増税をしようとすると選挙の際は忌避されるから、政権政党としては安易にはできないと相場が決まっていたように思う。

しかし、岸田になってからは、嫌がられるはずの増税がいとも簡単に実現してしまいそうな気配なのだ。

それは官民合同で国民に対して洗脳してきた結果というか「成果」!だ。

 

それは二つの事柄。

ひとつは、国の借金が1000兆円を超えて、日本の財政は破綻するという脅しが完璧に信じられていること。

もうひとつは、必要な施策をするには、財源が必要だが、それは増税しかないという嘘をこれまた完璧に受け入れていること。

 

なお、財源には増税と借金があるが、巨額の借金(国債発行残高)の存在により新規国債発行には重い足かせをハメてあるから、財源といえば「増税」のことなのである。

 

その結果、政策の必要性に理屈さえつけば、あとはいとも簡単に「増税」を言い出すことができ、国民も反論できず、「しょうがねえな」と諦めるのである。

つまり永年の洗脳が花開いて、増税しても政権党は議席を落とさないだろうという予測が可能となったのである。

 

当然その結果日本は益々縮んで、経済成長はせず、国民は貧しくなり、増税に苦しむことになるわけだが、これも国民の納得の上のことなのでどうしようもない閉塞感に苛まれることになるわけだ。

 

政治家も良いことをしたと思っているし、財務省役人は増税という至上の目標をやり遂げて満足しているし、経営者は賃金を上げずに、移民に仕事をやらせればいいし、国民を除けばみんな万々歳ということになるのである。まさしく「日本の自殺」(昔そんな報告書が出た気がするが)だ。

 

しかし、そういう洗脳に異議が唱えられ、ここ2~3年でMMT(現代貨幣理論)による積極財政が自民党政治家にも一部の国民にも理解されるようになってきた。

つまり、洗脳の2項目への反逆だ。

2項目とは、「巨額借金による財政破綻」という嘘と「財源は税金のみ」という嘘のことだ。

この二つの嘘を暴けば、日本の重しが解けて復活するのである。

 

そのため、御用学者や役人たちは躍起になってMMT理論をトンデモと呼んで否定しようとするのだ。

しかし、MMTは洗脳されつくした常識を覆そうとするから、理解されるのが難しい。特に一般庶民に対しては。

だから、MMT否定学者たちは、この素人受けするような論理を次々と繰り出してくる。

そして当然ながら、そのMMT批判を受け入れてしまうから、MMTを理解してもらうにはとても困難を伴うのである。

 

二つの洗脳を解くため、日本の財政は破綻しない、とか税は財源ではない、なんて主張すると、余りの常識外れの主張に怒りさえぶつけてくるのである。やむを得ないことではあるが。

そして、MMT派はその理論を理解させるのに成功しているかといえば、全くそうなっていない。それには理由がある。

 

ひとつは、MMTは貨幣とは何か、から始まり、銀行のそして日銀の信用創造を説明し、自国通貨建てなら国債をいくらでも発行できる、とか国債は返さなくてもよい、財政は赤字が常態なんだ、税は財源ではない等々ほとんど全て常識に反することなので、まずは面食らうのである。

 

まさに地球は球面であり、地球が回っていることを説明しても、肌感覚で理解できないのと同じだ。例えば、鉄で船を作れるといっても、江戸初期の者なら鉄が浮くわけがないと一笑に付すのと同じことだ。

 

もうひとつは、そんな難しい理屈を分かりやすく説明できていないということである。

三橋貴明氏のブログはMMT理論について分かりやすいほうだが、それでも多くの点でついていけない。私も少しは勉強しているつもりでもよく分からない。つまり、庶民のレベルまで降りてきて説明してくれないのである。

これでは反MMT派の常識的いい分に対抗できない。

 

例えば、日銀が国債の半分を買い取ってしまったが、それは国債が減価してもう債務超過しつつある。日銀が破綻してハイパーインフレになるとかなんとか。藤巻健史その他の主張だ。全くデタラメなんだが、何度も主張されると本気にする者も出てくるはずだ。

つまり、反MMT派というか財政は破綻する派の理屈は貨車で何台ももってくるほどなのに、それに対抗できていないのが実情だと感ずるのである。

 

今日は、三橋貴明氏のブログ記事と財務省出身の御用学者で典型的な財政破綻論その他のコラムを引用してみる。

その反論は私としてはまだ勉強中なので、追々ここで反論を書いていきたい。

どこまでできるか分からないが。

 

まずは三橋貴明氏のブログから。

◆「税金を集めて、みんなのために支出する」という神話(2023.1.9)

「昨年から始まった「財源論」が心底からバカバカしいのは、防衛費にせよ、少子化対策にせよ、普通に国債発行で支出されるためです。
 これを否定することは、時空を超える能力を持たない限り不可能なのです。

 令和五年度予算の防衛費は、2023年4月に支出が始まります。当たり前ですが、防衛税は徴収されていませんし、そもそも増税時期も決定していません。
とりあえず、日本国民は「政府は税金を集めて、支出している」という「神話」から解放される必要があるのです。

