ウクライナ戦争について、テレビも書籍も(新聞は購読していないので知らない)嘘ばかり垂れ流しているのはもう周知のことである。

今日のニュースでは、ロシア内の反体制派がロシア軍のこれまでの死傷者は9万人以上となったなどとこれまた大げさな嘘を流していた。それはウクライナ軍のことだろう。

市民虐殺もテロも拷問もウクライナ軍がやったことなのに全てがロシア軍のせいにしているが、今回は軍の死傷者まで正反対の数字を並べてロシア軍が負けていると騒いでいるのだ。

 

先般のブログでもウクライナ戦争に関する書籍でまともなものはほとんどないと書いたが、8カ月経って情勢が全く変化して少しは真実が分かってきても、嘘本しか世に出てこないというのも異常な出版界といえる。

 

つまり、表向きの情報だけではウクライナ戦争の意味だけでなく、日々起きている戦闘の変化も真実は全く掴めないのである。今はウクライナ軍がハリコフその他で攻勢に出て、ロシア軍が敗走しているというのがメインで流れる戦闘情報だろう。

 

しかし、私も何回か海外ニュースを紹介しているようにそれは事実ではない。ただ、その海外ニュースではわかりづらいことが沢山あることも事実だ。

そんな中で、このウクライナ戦争を軍事的な分析でしっかりと行っているのは、元陸上自衛隊西部方面総監で陸将だった用田和仁氏の解説である。

(元陸上自衛隊小平学校副校長で陸将補の矢野義昭氏の分析も良いという人もあるが、私はよくわからない)

用田元陸将は、5月の初めにチャンネル桜のYouTubeでウクライナ戦争分析をしているのを見て、なるほどなと思わせてくれた人で、コメントにも賛同する人が多く人気の分析者となっている。

 

最新の用田元陸将の分析は一昨日のチャンネル桜のYouTubeで公開されていた。さすが、とかなるほどと思わせてくれる分析だった。

 

【真相はこうだ!】用田和仁~緊急特番:ウクライナは勝利するのか/ロシアの戦略的逆襲とは?[R4/10/12] 

 

用田元陸将の素晴らしいのは、軍事オタク的では全くなく、伊藤貫氏やミアシャイマー教授、エマニュエル・トッド氏などの考えも踏まえながらウクライナ戦争を捉え、アメリカ・ネオコン等の責任を追及しながら、ウクライナにおける戦闘状況の推移、ロシア軍の戦術等を分析していることである。

もちろんだが、それらは毎日流れるニュースとは正反対のものであり、ロシア軍が負けているようにみえていても(負け惜しみなどではなく)それは戦略かつ戦術的なのだと。

用田元陸将の話をぜひお勧めしたい。

 

また過去の3回のウクライナ戦争分析のYouTubeも下記に記しておく。

「桜国防戦略会議「ウクライナ 本当の軍事情勢」[桜R4/4/6]」

 

「桜国防戦略会議「ウクライナ侵攻と日本の未来」[桜R4/5/9]」

 

 

「桜国防戦略会議:ウクライナ最新情勢-中露連携は進むのか?[桜R4/7/5]」

 

その中で前回(7月5日の「ウクライナ最新情勢-中露連携は進むのか?」)の議論の中で面白いやり取りがあった。

 

前回は、用田元陸将ら元自衛隊陸将・陸将補が4人も出席していたのだが、その中で渡部悦和元陸将が持田氏に噛みついたのである。(渡部(昭和30年生)は持田氏(昭和27年生)の3年後輩)

防衛省や陸上幕僚幹部は用田・矢野先輩の意見には皆反対している。二人がこういう発言をするから現役の防衛省の人達は大変迷惑をしている。ウクライナ戦争はプーチンの愚かな行為だ。アメリカに唆されてやったわけではない。」

 

渡部悦和元陸将は本も何冊か書いており、YouTubeやテレビの解説者としても出ているらしい。よく知らないが。渡部元陸将はハーバード大学アジアセンター・シニアフェローもしていたようだから、アメリカのエスタブリッシュメントの仲間でネオコンとも思想的に親しいのかもしれない。

(渡部悦和、井上武、佐々木孝博「ロシア・ウクライナ戦争と日本の防衛」ワニブックスなど)

 

ここで渡部が持田氏に噛みついたことでわかることは、まず日本の防衛省がアメリカベッタリでアメリカの情報分析をそのまま受け入れているということである。

アメリカはネオコンが所長の戦争研究所が主にウクライナ情報を出しているから、ニュースと同じ程度のレベルでプロパガンダに防衛省はそのまま嵌(はま)ってしまっているということを示している。だから、よく見る防衛研究所・防衛政策研究室長の高橋杉雄氏などのいい加減な分析は、そのまま日本の防衛省の分析レベルを表しているといえる。

 

そして、現役防衛省幹部が用田元陸将の分析にクレームを付けているらしいのだ。「現役の防衛省の人達は大変迷惑をしている」と。この迷惑とは、恐らくアメリカからの文句のことだろう。

