長野市が住民から子供騒音問題の指摘を受けて公園閉鎖をすることに決めたが、これをクレーマーの仕業(しわざ)として騒音に長い間悩まされた老夫婦を日本社会が総バッシング、吊し上げの全国ヒステリー状態に陥っているようだが、こんなことが許されていいのだろうか。

 

私も20年ほど前に名古屋市で公園の前の分譲住宅を購入し、景色が広がってスッキリしていいところに家を買って喜んだのだが、やはり長野市の公園のように毎日小学生が大挙して遊びにきて騒々しく、石を投げて遊んだり、ボール遊びをしたりでうるさいことこの上なかった。

といっても、私は昼間は仕事で家にいないから、専業主婦である妻が最大の被害者となった。

色々悩みのあった時期なので、妻にとっては騒音にいたたまれず、ノイローゼ状態。引っ越しを何年にも渡ってせがまれたが、私は子供の騒音を土日程度しか知らないので、妻からはこの騒音に理解がない、悩みをまともに受け取ってくれないと毎日恨まれていた。

結局13年そこに住んでついに引っ越しを決意して転居したのだが、知人からは公園の前の住宅なんて買うもんではないと言われた。

まあ、公園の子供の騒音に悩まされている人は意外に多いはずだ。

だから、長野市の公園前に住む老夫婦の子供の騒音への悩みは他人事ではないと思うのである。

それなのに、ニュースの扱いは、モンスタークレーマー(老夫婦)に屈した自治体のやる気のなさ、といったいつもの正邪を最初から決めてかかって報道するマスコミの安易さだ。

 

住民「子どもの声がうるさい」 1軒の“苦情”きっかけに公園廃止へ …繰り返される騒音問題に長野市職員も同調

2022年12月9日 

ABEMA TIMES

 「子どもの声がうるさい」……一軒の住民からの苦情がきっかけで、市は公園を廃止することを決定した。

「青木島遊園地の入口には、『令和5年3月31日をもって廃止いたします。原状復旧工事を行いますので、12月頃から閉鎖します』と書かれている」(中野リポーター)

 長野市にある青木島遊園地。周りには小学校や保育園、児童センターがあり、子どもの遊び場には最適な公園に思える。一体、なぜ廃止されることになったのか。

「多数の利用者がいることによって、大きな音や声が発生する状況になっていた」(長野市公園緑地課・平沢智課長)

 公園は、2004年に地元からの要望で作られた。放課後には児童センターで過ごす子どもたちが集まり、周辺は迎えに来る親たちの車で混みあうこともあったという。市は対策として、公園の出入り口の位置を変えたほか、児童センターに対しても子どもたちに大人数で遊ぶことを避けるよう指導してきた。

 しかし、問題は解決せず。平沢課長は「それ(騒音)を毎日のように繰り返し聞いていると、色々と意見もあったのかなと。そちらの意見も我々はわかる」と住民からの苦情に同調。何人から意見があったのかを聞くと、「直接意見をもらったのは1軒」と答えた。

 児童センターでは、去年3月からは公園の中で遊ばせること自体を自粛していた。

 青木島児童センターの館長は「苦情を言った住民も、『公園を使ってはいけない』と言っていない。静かに遊ぶのであれば問題ないと言っているが、それは無理だという話になった。ここは使わない方が良いだろうという判断になってしまったのが現状だ」と明かす。

 近隣の住民からは「遊ぶところが減るから切ないと思ったが、『ずっと静かにしていなさい』というのは子どもには酷」「送り迎えの車に関しては、ここに住んでいる人は大変」などの声が上がっている。

 市は、この遊園地は「借地」で、「管理費は税金で賄われている。使われていないものに対して税金を使い続けることはできない」と説明。「周辺にある別の公園を利用してほしい」と話している。

(引用終り)

 

最近は盆踊りの音楽がうるさいとか、除夜の鐘の音がうるさいとかで催しを中止や廃止することが多くなったと聞く。大体は近所の一部のうるさ型住民の声を聞きすぎての措置だと思うが、そんな苦情程度で止めてしまうことにやり過ぎと思っている人々も多いだろう。

 

だから、今回の騒音クレームによる公園閉鎖もそういう類のものだったが、このニュース報道は炎上させる要素が少なからず存在した。

 