「政府は私たちの税金を集めて、みんなのために支出する」という神話こそが、日本国を凋落させている主因なのです。

 そういう意味で、昨年勃発した「財源論」は、「理解した人」を増やす可能性が高い「議論」を巻き起こすため大歓迎です。無論100%の人の意識を変えることは不可能ですが、「あれ?」と、思う人が増えれば増えるほど、我々にとっては得点、財務省にとっては失点になるのです。
 

岸田文雄首相、少子化対策「政策整理後に財源論」

 岸田文雄首相は8日のNHK番組で、政府の2023年の重要政策に少子化対策を挙げた。「政策の整理をまずおこなった上で予算や財源の議論を進めていきたい」と述べた。
 政府は1月に拡充策を検討する新たな会議の初会合を開き、3月末に政策のたたき台をつくる。首相は「政策横断的に子ども政策を考え、全体像を明らかにすることで政府の本気度を示したい」と語った。
 財源について「様々なきめ細かな議論をしなければならない」と指摘した。給付と負担のあり方や国と地方の関係、社会保険などの保険制度を含めて検討する方針を示した。(後略)』

「様々なきめ細やかな議論」と言いつつ、官邸や有識者会議の結論は、
「少子化対策には安定財源が必要だ。消費税増税やこども保険が必要だ」
 と、なるに決まっています。幸いなことというか、12年(税と社会保障の一体改革)期と異なるのは、与野党に「貨幣の真実」を知ってしまった政治家が増えてきていることです。

 何しろ、
「貨幣は誰か(民間や政府)の借り入れにより創出される」
「政府は税金を徴収する前に支出している」
「政府の財政赤字は、民間の黒字」
 等々は単なる事実であり、誰にも否定することができないのです。自分の頭で考えることができれば、すぐに真実に辿り着けます。
 もっとも、正しいことが「すぐに広まる」とは限りません。天動説から地動説への転換には、何百年もかかった。貨幣観の転換には、さすがにそこまで時間を要しないでしょう。ともあれ、急がなければならないのは間違いありません。 

 「財源」議論において、正しい貨幣観を持つ人を増やしていくのです。民主制の国民国家である限り、多数派形成以外に戦う術はないのです。」

 

◆真の意味での「未来の世代へのツケ回し」(2023.1.5)

「…改めて考えるとバカバカしいのですが、「戦闘機やミサイル」を買うために国債を発行したとして、別に未来の世代に「ツケ」は回りません。単に、政府発行の貨幣(国債)発行残高という「記録」が増えるだけの話です。 

 実際に、日本政府の負債(主に国債)残高は、1970年度の170倍超になっています 過去の先人たちが国債=貨幣を発行し、様々な投資をしてくれたからこそ、我々は現在の生活レベルで生きることができている。
 それにも関わらず、岸田内閣は「国の借金は将来世代にツケ回し」というレトリックで増税を強行し、国民経済、国民生活を破壊しようとしている。 

 増税により経済が疲弊し、国民が(さらに)貧困化し、インフラはボロボロ、科学技術力も凋落し、教育は崩壊した日本国を残すことこそが、未来の世代へのツケ回しであるにも関わらず。この欺瞞たるや・・・・。
 日本国は「貨幣観」の間違いにより、亡国に追い込まれようとしている。さすがに、あまりにも情けないので、亡国を回避するためにできることは何でもやります。」

(引用終り)

 

次は、財務省出身の御用学者小幡績・慶應義塾大学大学院准教授の反MMTコラムである。

少し長いので2回に分けます。

その1

「今回は「財政破綻は日本では起きない」という主張は、完全に誤りであることを説明しよう。

東洋経済オンラインで10月16日に配信したコラム「『このままでは国家財政破綻』論は1%だけ間違いだ」では、「日銀が国債を買えば大丈夫だ」「国全体のバランスシートは問題ない」」「MMT(現代貨幣理論)は有効だ」「インフレが起きてないから大丈夫」などと完全に誤った主張をする、エコノミスト、有識者たち、いや有害な言説を撒き散らす人々を論破することが、唯一の日本を救う道だと書いた。今回は、その仕事に取りかかりたい。

 

「国全体では貯蓄があるから大丈夫」は大間違い

まず「日本全体では対外債権があり、国全体では貯蓄があるから、日本が破綻することは絶対にない」というのは、単純な誤りだ。なぜなら、国全体でお金があっても、政府が倒産するからである。

これは、企業の例を考えてみれば、すぐにわかる。「日本全体で金余りだ」「銀行は貸す先がない」と言われていても、資金繰り倒産する企業は必ずある。それは、金が余っていてもその企業には貸さないからだ。なぜ貸さないかといえば、返ってくる見込みがないからである。

