今度の台風は想像を超えた強風により神奈川・千葉県を駆け抜けたが、ゴルフ場鉄塔倒壊で家屋を破壊して怪我をした方などで人的被害は少なかったし、通常起きる家屋の倒壊、浸水、道路の寸断、崖崩れ等々テレビニュースでは報告されなかったので、いつものような政府の災対本部が立ち上がっているようにはみえない。なんだか全般に被害も少なく大したことがないような安ど感が蔓延しているような気がする。

 

しかし、送電線の倒壊や多数の電柱折損などから93万軒もの大停電が東京・神奈川・千葉に発生し、熱暑のなか生活に大打撃を与えている。しかも、停電の結果浄水場も機能停止してしまい、断水が広範囲に起こって、物的被害が少ないのに生活への影響は、大地震や集中豪雨・台風の以上のものになっている。

(強風による被害は思った以上に大きいようだ。やっとそういう報道が多くなってきた。)

 

しかし、何故か政府は内閣改造のような不要不急のことで騒いでいるだけだし、千葉県の森田健作知事の顔も全く見ないし、テレビも今日は多くの困った家庭を映し始めたものの、それまでは停電の復旧は東京電力がやるもの、断水対策は市役所と一部の自衛隊の給水車がやっているところを映すだけとこちらもかなりのんびりした態度のように見えた。

 

一つの要因としては、東京都心が停電もなくその他の被害もなかったため、安ど感が先に出てしまい、近いはずの千葉県については、ローカルニュース化してしまったからではないか。

 

北海道のブラックアウトのときはあれだけマスコミその他が騒いだのに、今回の停電はなぜ騒がないのだろうか。この停電、千葉県内で60万軒以上停電したのだから、千葉県ブラックアウトといってもいい。

 

9月1日の防災の日、政府主催の令和元年度総合防災訓練では、地震による甚大な被害が想定される千葉県の森田知事とテレビ会議もしていたが、その訓練成果はどうなったのか。全く生かされていないのではないのか。いや、その際の想定は大規模地震なので、台風災害や大停電は想定していませんので、政府は関係ないのです、とでもいいたいのだろうか。

(森田健作知事は何しているのか。当然頑張っていると思うが、顔が全く見えない。)

 

坂本龍一の「たかが電気」が如何に軽率な発言であるか、千葉県ブラックアウト事態をみてもいえることだろうか。

電気が今の日常生活になくてはならないものであることが、今停電で困っている人達が身に染みて感じているはずだ。まさに電気はライフラインだ。断水も停電が起こした。インターネットも電話も停電で使えないから、情報収集も発信もままならない。スーパーもコンビニも電気がなければ店を開けることができない。

 

しかし、大地震や集中豪雨は目に見える被害と避難所に集まる住民という目に見える困った人達が、これは大変な災害だという想定が誰でもできるから、何とかしなくては、とか自衛隊をもっと、とか近隣の市町村の応援とかボランティア活動をという動きにつながるのだが、今回の災害は停電と断水が大規模で災害の形が弱いから想像力を刺激しない。

 

だから政府が何ら表立った活動をしない。自衛隊も何だか少ない。東京都が応援に大挙して行ったという情報も聞いていない。停電復旧は東電の仕事であるのは確かだが、それに任せているのも変な話だ。

 

中部電力や東北電力の応援はなされているのだろうか。

調べてみると、中部電力は、高圧発電機車31台、高所作業車24台、その他業務車両139台、応援要員請負も含め720名。関西電力、九州電力等高圧発電機車や要員(ちょっと少ない各社30人弱)を派遣したそうである。中部電力の要員派遣数はとても多く素晴らしいことだ。

 

自衛隊の千葉県内派遣はどうなっているのか。

陸上自衛隊は第1空挺団(習志野)を中心として、一般住民向け給水支援及び病院向け給水支援を行っているようだが、11日の今日は一般住民向け給水で水トレーラー(1t)を24両出し、人員は約165名、病院向け給水支援で、水タンク車(5t)を14両、人員約60名で活動中とのこと。(防衛省ホームページ)

 

給水は自衛隊だけではなく、自治体も行っていると思うが、県内2万戸以上で断水しているのに、自衛隊の給水支援が200人程度とは余りに少ないのではないか。

 

全体としていつものような災害報道になっておらず、生活困難状況と政府や自治体、企業の支援状況が全く見えない。つまりのんびりしているのはマスコミなのではないのか。被害の派手さがないのでニュースバリューがないと思って報道に手を抜いてやしないだろうか。

 

今回の千葉県ブラックアウトは大きな教訓を残したと思える。

ブラックアウトは発電所だけが起こすのではないということ。そして、余りに当然のことだが、停電になれば断水もするし、冷蔵庫は役立たず、クーラーも使えず、スマホも使えなくなり、お店も開けることが出来なくなるという生活全般に大きな支障をきたすということだ。

そして停電対策、早期復旧も重要だが、政府や自衛隊、自治体支援のあり方も再検討しなくてはいけないだろう。

 

<追加 9.13>

停電復旧の遅れの要因として、倒木が多数発生したとのことだが、なぜ倒木の撤去を東電が行っているのか不思議だ。東電の作業員は電力復旧作業に専念させるべく、倒木撤去は自衛隊の応援によればいいのではないのか。

なんだか、日本人の知恵の無さにイライラが募る。自衛隊をもっと活用すべきだ。そういう知恵出しするリーダーがいないのだろう。劣化日本の姿がここにあるのではないか。

 

 ちょっと小さいことだけど、(住民にとっては大きな問題だが)給水車や給水支援のあり方の改善の要があるのではないか。

給水車の一つの蛇口から(九州での災対支援自衛隊の給水車は蛇口が複数あったようだが、第一空挺団の給水車は旧型なのか)ちんたらポリ容器に入れ、それをいちいち自衛隊員が支えているのを見ると、アホじゃないかと思う。給水のために住民は長い行列をして待っているというのに、そんなばかなやり方は無いだろう。QC活動をもっとやれよ。蛇口は複数にして、ポリ容器を人がいちいち支えずに台に置いておくとか。

また、高齢者はポリ容器を給水場所に行くことも困難だし、水を入れても重いポリ容器を家まで持って帰ることは不可能だ。給水車派遣でおしまい、ではなく、個々の家に配る工夫も必要だ。

 

このままでは、東京がブラックアウトしたら悲惨な状況になることがわかった。

菅官房長官は「検証する」とか言ったらしいが、信用できない。目に見える災害には対応するかもしれないが、静かな災害には何もしないかもしれない。

想像力を逞しくすること。これが災害対策に望まれることではないか。

 

<追加>

今回の災害がいつもと違うのは、避難場所というもののあいまいさだ。

土砂崩れ、洪水などの場合は、自宅にいると被害に遭いそうだからと公民館や体育館に避難する。そこでは一応の受け入れ態勢ができている。

しかし、今回のような停電・断水で高齢者や病人など生活にかなり困っても、避難場所つまりシェルターが設けられていない。だからいわば洪水災害、地震災害より始末が悪いのだ。

災害対策にはこういう点も考慮されねばならないだろう。