まず問題なのは、長野市公園緑地課の課長発言だ。

これは明らかにバッシングさせようという意図的発言になっている。つまり、少し課長の気持ちを忖度して敷衍すると、

「騒音クレームはたった一人なんです、多くの人が困っているのではない、たった一人がずっとクレームを付けてきたので、市としてはやむを得ず公園閉鎖することにしたんです。公園閉鎖はこの一人のクレームが問題なんです。」

要するに、公園閉鎖の「犯人」は、「こいつだ」と全国のテレビの前で発表した訳である。

 

もう一つは、子供の騒音へのクレームだ。子供は遊んで大きくなる。遊んでいれば声も大きくなるのは当たり前。それが子供じゃないのか。子供の大声を騒音と決めつけるなんて、とんでもない奴だ。

それは「子供絶対善」という正論を背景にした報道だ。

子供のわめき声をうるさい、不愉快と感じている人々は大勢いる。特にレストランとか医院とかスーパーとか公共の場で騒ぐ子供。そしてそれを全くたしなめないバカ親。子供は時と場合によっては天使などではない、ということは誰もが知っている。しかし、公では子供は天使、無邪気として扱われるので、批判など許されないのである。

少子化の日本、子供は神聖にして侵すべからずの存在になった!

 

クレーマーは悪い奴と世間では決まっているから、天使、無邪気の子供の遊び場を取り上げるなんて、ふざけた野郎だと、ニュースを見た全国の視聴者は誘導されたのである。

 

こんな報道に対して、もっと悪質な報道が続く。中日新聞だ。

苦情は「脅迫、業務妨害」と顧問弁護士見解も… 長野市、市長に伝えず

中日新聞Web 12/10

 近隣の男性住民一人の苦情をきっかけに、長野市が「青木島遊園地」(同市青木島町大塚)を来年三月末で閉鎖すると決めたことを巡り、市の顧問弁護士が市側に対し「男性の行為は(市への)脅迫罪、業務妨害罪にあたる」と説明していたことが、分かった。

だが、市側は存続に有利に働く可能性がある顧問弁護士の見解を、荻原健司市長や地元区長会に伝えていなかった。(吉田拓海)

「青木島遊園地」巡り 担当者「意図的ではない」

 九日にあった市議会定例会の一般質問で、小泉一真市議が、市への情報公開請求で入手した資料に基づき市側のこれまでの対応を問うた。北沢善幸都市整備部長は「この内容は(市長や地元区長会には)伝えていない」と認めた。

 市公園緑地課によると、昨年十月、住民から「男性の言っていることに従わず利用した場合、違法性はあるのか」と問い合わせがあった。市は翌十一月に顧問弁護士へ相談。十二月に住民へ「堂々と遊んでいい」と回答した。荻原市長には今年八月、閉鎖の決定に至る経緯をまとめた文章を提出した。

 同課の担当者は「法律上は、男性に受忍義務があるという内容は(市長や地元住民に)伝えた。脅迫罪や業務妨害罪について説明しなかったのは、意図的ではない」と説明した。

 一般質問では他に、市が男性の要望を受けて、入り口や遊具を男性宅から遠ざける工事に百万円近くを支出したことも分かった。市は当初、安全面から入り口をカーブに面した場所へ移設することに難色を示していた経緯があり、小泉市議は「子どもの安全より要望を優先した」と批判した。

(引用終り)

 

この老夫婦は中日新聞によれば、「犯罪者」扱いになっている。「男性の行為は(市への)脅迫罪、業務妨害罪にあたる」と。

この老夫婦は新聞が報ずるような頑固で意固地なクレーマーなのかもしれない。しかし、そうではないかもしれない。私の経験からしては、公園の子供の騒音はかなりやかましいが、受け取る人によってその感じる大きさは異なる。感受性が高い、音に敏感な人ならかなり神経を痛めてしまう可能性もある。

 

そのへんはわからないが、とにかくニュースはこの老夫婦を「とんでもないクレーマー」「脅迫罪や業務妨害罪に当たる犯罪者」と決めつけている。全く穏当さを欠いた感情的な報道姿勢と言えないだろうか。

 