借金を積み上げ、一度も借金を減らしたことのない政府、そして赤字額は年々増えていく。毎年新しく借り入れる額が増えていく政府。貸しても返ってこないと考えるのが普通で、誰も貸さなくなるだろう。つまり、政府が借金をしたいと新しく国債を発行しても、それを買う人がいなくなるのである。銀行も投資家も金はあるが、買わないのである。

それは、地方政府と違って、日本政府には日本銀行がついており、日銀が買うから問題ない、ということらしい。これこそ誤りだ。

「日銀が国債を買い続けるから問題ない」という議論は、100%間違っているのである。

なぜなら、日銀が国債を買い続けることは、現実にはできないからである。

 

なぜ日銀が国債を買い続けることは難しいのか

また、「自国通貨建ての国は、理論的に絶対財政破綻しない」という議論は元日銀の著名エコノミストですら書いているが、それは机上の理屈であり、現実には実現不可能なシナリオである。それは、日銀が国債を引き受け続けるとインフレになるからではない。その場合は、インフレまで時間稼ぎができるが、インフレになる前に、即時に財政破綻してしまうからである。

日銀は、すでに発行されている国債を市場で買うことはできる。だから理論的には、日本国内に存在するすべての国債を買い尽くすことはできる。しかし、財政破綻回避のために買う必要があるのは、既存の国債ではない。新発債、つまり日本政府が借金をするために新たに発行する国債である。そして、これを日銀が直接買うこと、直接引き受けは法律で禁止されている。だからできない。

これを回避する方法は2つである。

1つは、民間金融機関に買わせて、それを日銀が市場で買うことである。これは、現在すでに行われている。民間主体から見れば、いわゆる「日銀トレード」で、日銀が確実に買ってくれるから、政府から新規に発行された国債を引き受け、それに利ざやを乗せて、日銀に売りつけるのである。

この結果、日本国債のほぼ半分は日銀が保有することになってしまった。
問題は、これがいつまで継続できるか、ということである。日銀は、継続性、持続性が危ういとみて、イールドカーブコントロールという前代未聞の、中央銀行としては最もやりたくない金融政策手段に踏み切り、国債の買い入れ量を減少させることに成功した。

逆に言えば、これ以上買うことの困難は現実に始まっており、無限に市場経由で日銀に引き受けさせることはできないのである。それでも、政府が国債を発行し続けたらどうなるか。民間金融機関は、これを引き受けるのを躊躇し、少なくとも一時的には中止するだろう。

このとき、政府がどうするかが問題である。政府の道は2つである。

1つは、危機をようやく認識し、国債発行を減らすことを決意し、遅まきながら財政再建に取り組む、という道である。しかし、これまでの政府の財政再建の取り組みからして、この道はとらない可能性が高い。

そうなると、もう1つの道しかなく、日銀に直接引き受けをさせるように、法律改正をすることになる。理論的に日本では財政破綻は起きないと主張している人々は、この手段があるから、自国通貨建ての国債を発行しているかぎり、財政破綻しないと言っているのである。

直接引き受けの話が出れば「日本は秒殺」される

残念ながら、この手段は現実には不可能である。なぜなら「中央銀行に国債を直接引き受けさせる」という法律を成立させれば、いや国会に提出されたら、いや、それを政府が自ら検討していると報じられた時点で、政府財政よりも先に、日本が破綻するからである。

「日銀、国債直接引き受けへ」という報道が出た瞬間、世界中のトレーダーが日本売りを仕掛け、世界中の投資家もそれに追随して投げ売りをする。

まず円が大暴落し、その結果円建ての国債も投げ売りされ、円建ての日本株も投げ売られる。混乱が収まったあとには、株だけは少し買い戻されるだろうが、当初は大暴落する。

つまり、為替主導の、円安・債券安・株安のトリプル安であり、生易しいトリプル安ではなく、1998年の金融危機ですら比較にならないぐらいの大暴落である。1997年から1998年の1年間で、1ドル=112円から147円まで暴落したが、「日銀直接引き受け報道」が出て、政府が放置すれば、そのときのドル円が110円程度であれば、1週間以内に150円を割る大暴落となり、状況によっては200円を突破する可能性もある。

ただし、これも現実には起きない。なぜなら、日銀国債直接引き受け報道が出れば、直ちに為替取引も債券取引も株式取引もまったく成り立たなくなり、金融市場は全面取引停止に追い込まれるからだ。

メディアも政治家も、やっと大騒ぎを始め、日銀の直接引き受け報道を政府は否定することになるからだ。しかし、否定しても、いったん火のついた疑念は燃え盛り、取引は再開できないか、再開すればさらなる暴落となる。

よって、これを収めるには、日銀直接引き受けなど絶対にありえないという、政府の強力で具体的な行動が必要となる。実質的で実効的かつ大規模な財政再建策とその強い意志を示さざるをえないだろう。こうなって初めて、暴落は止まる。

つまり、禁じ手といわれている日銀の直接引き受けは、タブーを犯せば理論的には可能だ。だが現実には、タブーを犯した政府と中央銀行は国際金融市場に打ちのめされるため、結局、禁じ手はやはり禁じ手のままとなる。(続く)」