増税の時期を先送りしただけなのに、増税反対派は何か納得できたのか?

つまり防衛費増額は増税を財源とすることが簡単に決まってしまった。

大山鳴動して鼠一匹か。こりゃだめだ、みんなガッカリ。

 

「与党の税制改正大綱は、16日午後、自民・公明両党の政務調査会長と税制調査会長らが会談して決定しました。大綱では、防衛力の抜本的な強化に必要な財源として、5年後の2027年度に1兆円余りを確保するとして、法人税、所得税、たばこ税の3つの税目で増税などの措置を複数年かけて実施するとしています。」(NHKニュース)

 

特に高市早苗氏にはがっかりだ。期待していただけに。

「防衛力増強のため、岸田首相が表明した増税方針に対して、ツイッターに「真意が理解できない」と投稿していた高市経済安保相は16日「納得する着地点を見い出した」と述べ、自民党内の決着を評価した。 

高市経済安保相「内容については、高く評価をしている。活発な議論がなされて、みんなが納得する着地点を見い出されたということだと思っている」 

自民党の税制調査会では、防衛費の財源として、法人税、たばこ税の増税と、所得税の“防衛目的税”を充て、時期は「2024年以降の適切な時期」とすることで決着した。 

高市経済安保相は、「来年もう一度議論できることは大変ありがたい」と述べた。」

 

岸田も理解不能だが、「みんなが納得する着地点を見い出された」なんぞと的外れなことを言う高市氏にも理解不能というしかない。何があったのか。

「納得する着地点」とは単に先送りになったことなのか。増税に反対していたんじゃなかったのか。

「罷免されるなら仕方ない」との発言に、皆久し振りに政治家としての覚悟を見たんじゃなかったのか。

肩透かしというか、期待外れというか、ヘタレというかこの程度の政治家だったのかというか、次の総理の芽を自分から摘んでしまった。情けない!

 

三橋貴明氏は期待して次のようにブログに書いていた。

「防衛費について、自民党内では基本的に「国債で」となりつつある(正しいですが)のですが、財務省はしつこく、「何としても、この機会に増税を」と、伝家の宝刀ならぬ「禁断」の「首相指示」に持ち込みました。

岸田文雄総理大臣は、2027年度以降は1兆円強の防衛費を増税で賄い、与党税制調査会で税目や施行時期を検討する方針を示しています。

意味不明です。
2027年度に増税するということは、それまでの防衛予算はいかにして賄うつもりなのでしょうか。
当たり前ですが、国債です。国債で、何の問題もありません。

そもそも、2022年度第二次補正予算の議論において、財務官僚が暴走し、自民党の政調に参加していた国会議員が「怒った」だけで予算が4兆円増えた国で、「防衛費を増額するならば、2027年度から1兆円増税」などとやっているわけです。

この状況、おかしいと思わない方がおかしいよ!
財務省としては、防衛費の増額は致し方ないとして、これを機に「とにかく何でも構わないから増税の実績を作る」に加え、「国民に、防衛費を増額するならば、増税を受け入れるしかない」というイメージを押し付けたいのでしょう。

何しろ、増税金額が「高々1兆円」ですから、実質的な話ではなく、イメージ優先のプロパガンダなのだと思います。

思い返すと、財務省を筆頭に緊縮財政派は、輸入物価上昇に起因するコストプッシュ型インフレを受け、

「物価が上昇した!はい、デフレ脱却! 緊縮財政!」
という世論を醸成するべく、プロパガンダを展開してきました(今もしています)。

そんなこと言ったら、2014年度に消費税が増税された際に消費者物価指数は(今以上に)上昇していますが、あれはデフレ脱却だったのでしょうか。
もちろん、違います。

輸入物価上昇、消費税増税による消費者物価上昇と、デフレーション(総需要不足)は両立するのです。というか、現在の日本でしています。経済指標に対する正しい知識なしでは、「物価が上昇した! はい、デフレ脱却! 緊縮財政!」といったプロパガンダに、すぐに騙される。
ならば、国民の方が正しい知識に基づき、情報武装するしかない。」