こんな報道を全国的にされれば、いつものようにおバカな第三者は義憤にかられて、この老夫婦に嫌がらせをするに違いない。なにせ、場所も特定されてしまったのだから。

不測の事態が起きた時、中日新聞なりなんなりのマスコミは責任を取れるのだろうか。

 

この騒動に対し、スキーで活躍した荻原健司長野市長は健全な対応をしているように思える。

 

1軒の家の苦情きっかけに公園閉鎖 長野市長「苦しい判断」

2022年12月9日

長野市が1軒の家からの苦情をきっかけに公園の閉鎖を決めたことについて、荻原健司市長は9日の市議会で「子育て支援に力を入れる一方、住民の声に耳を傾けるのが行政の役割だ。非常に苦しい判断だった」と述べ、閉鎖する方針に変わりはないという考えを示しました。

長野市の公園「青木島遊園地」は18年前、市が地区からの要望を受けて民有地を借り上げる形で整備しましたが、1軒の家から「子どもの声がうるさい」などと訴えが続いていました。
その後、公園の利用者は減り、地元からも廃止の要望書が出たことから、市は今月末で閉鎖することを決めました。
9日の市議会の一般質問で、議員から公園の存続を求める意見が出たのに対して、荻原市長は「18年間という長い期間は、多くの住民の子どもの居場所を確保したいという思いの表れだ。地域の話し合いの結果、廃止の要望が出され、非常に苦しい判断だったがこのまま手続きを進める。子育て支援に力を入れる一方、住民の声に耳を傾けるのが行政の役割だ」と述べ、閉鎖する方針に変わりはないという考えを示しました。
市によりますと、子どもたちは代わりの遊び場所として、近くの小学校の校庭や別の公園を利用できる状態だということです。
また、荻原市長は「SNSなどで個人を攻撃するような書き込みが見受けられ大変危惧している。そういったことがないよう皆さんにお願いしたい」と呼びかけました。

都市計画の専門家「公園整備後も継続的に合意形成を」

長野市が公園を閉鎖することについて、都市計画などが専門で子どもの遊び場に詳しい関東学院大学の中津秀之准教授は「公園の利用者の声に、働いているときには在宅時間が少なく気付かなくても、引退して自宅にいるようになってから、騒音と感じるケースも多い。こうした訴えに耳を傾けて継続的に合意形成を図ることが重要だ」と述べ、公園を整備する時だけでなく、整備後も住民たちの立場や考えの変化に応じて、合意を得ることの必要性を指摘しています。
そのうえで、合意が得やすくなるポイントとして「地域にふだんからいろいろな会話ができる人間関係があれば、子どもの声もあまりストレスや怒りにつながらないのではないか。また、行政にも、住民の意見を受け止めながら、調整する仲介役としての役割を果たすことが求められる」と話していました。

(引用終り)

 

マスコミはもっと老夫婦の騒音に対する悩みを理解するよう努めるべきだった。そして類似の悩みも調査すべきであった。それをきちんとやっておけば、老夫婦の言っていることが単なる我がままなのか、本当に大変な悩みだったのかがわかり、安易に善悪のレッテルを張り付けることにはならなかったのだと思うのだ。

 

人はウクライナ戦争なんぞの大きなことから今回の身近なことまで、報道を信頼してすぐに誘導されてしまうのである。ウクライナ戦争のような問題は逆に色々と情報を集めることが可能だから、よく見る人なら、テレビの大嘘には簡単にだまされない。しかし、逆に身近なほうが情報が少ないだけに安易な判断をしてしまいがちなのである。

 

何かを判断する時は、少し引いてものをみる癖を付けておいた方がいいのではと思うのである。

私は昔から「北向き」と言われているから、いつも斜めからものを見ようとしている。それがいいことかどうかわからないけど。

過去記事で、斜めからみた記事を紹介するので、閑な方は見てください。

 

顎マスク男「弁当温めろ」と頼んだが拒否されて激昂。小銭投げつける。悪いのは顎マスク男なの?2021年6月2日

 

錦糸町駅前の迷惑カラスを甘やかす輩たち、これは何かドイツの現在を思い起こさせる。2018年5月9日

 

神奈川県警警部1267円万引きで逮捕。悪い警官だが月5万円の小遣いと聞いて身につまされる思いも2018年10月7日

 

素手のほうが余程清潔なのではないかと素朴に思うんだが…。2017年1月27日(金)