今日のテレビニュース、ウクライナプロパガンダ。米国防省カービー報道官の記者会見の臭い演技より。

 

「プーチン大統領がウクライナでやっていることは、思慮深く分別ある指導者ならあのようなことをするとは思えない。被害者の映像を直視できない…(言葉を詰まらせる)。軍事侵攻はロシアを守るため、とのプーチン大統領に、「ふざけた言い分だ」と厳しく非難した。」

 

この国防省カービー報道官の言葉は、全てアメリカに「ふざけた言い分だ」と返してやりたい。

恐らく、この嘘つきカービー報道官は、記者会見が終わって控室に戻り、同僚に「どうだった、俺の言葉を詰まらせた演技、真に迫っていただろう?」と笑いながら言ったに違いない。

もうあまりの嘘プロパガンダは世界の心ある人々にはバレバレなのである。

 

といっても、未だアメリカのウクライナ戦争プロパガンダは健在なのだ。ウクライナ戦争の真の理由が日本でキチンと分析・解説されたものは少ない。先日紹介した保守系月刊誌(月刊WILLや月刊Hanada)があの体たらくなのだから。

 

しかし、このブログでも幾つか紹介したように海外発信された論考は優れたものが多く、正しくウクライナ戦争の原因を突いている。

そんな中、ブログ「阿幾左与庵」Akiさんから、とても分かりやすく優れた分析の論考を紹介していただいた。

ジャック・ボー「ウクライナにおける軍事情勢」(2022.4.25)

である。

(表題が少し大人しすぎる。「ウクライナ戦争の正体)又は「ウクライナ戦争の真実」がいいかも)

 

ジャック・ボー氏は、67歳のスイス陸軍の元大佐、戦略アナリスト、諜報とテロリズムの専門家で、NATOの勤務経験がある方だ。だから現場を知って中立的な分析が可能な信頼できる評者だといえる。

 

この論考はウクライナ侵攻せざるを得なかったロシアの事情、特に2014年以降のウクライナドンバス内戦やゼレンスキー内閣やNATOの動きから説く。

ボー氏の分析はその経歴からロシア寄りではなく非常に客観的であると捉えてよいだろう。
ロシアに理解を示したからといってそれはロシアのプロバガンダではないのだ。

 

長めの論考は三部に分かれており、第1部: 戦争への道、第2部:戦争、第3部 結論という構成である。

まず、ウクライナ紛争の根源から説き始める。そしてウクライナ軍の実態からウクライナ軍がなぜナチ化していったか。そのナチ化への米英の関わり。第2部では戦争の勃発として、ほとんど知られていないウクライナ政府の動きが暴きだされている。つまり、ロシア軍のウクライナ侵攻以前にもうウクライナ側はドンバス地方を攻めようとちょっかいを出していたのだ。アメリカのプロパガンダを信ずる者は見たくない不都合な真実だろうが。

 

ここでプーチンは岐路に立たされる。軍事介入すれば経済制裁や熱い戦争になりうるし、介入しなければドンバス地方の住民を見捨てることになる。そこで決断がなされたのだった。

そのため、プーチンは作戦を2つの目的に限定した。ウクライナの「非軍事化」と「非ナチ化」だ。つまり、ウクライナを征服するのではなく、おそらくは占領するのでもなく、破壊するのでもない。これがロシア軍の戦い方だった。(しかし、このことがアメリカ・ウクライナ側のプロパガンダにいいように利用されてしまうのだ)

 

一方ゼレンスキー・ウクライナの戦い方について、ボー氏は鋭い指摘をして批判する。

「軍の指揮系統とは、軍隊の本質であり、武力の行使を目的に向けて方向付ける機能である。現在のように無計画に市民を武装させることで、市民を戦闘員にしてしまい、結果的に市民を潜在的な標的にしてしまうことになるのだ。さらに、指揮もなく、作戦目標もなく、武器を配ることは、必然的に決闘や盗賊行為、効果的というより致命的な行動につながる。戦争は感情の問題になる。武力は暴力となる。

EUは、ベルリンの戦いの最後の時間における第三帝国の悲惨な経験を繰り返そうとしている。

戦争は軍に委ねられ、一方が負けたときには、それを認めなければならない。そして、もし抵抗があるならば、それは指導され、組織されたものでなければならない。しかし、私たちは正反対のことをしている。私たちは市民に戦場に行くよう促し、同時にFacebookでは、ロシアの兵士や指導者の殺害を呼びかけることを許可しているのだ。」

 