(引用終り)

 

藤井聡氏も次のように書いている。(2022年12月15日)

「From 藤井聡@京都大学大学院教授

みなさん、こんにちは、表現者クライテリオン編集長、京都大学の藤井聡です。

岸田内閣は今、「国民年金の受給年齢5年先延ばし」や「退職金課税増税」「インボイス制度の導入」等、驚くべきほど多くの項目にて増税を進めていますが、今、新たに「1兆円の防衛増税」(法人税&所得税)を公表するにいたっていますが、このスーパー増税ラッシュには、国民からのみならず、自民党内部で激しい批判の嵐が巻き起こりました。そして遂に、内閣の中の高市大臣からも、激しく批判される事態となっています。

この増税ラッシュがなぜ起こっているのか……を解説する記事を、『藤井聡・クライテリオン編集長日記』にて配信いたしましたので、下記にてご紹介差し上げます。

・・・

岸田増税ラッシュがなぜ起こったのかについては今、岸田内閣が、かつての民主党政権期と同様「学級崩壊」にあり、政府内の最大の権力組織たる財務省が「暴走」しているためだとしばしば言われています。
つまり、(永田町の)組織のリーダーたる岸田さんがあらゆる意味において弱腰であり、政府内の秩序が失われ、その結果、組織内の最大の権力組織である財務省が、岸田総理を無視してやりたい放題を始めた、という状況にあるわけです。

そして、その財務省の暴走は今や、「学級担任」である岸田総理を「無視」するだけでなく、「操る」状況にも至っている、というのが今回永田町から聞こえてきた話でした。

今やもう、岸田総理は、風前の灯火の状況になっており、メディア上には「岸田おろし」の文字が頻出する様になっています。

例えば……

『自民党内で「岸田下ろし」が始まる…その時、二階元幹事長が推す「次期総理」の名前』
『統一選前に「岸田降ろし」も 政権を左右する新法の動向』
……これだけの記事が、ここ最近、一気に出てくるようになりました。

霞ヶ関の官僚は、自分達の「ボス」がどうなるかについて、常に神経をとがらせていますから、こういう永田町での空気感の変化は瞬時に悟ることになります。

そしてその結果、財務省の中から「岸田内閣はもう長くないからその前に色んな増税させておこう」という認識がでてきたようなのです(某永田町関係者)。

財務省は常に「増税」を狙っていますが、それは当然、国民の反発が強く実現することは容易ではありません。しかし、今の岸田内閣はどうせ潰れるんだから、どれだけ増税やらせて人気が落ちても、構わないだろう、今こそチャンスだ!と、財務省が思っている、というわけです。

いわば財務省は今、岸田総理を増税のための使い捨ての道具として活用している、という次第です。

これほど現役の総理大臣を舐めきった話はない、というくらいの舐めた話です。

是非、岸田さんには、「フザケンな!」と怒って欲しいところですが、そういうことをしないからこそ、ここまで自分の部下組織にコケにされるんでしょうね……ホントに情けない話です。

いずれにしても財務省の暴走、ここに極まれり、というところですが、彼ら(財務省)にしてみれば(もちろん、国家破壊なんてやっちゃイカンのは当然ですが、それはさておくと)「合理的」な判断ですよね。だって、総理は何にもしないし怒らないし言わないだから、そりゃ、好き勝手に動いたとしてもしょうがない、とも言えるわけです。

ちなみにこの状況はやはり、民主党とそっくりです……。

何と言っても、民主党が潰れそうになったところで、消費増税の三党合意をしかけたわけですから。

……もちろん、この話は某筋からの証言で、必ずしも当方が直接取材して確認したものではありませんので、タイトルでも「~だそうです」という書き方にしているわけですが、財務省は今、確実にそう思っていると、当方も認識しています。

……だからこそ、今、岸田増税ラッシュを、どれだけ止められるかの正念場に、我が国はあるのです。

ここでまかり間違って、弱体化した岸田内閣に財務省の思いのままの増税を決められてし合えば、それを撤回することは極めて困難となり、事実上不可能になってしまうからです。

