「浜の真砂は尽きるとも世に盗人の種は尽きまじ」とは石川五右衛門の言葉だが、今日「浜の真砂は尽きるとも世にワイドショーの種は尽きまじ」と言うのが相応しい。

 

次から次へとネタを提供してくれる世の中で、昨日は貴乃花の突然の引退問題で大賑わい。お騒がせの貴乃花、最近は大人しくなったと思っていたら、内閣府への告発状がまだ尾を引いていたとはねえ。

緊急記者会見は、暇な退職老人としてはじっくり見させてもらった。

 

引退理由を述べたものの、何だか腑に落ちない。記者たちの質問も的を射てないものばかりだ。

一番のポイントは、貴乃花が「告発状の内容が事実無根な理由に基づいてなされたものであることを認めない」ということが、何で貴乃花部屋の廃業を決断する理由になるのか、ということだ。

そして、告発状は事実無根な理由に基づくものではございません。真実を曲げて告発は事実無根であると認めることは私にはできません。」ということが、またまた何故部屋の廃業を決断する理由になるのか、ということだ。

 

つまり、部屋の廃業を決断するということは、本人だけでなく、弟子にも後援会にも関係者にもそしてファンに対しても余程重要な行為なのであり、真実を曲げたくないという思いは半分は分かるが、それが部屋の廃業になぜつながるのか、皆そのことに不可解と言うか不思議に思っているのではないだろうか。

 

記者の質問はこの一番大事なことを貴乃花から聞き出せていない。もう頑固な貴乃花が決めたことだから、その理由を聞いても答えてくれないと諦めたのだろうか。

 

記者会見では、何度も弟子を大事にしている、かわいいということをしきりに述べていたが、そんな大事な弟子たちを今回の引退で放り出すことになってしまうことをどう思っているのだろうか。

つまりは弟子よりも大事なことがあるということか。真実を否定されるほうが許せないと、ドラマチックにはカッコいいけど、それって何か時代錯誤的な武士の真似ごとのようにみえる。そういうのを世間では「無責任」と言うんだけど。

 

真実、真実というけれど、告発状の内容は「真実」云々よりも、貴乃花の単なる自己の思い、主張を伝えているだけに過ぎず、それだけでは単に議論になるしかないものだ。

貴乃花の指摘は「傷害事件に関する日本相撲協会による調査は、第三者により行われたものではないから、公正中立な内容とは到底評価できない」ということと、「私の理事解任理由とされた事項は、解任事由に相当するような理事の職務義務違反になると認めることは困難なもの」というものだ。

 

これは事実とか真実と言うより、貴乃花の単なる「主張」だ。こんなものは第三者委員会は外部に委託したとえばそれなりに協会の言い分は通ることだし、理事の職務義務違反については、一般の企業の取締役の義務から判断して、貴乃花は当然職務専念義務を果たしていない。

 

こんな程度の貴乃花の「主張」が否定されたからといって、部屋の廃業つまり弟子その他関係者への多大なる迷惑をかける理由には全くなりえない。

 

つまり、貴乃花は廃業決断について、それこそ真実を語っていないのではないのか。

 

もし会見内容が真実の理由だとしたら、単に大人になれない永遠の子供、つまり無責任の塊、社会とはどのように成り立っているのか、自分一人だけのわがままで済ませられるわけがないということがわからない子供と言うしかない。

いつまでもチヤホヤされ、上司も仲間も友達もおらず、頑固に我を通していれば、周りがひれ伏すということしか知らないわがままさ。それが相撲協会で「孤立」してきた証ではなかったか。

 

私は貴乃花がそのような無責任な子供、40過ぎても大人になれない子供だと思っているが、それでもなお、弟子が大事だといいながら、弟子を蔑ろにする行為に納得がいかない。

やはり、弟子を蔑ろにしても部屋の廃業を決断した真の理由、語られない理由があるのではないか。

 

相撲協会から有形無形の圧力を受けたから、廃業を決断なんて、全くナンセンスなのだ。

文句があれば協会へ乗り込んでいって、談判すればいいし、マスコミを巻き込んでもいい。

弟子が大事というならそれくらいのことは親方として当然やるべきだ。

「真実を曲げることはできない」というが、弟子のためなら廃業なんぞやるべきじゃない。

 

それでもなお、部屋の廃業を決断した。つまり、一番大事なものを捨てるという決断をしたのだ。

自爆攻撃!命を掛けても守るもの。弟子を犠牲にしても守るもの。

「真実を曲げることはできない」というものではない。さっきも言ったように、この真実たるや全く大したことのないどうでもいい中身なのだから。

要は、貴乃花は本当のことを説明していないのだ。

貴乃花はいつも謎めいている。沈黙していれば、バカというメッキも剥げないということも確かだが、今回の貴乃花には何か別の意図があるように思えてならない。その対象はおおざっぱに言って相撲協会なんだろうけど。

 

しかし、自爆攻撃はイラクでもどこでも成功したためしはない。

大義になんか生きるよりもっと身近な弟子や景子さんらを大事にした方がよかったのではないか。

 

しかし、まだ遅くはない。一度八角理事長と十分話し合って、収まるところを見つけてもいいのではないかと思う。

この会見を大人になるきっかけにして廃業を水に流してもいいのではないか。

ここではプライドで突っ張るな。相撲の決まり手にあるじゃないか。「勇み足」というものが。

あの記者会見は「勇み足」でしたともう一度会見しても、だれも笑いやしない。拍手で迎えることだろう。