日本の保守の一部は熱狂して、ウクライナの義勇軍化と徹底抗戦を愛国的と称賛するが、軍事専門家ボー氏に言わせればとんでもないことなのである。

「戦争は軍に委ねられ」ねばならず、そうでなく「市民を戦闘員にしてしまい、結果的に市民を潜在的な標的にしてしまうことにな」り、「指揮もなく、作戦目標もなく、武器を配ることは、必然的に決闘や盗賊行為、効果的というより致命的な行動につながる。戦争は感情の問題になる。武力は暴力となる。」という混沌とした悲惨な状況が現出してしまうとの指摘だ。

 

こう言えば、恐らく有本らの興奮した右翼は、「侵略を許せと言うのか、抵抗してはいけないというのか」と吼えるだろう。しかし、ウクライナ戦争の経緯をキチンとみれば必ずしもその愛国心は正しいとはいえないことがわかるだろう。

 

結論部分では、「欧米の政治家の中には、明らかに紛争が起こることを望んでいる者がいる」とボー氏はいい、戦争は政治の延長であるというものの、余りの政治優位つまり戦争を泥沼化したい米英のためにそして当亊者ゼレンスキーがロボットのため、停戦に持ち込めない状況に陥っている。

 

ボー氏は「プーチンの非難は、私たちへの非難でもある」と言う。

「…明らかに、この紛争は私たちをヒステリーに導いている。もし、我々が交渉し、承認したミンスク合意をウクライナに遵守させるよう主張していれば、このようなことは起こらなかっただろう。

プーチンの非難は、私たちへの非難でもある。もっと早くから行動すべきだったのだ。」と。
 

この戦争を世界の人々は終わらせたくても、終わらせたくないアメリカとEUとウクライナがいる。戦争を泥沼化させたい勢力!ヘタをすれば第三次世界大戦!もう少しは突入しているのだが。

 

アメリカのプロパガンダに賛意を示す人々もまたこのウクライナ戦争を長引かせることに貢献しているのだ。

本当の気持ちは、早く戦争を終わらせたいはずなのに、ロシアが悪というプロパガンダを鵜呑みにして、戦争長期化に心ならずも加担しているのだ。

そして罪なきウクライナ人を結果的に死に追いやっている。死神ゼレンスキーと同じように。

 

そこから抜け出すには、正しい認識が必要だ。このジャック・ボー氏の論考はそのための一助になるはずだ。

ロシア寄りの論考なんて信用できん、と言わずに、まずはじっくり読んでから、それからテレビの毎日のプロパガンダを聞いてみよう。見方が変わっているに違いないのだ。ナザレンコ・アンドリーの嘘はたちどころにわかること請け合いなのだ。

 

前置きが長くなってすみません。ではどうぞ。

 

ウクライナにおける軍事情勢

ジャック・ボー

グローバルリサーチ社、2022年4月25日

第1部: 戦争への道

マリからアフガニスタンまで、私は長年にわたって平和のために働き、そのために命をかけてきた。だから、戦争を正当化するのではなく、何が私たちを戦争へと導いたのかを理解することが大切なのである。
ウクライナ紛争の根源を検証してみよう。それは、この8年間、ドンバスの「分離主義者」や「独立主義者」について話してきた人たちから始まる。

これは誤った呼び方だ。2014年5月にドネツクとルガンスクの二つの自称共和国が行った住民投票は、一部の不謹慎なジャーナリストが主張しているように、「独立」の住民投票ではなく、「自決」または「自治」の住民投票であった。

「親ロシア」という修飾語は、ロシアが紛争の当事者であることを示唆しているが、実際はそうではなく、「ロシア語話者」とした方がより誠実であっただろう。しかも、これらの国民投票は、ウラジーミル・プーチンの助言に反して行われたものである。
というのも、アメリカが支援してヤヌコビッチ大統領を打倒した新政府の最初の立法措置は、2014年2月23日、ウクライナの公用語をロシア語とする2012年のキバロフ・コレスニチェンコ法を廃止することだったからだ。ドイツのプーチシストが、スイスでフランス語とイタリア語を公用語にしないと決めたようなものである。

この決定は、ロシア語圏の人々の間に嵐を巻き起こした。その結果、2014年2月から行われたロシア語圏(オデッサ、ドニエプロペトロフスク、ハリコフ、ルガンスク、ドネツク)に対する激しい弾圧が行われ、事態は軍事化し、ロシア人住民の恐ろしい虐殺(オデッサとマリウポルが最も顕著)も行われることになった。
 

この段階で、ウクライナの参謀本部はあまりにも硬直的で、教条的な作戦アプローチに没頭し、敵(親ロシア)を制圧したが、実際に勝利することはできなかった。自治政府の戦争は、軽便な手段で行われる高度な機動作戦で構成されていた。より柔軟で教条的でないアプローチで、反政府勢力はウクライナ軍の惰性を利用し、繰り返し「罠にかける」ことができた。