岸田内閣は一瞬で終わったとしても、彼らが決めた増税は、半永久的に続けられることになるのですから、それによって日本が奈落の底に沈んでいくことになってしまうわけです……。

ここはまさに日本国家の「正念場」

岸田氏は年内にも増税を決定するという「強い決意」を持っていると報道されていますが、ここまで激しい反発を受ければ、考え直す可能性はゼロではありません。

岸田さんに理性の片鱗が残されていることを祈念しつつ、与党内、閣内の増税反対の声を徹底支援差し上げたいと思います。」

(引用終り)

 

藤井氏が昨日「ここはまさに日本国家の「正念場」。」と書いた次の日はもう増税が決まってしまった。日本という国は増税という国民が嫌がることも簡単に決まってしまう「良い国」なんですね。

岸田氏の「検討使」も発揮されずじまいで、財務省の軍門に、高市以下自民党積極財政派議員らは下ってしまったようである。もう音無しのヘタレ積極財政派議員ら、「遺憾砲」ぐらい撃ってほしいものだが。みんなどこに隠れてるんだ!恥ずかしくて顔を見せられないってか。

 

まあ日本の真の権力者が財務省であることはここでも証明されてしまった。もう周知の事実なんだが、余りにあからさまにやられるともう脱力しかない。

 

さて、MMT学者ステファニー・ケルトン教授(NY州立大学)の「財政赤字の神話 MMT入門」(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)に、アメリカの防衛費について書かれていた(P64)ので紹介する。

 

「…例えば軍事費だ。2019年、上下両院は軍事費を増やす法律を通過させた。これによって2018年度に承認した金額を800億ドル上回る7160億ドルの支出が認められた。

この支出をどのようにまかなうかという議論は一切なかった。増加分の800億ドルをどこから調達するかなどと、誰も尋ねなかった。政府の追加支出をまかなうために、政治家は増税もしなければ、預金者から800億ドルを追加で借り入れることもしなかった。議会は持ってもいないお金を支出すると約束したのである。

それができるのは、米ドルに対して特別な権限があるからだ。議会が支出を承認すれば、国防総省などの政府機関にはボーイング、ロッキードマーティンなどの企業と契約を結ぶ許可が下りる。国家としてF35戦闘機を調達するために、財務省はお抱え銀行である連邦準備銀行に支払いを指示する。それを受けて連邦準備銀行は、ロッキードの銀行口座に必要な数字を追加する。議会は支出するために「必要な資金」を探してくる必要はない。必要なのは、有権者の票だ。票さえ集まれば支出を承認できる。後は単なる会計処理だ。政府が小切手を切ったら、連邦準備銀行は取引相手の口座に必要な準備預金と呼ばれるデジタルドルを追加し、決済する。

(中略)

政府が支出してもお金が「減る」ことはないし、税金として集めてもお金が「増える」わけではない。金融危機の後、納税者のお金が銀行救済に使われているという批判に対し、FRBのベン・バーナンキ議長が「銀行の口座は連邦準備銀行にある。コンピュータを使ってその残高を増やしただけだ」と反論したのはこのためだ。納税者がウォール街を救ったのではない。…」

(引用終り)

 

米国はウクライナ戦争ではデタラメをやり放題のアホの集まりだが、財務省に関しては、日本の財務省より余程まともでよく勉強して政策の舵をとっているようだ。MMT理論を実地に使っているから、防衛費の財源など問題にしていないのである。ここでは国債のことが出てこないが、米国債が使われて信用創造されているのである。

 

日本でもMMT理論の理解が深まれば、財源問題など吹っ飛ぶのだが、そうなると財務省の存在理由が無くなるので、MMT理論など絶対に認めないのである。その結果は30年の不況、先進国で唯一日本のみが成長できないということで、それは貨幣観の転回(商品貨幣論から信用貨幣へ)がない限り日本は未来永劫沈み続けるのである。