アメリカは「お前のところのOBである用田元陸将がウクライナ戦争に関して余計な事を言いふらしている。何とかならんのか。」とか何とか言っているのではと想像する。つまり、ウクライナの真実が少しでも日本に広まるのは困るからである。

 

しかし、この状況は旧日本軍の陸軍省や参謀本部を彷彿とさせるではないか。

つまり、三国軍事同盟を結んだドイツの言いなりで正しい分析をゆるさないという雰囲気。陸軍の英米派は隅に追いやられてしまって、客観的な分析が出来なくなった状況と。

 

ウクライナ侵攻後8カ月経っての用田元陸将の分析を確認してほしいが、侵攻直後の渡部元陸将のウクライナ戦争評価を見てみると面白い。

あるインタビュー記事から。

 

2022.3.16

「…渡部氏は「通常、戦争では『攻撃側5、防御側1』の割合とされ、ロシア軍がウクライナ軍に勝つには5倍の地上兵力が必要になる。ウクライナは正規軍以外に準軍事組織を持つため、ロシア軍の地上兵力の現状では不足している。市街戦になれば、ウクライナの民間人も武器を持つので、ロシア軍にとっては脅威になる」とみる。

なぜ、ロシアは大誤算をしたのか。

英紙タイムズは7日、侵攻は「完全に失敗」と指摘したロシア連邦保安庁(FSB)の内部文書の存在を報じている。プーチン氏が最近、対外諜報部門トップを自宅軟禁したとの報道もある。

渡部氏は「独裁政権の情報機関では、分析官はトップが喜ぶような情報しか報告しない。正確でも厳しい情報を上げれば怒られ、作戦が失敗すれば処罰されかねない。経済制裁が効いているなかで、欧米諸国は今後、ロシアの反政府運動を拡大させる作戦を考えるだろう。プーチン政権の終わりが近いのではないか」と語っている。」

(引用終り)

 

今となっては嘘ばかり、間違いばかりということがよく分かる。

・「ロシア軍がウクライナ軍に勝つには5倍の地上兵力が必要になる。」

 ⇒少ないロシア軍が勝っている。ウクライナ正規軍は壊滅したと言われている。

 

・「市街戦になれば、ウクライナの民間人も武器を持つので、ロシア軍にとっては脅威になる」

 ⇒前半はそのとおり。だからロシア軍は市街戦をしようとはしなかった。しかしそれは「ウクライナの民間人も武器を持つ」からではない。そうではなく、ウクライナ軍は国際法違反の人間の盾つまりウクライナ市民を盾に使って戦闘をしようとするからである。ロシア軍の砲弾の「盾」として、自分たちを守るために市民を使うという卑劣なことをウクライナ軍はしたのでロシアはそのために市街戦を避けたのである。ウクライナ軍の人間の盾という非道な戦術をアムネステイが非難して報告書を出している。これはロシアのプロパガンダではない。ウクライナつまりゼレンスキーはウクライナ国民の命を守ろうとは全くしていないのだ。こんな大統領のために命を捨てるウクライナ兵士は可哀そうと言うしかない。

 

・「侵攻は「完全に失敗」と指摘したロシア連邦保安庁(FSB)の内部文書の存在を報じている。」

 ⇒嘘つけ。「侵攻は「完全に失敗」」なんぞしていない。FSBがそんなバカげた文書を作る訳がない。それでもプロパガンダを信ずる者がいる(防衛省ですら)から嘘でもアメリカは言い放つのである。

 

・「独裁政権の情報機関では、分析官はトップが喜ぶような情報しか報告しない。」

 ⇒それはアメリカやウクライナのことだろう。ロシアでそんなことをしていたら負けてしまうが、負けていないではないか。

 

・「経済制裁が効いているなかで、欧米諸国は今後、ロシアの反政府運動を拡大させる作戦を考えるだろう。」

 ⇒残念ながら「経済制裁が効いている」のは、ロシアに対してではなく、EUや西側諸国に対してだった。だから、「反政府運動を拡大」したのは、西側諸国だった。その失敗のために、やっきとなって西側諸国は「ロシアの反政府運動を拡大させる作戦を」仕掛けているのである。テレビは騒いでいるが、成功していないが。

 

・「プーチン政権の終わりが近いのではないか」

 ⇒プーチンの支持率は依然80%を維持している。「プーチン政権の終わりが近い」のではなく、「バイデン政権の終わり及びEU政権の終りが近いのではないか」が実態であろう。

 

以上のように渡部元陸将のロシアに関する分析はことごとく間違っているのである。なぜなら、アメリカの分析つまり嘘の分析を信じ込んでいるからだ。つまり、プロパガンダを素人大衆と同じように軍事専門家が信じ込んでしまうから間違った判断しかできないのである。

 

防衛省の幹部も心を入れ替えて、チャンネル桜のYouTubeで用田元陸将の分析を何度も見るがよい。

 

(追伸)2023.8.10

用田元陸将によるウクライナ戦争の継続的な分析について、とても参考になるので、今回紹介した以降の動画等についてもこのブログで今後整理して紹介したいと思います。

今準備中なのでしばらくお待ちください。