2014年、私はNATOにいたとき、小型武器の拡散に対する戦いを担当し、モスクワが関与しているかどうか、反政府勢力へのロシアの武器搬入を探知しようとしていた。そのとき私たちが得た情報は、ほぼすべてポーランドの情報機関からで、OSCE(欧州安全保障協力機構)から得た情報とは「一致」していなかった。
反乱軍が武装したのは、ロシア語を話すウクライナ人部隊が反乱軍側に亡命したおかげである。ウクライナの失敗が続くと、戦車、大砲、対空砲の大隊が自治政府の隊列を膨らませた。これが、ウクライナ側をミンスク合意にコミットするように仕向けた。

 

しかし、ミンスク合意への署名直後に、ウクライナのペトロ・ポロシェンコ大統領はドンバスに対して大規模な「反テロ作戦」(ATO)を開始した。NATOの将校の助言が不十分だったため、ウクライナ軍はデバルツェボで大敗し、ミンスク2協定に従わざるを得なくなった。
ここで思い出していただきたいのは、ミンスク1(2014年9月)とミンスク2(2015年2月)合意は、共和国の分離・独立を定めたものではなく、ウクライナの枠内での自治を定めたものであるということだ。協定を読んだことのある人(実際に読んだ人は非常に少ない)は、共和国の地位は、ウクライナ国内の解決のために、キエフと共和国の代表との間で交渉することと書かれていることに気づくだろう。
だからこそ、2014年以降、ロシアは組織的にミンスク合意の履行を要求しながら、ウクライナの内部問題だからと交渉の当事者となることを拒否してきたのである。

他方、フランスを中心とする西側諸国は、ミンスク合意をロシア人とウクライナ人が対面する「ノルマンディー形式」に組織的に置き換えようとした。

 

しかし、2022年2月23日~24日以前、ドンバスにロシア軍が駐留していたことはなかったことを忘れてはならない。さらに、OSCEのオブザーバーは、それ以前にドンバスで活動するロシア部隊の痕跡を微塵も観察していない。例えば、2021年12月3日にワシントン・ポスト紙が発表した米国の情報地図には、ドンバスにロシア軍が駐留している姿は描かれていない。
2015年10月、ウクライナ保安庁(SBU)のヴァシル・フリツァク局長は、ドンバスで観測されたロシアの戦闘員はわずか56人だったと告白している。これはまさに、1990年代、週末にボスニアに戦いに行ったスイス人や、現在のウクライナに戦いに行くフランス人に匹敵するものだった。


当時のウクライナ軍は悲惨な状態だった。4年間の戦争が終わった2018年10月、ウクライナ軍の主任検察官アナトリー・マティオスは、ウクライナはドンバスで、病気891人、交通事故318人、その他の事故177人、中毒(アルコール、麻薬)175人、武器取り扱い不注意172人、保安規定違反101人、殺人228人、自殺615人と、2700人を失ったと述べている。
実際、ウクライナ軍は幹部の腐敗によって弱体化し、もはや住民の支持を得られなかった。英国内務省の報告によると、2014年3月・4月の予備役召集では、第1回に70%、第2回に80%、第3回に90%、第4回に95%が姿を見せなかったという。2017年10月・11月の「2017年秋」リコールキャンペーンでは、70%の徴兵が来なかった。これは、ATO地域の労働力の30%にまで達した自殺と脱走(多くは自治派に渡る)を数えていない。若いウクライナ人はドンバスに行き戦うことを拒否し、移住を好んだが、これも少なくとも部分的には、この国の人口不足を説明するものである。

 

ウクライナ国防省は、自国の軍隊をより「魅力的」なものにするために、NATOに目をつけたのである。すでに国連の枠組みで同様のプロジェクトに携わっていた私は、NATOからウクライナ軍のイメージ回復のためのプログラムへの参加を依頼された。しかし、これは長期にわたるプロセスであり、ウクライナ側は迅速に行動することを望んでいた。
 

そこで、兵士の不足を補うために、ウクライナ政府は準軍事的な民兵に頼ったのである

ロイター通信によると、2020年、彼らはウクライナ軍の約40%を占め、約10万2,000人の兵士を擁していた。彼らは、米国、英国、カナダ、フランスによって武装し、資金を提供し、訓練を受けていた。国籍は19カ国以上。
これらの民兵は2014年以降、欧米の支援を受けながらドンバスで活動していた。「ナチス」という言葉について議論することができたとしても、これらの民兵が暴力的で、吐き気を催すようなイデオロギーを伝え、猛烈な反ユダヤ主義者である。(そして)狂信的で残忍な個人で構成されているという事実は変わりない。

この連隊は、1943年にソビエト軍からハリコフを解放し、1944年にはフランスでオラドゥール・シュル・グラーヌの大虐殺を行ったとして、ウクライナで尊敬を集めている第2SSダスライヒパンザー師団を思わせるエンブレムを持つ連隊で、最も有名である。
 

