソジン吉村にもう一つのニックネームが付けられるだろう。

ドリーム吉村、とね。

 

しかし、こんな詐欺は小さいし、社会的な害はほとんどない。

それより、脱炭素や再生可能エネルギー、メガソーラー等の国家的かつ地球規模の詐欺の方が余程世界中に害悪と厄災をばらまいて、資源の無駄遣いと環境破壊していることを問題にしないといけないんだけど。

 

(追伸)彼らはトンずらしたようだ。実験結果は延期だとよ。

最新情報も含めたこの詐欺話について分かりやすくまとめています。

 

もうおしまい、詐欺は失敗!どうするドリーム吉村?