ウクライナの準軍事組織を「ナチス」あるいは「ネオナチ」と特徴づけることは、ロシアのプロパガンダとみなされている。しかし、それはタイムズ・オブ・イスラエル紙や、ウェストポイント・アカデミーのテロ対策センターの見解ではない。2014年、ニューズウィーク誌は彼らをよりイスラム国と結びつけているようだ。お好きなようにどうぞ

つまり、西側諸国は、2014年以降、レイプ、拷問、虐殺など、民間人に対する数々の犯罪を犯した民兵を支援し、武装させ続けたのだ。
これらの準軍事勢力のウクライナ国家警備隊への統合は、一部の人が主張するような「脱亜入欧」をまったく伴っていない。

多くの例の中で、アゾフ連隊の徽章の例は示唆に富んでいる。
 

2022年、非常に図式的に、ロシアの攻勢に対抗するウクライナ軍は次のように編成された。
国防省に従属する陸軍。3 個の軍団に編成され、機動部隊(戦車、重砲、ミサイルなど)で構成される。
国家警備隊は、内務省に従属し、5つの地域司令部に組織されている。
したがって、国家警備隊はウクライナ軍に属さない領域防衛軍である。

その中には「義勇軍大隊」と呼ばれ、「報復大隊」という刺激的な名称でも知られる、歩兵で構成された準軍事民兵が含まれる。主に市街戦のために訓練され、現在ではハリコフ、マリウポリ、オデッサ、キエフなどの都市を防衛している。

 

第2部:戦争
スイスの戦略情報局でワルシャワ条約機構軍の分析を担当していた私は、ウクライナの軍事情勢を理解することができなくなっていることに、驚きではなく悲しみを感じている。テレビに登場する自称「専門家」は、ロシアとプーチンは非合理的であるという主張で修飾された同じ情報をたえず伝えているのである。もう一歩踏み込んでみよう。

 

1.戦争の勃発

 2021年11月以降、アメリカはロシアのウクライナ侵攻を常に脅してきた。しかし、ウクライナ側は最初、納得していないようだった。なぜそうしないのか。
2021年3月24日に遡る必要がある。その日、ヴォロディミル・ゼレンスキーはクリミア奪還の政令を発し、軍隊を南部に配備し始めたのである。

同時に、黒海とバルト海の間でNATOの演習が数回行われ、それに伴いロシア国境沿いの偵察飛行が大幅に増加した。ロシアはその後、自軍の作戦遂行能力をテストし、情勢の進展に追随していることを示すために、いくつかの演習を実施した。

10月から11月にかけてZAPAD21演習が終了し、事態は沈静化したが、その部隊の動きはウクライナに対する攻勢を強化するものと解釈された。しかし、ウクライナ当局もロシアの戦争準備説に反論し、ウクライナのレズニコフ国防相は「春以降、国境に変化はない」と述べている。

ミンスク合意に反して、ウクライナはドンバスで無人機を使った空爆を行っており、2021年10月には少なくとも1回、ドネツクの燃料庫を攻撃している。アメリカのマスコミはこのことを指摘したが、ヨーロッパのマスコミは指摘せず、これらの違反を非難する者もいなかった。

 

2022年2月、事態は急展開を迎えた。2月7日、モスクワを訪問したエマニュエル・マクロンは、プーチンに対してミンスク合意へのコミットメントを再確認し、翌日のヴォロディミル・ゼレンスキーとの会談後もこのコミットメントを繰り返すことになる。

しかし、2月11日、ベルリンで行われた「ノルマンディー方式」首脳の政治顧問会議は、9時間の作業の後、何の具体的な成果もなく終わった。

ウクライナ側は、明らかに米国の圧力により、依然としてミンスク協定の適用を拒否しているのである。ウラジーミル・プーチンは、マクロンが空約束をしたこと、西側諸国が合意を履行する用意がないことを指摘し、8年間示してきた和解への反対と同じであることを示した。
 

接触地帯でのウクライナの準備は続いていた。

ロシア議会は警戒を強め、2月15日にプーチン大統領に共和国の独立を認めるよう求めたが、プーチン大統領は当初これを拒否していた。
2月17日、ジョー・バイデン大統領は、ロシアが数日以内にウクライナを攻撃すると発表した。なぜ、彼がそれを知っていたのか。謎である。

しかし、16日以降、ドンバスの住民に対する砲撃は、OSCEの監視員の日報が示すように、劇的に増えていたのである。

 

当然、メディアも、EUも、NATOも、西側政府も反応せず、介入もしなかった。これはロシアの偽情報だったと後に言われることになる。実際、EUや一部の国は、ドンバス住民の虐殺について、それがロシアの介入を誘発することを知りながら、意図的に沈黙を守ってきたようである。

同時に、ドンバスではサボタージュの報告もあった。

1月18日、ポーランド語を話し、西側の機器を装備し、ゴルリヴカで化学事故を起こそうとする破壊工作員をドンバスの戦闘員は迎撃した。彼らは、ドンバス共和国で破壊工作を行うために、アメリカ人が指導または「助言」し、ウクライナまたはヨーロッパの戦闘員で構成されたCIA傭兵であった可能性がある。
実際、2月16日の時点で、ジョー・バイデンは、ウクライナ側がドンバスの民間人に対する激しい砲撃を開始したことを知っており、ウラジーミル・プーチンに、ドンバスを軍事的に助けて国際問題を起こすか、ドンバスのロシア語圏の人々が潰されるのを傍観するかという難しい選択を迫ったのである。

 

軍事介入をすれば、プーチンは「保護する責任」(R2P)という国際的な義務を発動することができる。しかし、その内容や規模がどうであれ、介入すれば制裁の嵐になることは分かっていた。したがって、ロシアの介入がドンバスに限定されようが、ウクライナの地位をめぐって欧米に圧力をかけようが、支払うべき代償は同じである。これが2月21日の演説で説明されたことである。この日、彼は下院の要請に応じ、ドンバス2共和国の独立を承認し、同時に友好・援助条約を締結した。
ドンバス住民に対するウクライナの砲撃は続き、2月23日、両共和国はロシアに軍事支援を要請した。2月24日、プーチンは国際連合憲章第51条(防衛同盟の枠組みによる相互軍事援助)を発動した。

欧米諸国は、ロシアの介入を完全に違法と見なすために、2月16日に戦争が始まったという事実を意図的に隠した。ロシアとヨーロッパの一部の情報機関がよく知っていたように、ウクライナ軍は早くも2021年にドンバスを攻撃する準備をしていた。
プーチンは2月24日の演説で、作戦の2つの目的を明言した。ウクライナの「非軍事化」と「非ナチ化」だ。つまり、ウクライナを征服するのではなく、おそらくは占領するのでもなく、破壊するのでもない。
それ以降、作戦の経過を知ることは限られている。ロシアの作戦には優れたセキュリティ(OPSEC)があり、その計画の詳細は不明である。しかし、作戦の経過を見れば、戦略目標が作戦レベルにどのように反映されたか、すぐに理解することができる。

非武装化。
  ・ウクライナの航空、防空システム、偵察資産の地上破壊。
  ・指揮・情報構造(C3I)および領土の奥深くにある主要な物流経路の無力化。
  ・南東部に集結しているウクライナ軍の大部分を包囲する。
非ナチ化
・オデッサ、ハリコフ、マリウポル、および領土内の様々な施設で活動する義勇軍大隊の破壊または無力化。

 

2.非軍事化
ロシアの攻撃は、非常に「古典的」な方法で行われた。最初は、1967年にイスラエル軍が行ったように、最初の数時間で空軍を地上から破壊する。その後、抵抗の弱いところから順に進攻し、都市部(兵力的に非常に厳しい)は後回しにするという「流水」の原則に従って、いくつかの軸で同時に進行していくのを目撃した。北部のチェルノブイリ原発は、破壊工作を防ぐために直ちに占拠された。ウクライナ兵とロシア兵が一緒に原発を守っている映像は、もちろん映らない。

ロシアがゼレンスキーを排除するために首都キエフを占拠しようとしているというのは、典型的な西側からの発想だ。しかし、プーチンは決してゼレンスキーを射殺したり、倒したりするつもりはない。

むしろロシアは、キエフを包囲することによって、彼に交渉を迫り、政権を維持しようとする。ロシアはウクライナの中立を手に入れたいのだ。

ロシアが軍事作戦を展開しながら、交渉による解決を模索し続けたことに、欧米の論客の多くは驚いた。その理由は、ソ連時代からのロシアの戦略観にある。西側諸国は、政治が終われば戦争が始まる。しかし、ロシアはクラウゼヴィッツ的な発想で、戦争は政治の連続であり、戦闘中であっても流動的に移行することが可能である。戦争は政治の連続であり、戦闘中であっても政治と政治の間を流動的に行き来することができる。これにより、敵に圧力をかけ、交渉に向かわせることができる。
作戦の観点から見ると、ロシアの攻撃は、これまでの軍事行動と計画の一例である。ロシア軍は6日間で、1940年にドイツ国防軍が達成した以上の前進速度で、イギリスと同程度の領土を押さえたのである。

ウクライナ軍の大部分はドンバスに対する大規模な作戦に備えて、同国南部に配備されていた。

そのため、ロシア軍は3月初めからスラビャンスク、クラマトルスク、セベロドネツクの間の「大釜」で、東からハリコフを経て、南からクリミアからの推力で包囲することができたのである。ドネツク(DPR)共和国とルガンスク(LPR)共和国の軍隊は、東からの攻撃でロシア軍を補完している。

現段階では、ロシア軍は徐々に縄を締めているが、もはや時間的なプレッシャーやスケジュールはない。彼らの非武装化目標はほぼ達成され、残存するウクライナ軍にはもはや作戦・戦略上の指揮系統はない。
我々の「専門家」が兵站の不備に起因するとする「減速」は、目的を達成した結果でしかない。

ロシアはウクライナの全領土の占領を望んでいるわけではない。実際、ロシアは進出を同国の言語境界線に限定しようとしているように見える。

わが国のメディアは、ハリコフを中心とした民間人に対する無差別爆撃について語り、おぞましい映像が広く流されている。

しかし、現地に住む中南米特派員のゴンサロ・リラは、3月10日と11日の平穏な街の様子を紹介している。確かに大きな都市であり、すべてを見ることはできないが、それはテレビ画面に映し出され続ける全面戦争の中にいるわけではないことを示しているように思われる。ドンバス共和国については、自国の領土を「解放」し、マリウポリ市で戦っている。


3.非ナチ化
ハリコフ、マリウポリ、オデッサといった都市では、ウクライナの防衛は準軍事的な民兵によって担われている。彼らは、「デナツィフィケーション」の目的が主に自分たちに向けられたものであることを知っている。都市化された地域の攻撃者にとって、市民は問題である。だからこそロシアは、都市から民間人を排除し、民兵だけを残し、彼らと戦いやすくするための人道的回廊を作ろうとしているのだ。

逆に民兵は、ロシア軍に都市での戦闘を思いとどまらせるために、都市にいる市民を避難させないようにしようとする

そのため、彼らは回廊の設置に消極的で、ロシア軍の作戦が成功しないように、民間人を "人間の盾 "として使っているのだ。マリウポリから出ようとする市民がアゾフ連隊の戦闘員に殴られる様子を映したビデオは、もちろん西側メディアによって注意深く検閲されている。

Facebookでは、アゾフのグループはイスラム国[ISIS]と同じカテゴリーとみなされ、プラットフォームの "危険な個人と組織に関する方針 "の対象となった。そのため、その活動を美化することは禁じられており、それに好意的な「投稿」は組織的に禁止されていた。

しかし、2月24日、Facebookはポリシーを変更し、民兵に好意的な投稿を許可した。同じ精神で、3月には旧東側諸国において、ロシアの兵士や指導者の殺害を求める投稿が許可された。私たちの指導者を鼓舞する価値観は、ここまでだ。

我が国のメディアは、ウクライナ人による民衆の抵抗というロマンチックなイメージを広めている。欧州連合(EU)が民間人への武器配布に資金を提供したのも、こうしたイメージのためだ。

私は国連で平和維持の責任者として、民間人保護の問題に取り組んできた。その結果、民間人に対する暴力は、非常に特殊な文脈で発生することがわかった。特に、武器が豊富にあり、指揮系統が存在しない場合である。

指揮系統とは、軍隊の本質であり、武力の行使を目的に向けて方向付ける機能である。現在のように無計画に市民を武装させることで、EUは市民を戦闘員にしてしまい、結果的に市民を潜在的な標的にしてしまうことになるのだ。

さらに、指揮もなく、作戦目標もなく、武器を配ることは、必然的に決闘や盗賊行為、効果的というより致命的な行動につながる。戦争は感情の問題になる。武力は暴力となる。

2011年8月11日から13日にかけて、タワルガ(リビア)で起こったことがそれだ。3万人のアフリカ系黒人が、フランスから(不法に)降下させられた武器で大虐殺されたのだ。ところで、英国の王立戦略研究所(RUSI)は、こうした武器供与に何の付加価値も見出していない。

さらに、戦争中の国に武器を届けることは、交戦国とみなされることを露呈することになる。2022年3月13日のロシアのミコライエフ空軍基地への攻撃は、武器輸送が敵対的な標的として扱われるとのロシアの警告に従ったものだ。
EUは、ベルリンの戦いの最後の時間における第三帝国の悲惨な経験を繰り返そうとしている。

戦争は軍に委ねられ、一方が負けたときには、それを認めなければならない。そして、もし抵抗があるならば、それは指導され、組織されたものでなければならない。しかし、私たちは正反対のことをしている。私たちは市民に戦場に行くよう促し、同時にFacebookでは、ロシアの兵士や指導者の殺害を呼びかけることを許可しているのだ。私たちを奮い立たせる価値観とは、このようなものなのだ。

この無責任な決断を、ウクライナの人々をプーチンのロシアと戦うための大砲の餌にするためと見る諜報機関もある。火に油を注ぐより、交渉に臨み、その結果、民間人への保障を得た方が良かったのではないだろうか。他人の血で闘争心を燃やすのは簡単なことだ。


 4.マリウポルの産科病院
マリウポルを守っているのはウクライナ軍ではなく、外国人傭兵で構成されたアゾフ民兵であることをあらかじめ理解しておくことが重要である。
ニューヨークのロシア国連ミッションは2022年3月7日の情勢概要で、

"住民の報告によると、ウクライナ武装勢力はマリウポリ市の第1出産病院から職員を追放し、施設内に射撃基地を設置した。"

と述べている。

3月8日、ロシアの独立系メディアLenta.ruは、産院がアゾフ連隊の民兵に占拠され、民兵を武器で脅して追い出したと話すマリウポルの民間人の証言を掲載した。彼らは、数時間前に行われたロシア大使の発言を確認した。

マリウポリの病院は、対戦車兵器の設置や監視に最適な優位な位置にある。3月9日、ロシア軍はこの建物を攻撃した。CNNによると、17人が負傷したが、画像には建物内の死傷者は写っておらず、言及されている犠牲者がこの攻撃と関係があるという証拠もない。子供の話もあるが、現実には何もない。このことは、EUの指導者たちがこれを戦争犯罪と見なすことを妨げない。そして、これによってゼレンスキーはウクライナ上空に飛行禁止区域を要求することができるのだ。

現実には、何が起こったのか正確にはわからない。しかし、一連の出来事から、ロシア軍がアゾフ連隊の陣地を攻撃し、その後、産科病棟に民間人がいなくなったことを確認する傾向がある。
問題は、都市を守る準軍事的な民兵が、戦争のルールを尊重しないよう国際社会から奨励されていることだ。

ウクライナ人は、1990年にクウェート市の産院で起きたシナリオを再現したようだ。この産院は、国連安全保障理事会に「砂漠の盾/嵐」作戦でのイラク介入を説得するために、ヒル&ノウルトン社によって1070万ドルで全面的に演出されたのだ。

西側の政治家たちは、ウクライナ政府に対するいかなる制裁措置も採らずに、ドンバスでの民間人による攻撃を8年間も受け入れてきた。欧米の政治家たちが、ロシアを弱体化させるという目的のために国際法を犠牲にすることに同意するという力学に、私たちはとっくの昔に入り込んでいるのだ。

 

第3部 結論
元情報専門家として、まず驚かされるのは、欧米の情報機関がこの1年の状況を正確に伝えていないことだ。実際、西側諸国では情報機関が政治家に圧倒されているように見える。

問題は、意思決定をするのは政治家であることだ。世界最高の情報サービスも、意思決定者が耳を貸さなければ意味がない。今回の危機では、このようなことが起こってしまった。
つまり、いくつかの情報機関は状況を非常に正確かつ合理的に把握していたが、他の機関は明らかにわが国のメディアが宣伝したのと同じような状況を把握していた。

第二に、ヨーロッパのいくつかの国では、政治家が意図的にイデオロギー的な対応をしているようだ。そのため、この危機は最初から非合理的なものとなっている。この危機の間に国民に提示された文書はすべて、政治家が商業的な情報源に基づいて提示したものであることに注意しなければならない。

欧米の政治家の中には、明らかに紛争が起こることを望んでいる者がいた。米国では、アンソニー・ブリンケンが国連安全保障理事会に提示した攻撃シナリオは、彼の下で働くタイガー・チームの想像力の産物に過ぎなかった。彼は、2002年にドナルド・ラムズフェルドが行ったように、イラクの化学兵器についてあまり主張しないCIAや他の情報機関を「迂回」して行ったのである。

今日、私たちが目撃している劇的な展開には、私たちが知っていながら見ようとしなかった原因があるのだ。

 ・戦略的なレベルでは、NATOの拡大(これはここでは扱っていない)。
 ・政治的なレベルでは、ミンスク協定の実施を拒否する西側諸国。
 ・そして作戦面では、過去数年にわたるドンバスの民間人に対する継続的かつ反復的な攻撃と、2022年2月下旬の劇的な増加である。

つまり、私たちは当然、ロシアの攻撃を嘆き、非難することができる。しかし、WE(つまり:米国、フランス、欧州連合を筆頭に)は、紛争が勃発する条件を作ってしまったのだ。私たちはウクライナの人々や200万人の難民に同情を示す。それは結構なことだ。

しかし、同じ数のドンバスのウクライナ人が自分たちの政府に虐殺され、8年間もロシアに避難してきた難民に少しでも同情していれば、おそらくこんなことは起きなかっただろう。

ドンバスの人々が受けた虐待に「ジェノサイド」という言葉が適用されるかどうかは未解決の問題である。この用語は一般に、より大規模なケース(ホロコーストなど)のために確保されている。しかし、ジェノサイド条約が与えている定義は、おそらくこのケースに適用できるほど広範なものだろう。

明らかに、この紛争は私たちをヒステリーに導いている。制裁は我々の外交政策の好ましい手段となってしまったようだ。

もし、我々が交渉し、承認したミンスク合意をウクライナに遵守させるよう主張していれば、このようなことは起こらなかっただろう。

プーチンの非難は、私たちへの非難でもある。もっと早くから行動すべきだったのだ。しかし、エマニュエル・マクロンも、オラフ・ショルツも、ヴォロディミル・ゼレンスキーも(保証人かつ国連安保理理事国として)その約束を守ってはいないのだ。

結局、真の敗北は、声を上げられない人々の敗北なのだ。

それどころか、ウクライナがドンバスで自国民を爆撃していたとき、EUは反応しなかったのである。もしそうしていれば、プーチンは反応する必要がなかっただろう。外交的な段階を欠いたEUは、紛争を煽ることでその存在を際立たせている。

2月27日、ウクライナ政府はロシアとの交渉に入ることに合意した。しかし、その数時間後、EUはウクライナに武器を供給するための予算4億5000万ユーロを議決し、火に油を注いだ。

それ以来、ウクライナ側は「合意する必要はない」と思うようになった。マリウポルでのアゾフ民兵の抵抗により、5億ユーロの武器供与の後押しがあったくらいだ。

ウクライナでは、西側諸国の祝福を受けて、交渉に賛成する人たちが排除された。ウクライナ人交渉官のデニス・キレエフは、ロシアに好意的で裏切り者と見なされ、3月5日にウクライナ保安庁(SBU)によって暗殺されたのである。

また、SBUのキエフ・地方担当の元副局長ドミトリー・デミャネンコ氏も、ロシアとの合意に好意的すぎたため、3月10日に民兵「ミロトヴォレツ(平和の使者)」に射殺された。この民兵は「ミロトボレッツ」というウェブサイトに関連しており、「ウクライナの敵」を個人情報、住所、電話番号とともにリストアップし、嫌がらせや抹殺ができるようにしたもので、この行為は多くの国で罰せられるが、ウクライナではそうではない。

国連といくつかのヨーロッパ諸国はこのサイトの閉鎖を要求したが、ラーダ(ウクライナ議会)はこの要求を拒否した。

結局、代償は高くつくだろうが、プーチンは自ら設定した目標を達成する可能性が高い。私たちは彼を中国に押し込んだ。北京との結びつきは強固なものになった。中国は紛争の調停役として台頭してきている。アメリカは、自らが陥ったエネルギーの袋小路から抜け出すために、ベネズエラやイランに石油を求め、敵に課した制裁を情けなくも撤回しなければならない。

ロシア経済を崩壊させ、ロシア国民を苦しめようとしたり、プーチンの暗殺を要求したりする欧米の閣僚は、(言葉の形は部分的に変えても、中身は変えていない!)我々の指導者が、我々が憎む者たちと変わらないことを示す。パラリンピックのロシア選手やロシアの芸術家に制裁を加えても、プーチンとは何の関係もないのだ。


ウクライナでの紛争が、イラクやアフガニスタン、リビアでの戦争よりも非難されるべきものである理由は何だろうか?

不正で不当なそして殺人的な戦争を行うために国際社会に故意に嘘をついた人たちに対して、私たちはどんな制裁を採用しただろうか。"世界最悪の人道災害 "と考えられているイエメンの紛争に武器を供給している国、企業、政治家に対して、私たちは制裁を一つも採用しなかっただろうか?
この質問をすることは、それに答えることだ。そしてその答えは、きれいなものではないのだ。

(終り)


ジャック・ボー Jacques Baud

1955年4月1日生まれ、スイス陸軍の元大佐、戦略アナリスト、諜報とテロリズムの専門家。

スイス陸軍元参謀本部大佐、元スイス戦略情報部員、東欧諸国専門家。米国と英国の諜報機関で訓練を受ける。国連平和活動の政策チーフを務める。法の支配と治安制度の国連専門家として、スーダンで初の多次元国連情報ユニットを設計、指揮した。アフリカ連合にも勤務し、NATOでは5年間、小型武器の拡散防止を担当。

ソ連崩壊直後には、ロシア軍や情報機関の最高幹部との議論に携わる。NATO内では、2014年のウクライナ危機をフォローし、その後、ウクライナ支援プログラムに参加。諜報、戦争、テロに関する著書がある。

 

ジャック・ボー氏は他でも対談などでウクライナ戦争について解説している。また折りを見て紹介していきたい。その他の論者の論考も。

このジャック・ボー氏の論考について、田中宇氏が解説しているので、そちらもお勧めである。