今日の読売新聞文化欄「陰謀論蔓延、ゆがむ歴史」は面白かった。国際政治学者細谷雄一と中世歴史学者呉座勇一による、巷に流行る陰謀論否定の対談だ。

 

 陰謀論は広まっているのでしょうか、との記者の問いに国際政治学者細谷雄一は

「冷戦が終結し、将来が不透明になっています。不安の中で人々はすがるものを求めており、明確・単純に「敵」を攻撃する陰謀論に魅了されます。」

として、TPP反対論の論拠まで陰謀論の仲間に入れてしまう。

 

また、中世歴史学者呉座勇一も

「陰謀論をどんどん拡散してしまうネットの問題も大きいですね。それらはもっともらしく資料を提示し、複雑な物事を断定的に言い切るので、一般人には説得力があると感じられてしまう。事態は深刻です。」

 

 何故「事態は深刻」などと大げさに言うのだろうか。

 確かに陰謀論の中には、味噌も糞も一緒でトンデモ陰謀論も沢山ある。

この紙面の中に主な陰謀論・陰謀説として、

ユダヤ陰謀論、

田中上奏文、

コミンテルン陰謀論、

真珠湾攻撃陰謀論、

アメリカ同時テロ事件陰謀説

等が掲げられている。

ここでは、ここに挙げられたもの全て、特にコミンテルンに関わるものとルーズベルトに関するものを、陰謀説として全部否定したいのだろう。歴史の真実を見せたくない、つまり隠したいものは全て陰謀論として処理したい。

 

しかし、世の中に絶対に陰謀はない、全ての陰謀論はデタラメであると言い切れるものだろうか。

私からすれば、この中ではユダヤ陰謀論のみが眉唾のトンデモ陰謀論だろうが、その他はまさに陰謀論が成り立つと思っている。

 

 そもそも英米、中露その他どこの国にも諜報機関は存在するし、これまでの歴史の中で多くの陰謀が計画され、成功し、失敗しという歴史が明らかになっている。

一概に全ての陰謀論は誤りとは言えない。

特に社会主義国ソ連のような謀略が政治手法の中心をなしてきたような国は、陰謀の宝庫と言って間違いはない。

 

 しかし、この二人の学者は、糞としての陰謀論に対して、「事態は深刻」といっているのではない。本当の陰謀を暴く論が一般人にばれそうになっていて、これが力を持ちつつある、つまり騙せなくなることを危惧して「事態は深刻」であると言っているのだ。

 

細谷が言う。

「歴史関連の書物にもポピュリズム的思考が蔓延し、歴史学が崩壊しつつあるのでは。…プロの歴史家が誤った本を放置し、批判しないことも問題です。まさに悪貨が良貨を駆逐している。専門家が使命感を持ち、一般向けの書籍を書くことも必要ではないでしょうか。」

 

「歴史関連の書物にもポピュリズム的思考が蔓延」というのは、何を想定しているのだろうか。

 

私は、最近特に活動が活発になった在野の歴史家渡辺惣樹氏の

「戦争を始めるのは誰か 歴史修正主義の真実」

「第二次世界大戦 アメリカの敗北 米国を操ったソビエトスパイ」

等の一連の著作

及びフーバー元大統領の大著「裏切られた自由」の翻訳、

また江崎道朗氏のコミンテルン関連を剔抉した

「コミンテルンの謀略と日本の敗戦」

「アメリカ側から見た東京裁判史観の虚妄」

等の一連の著作がかなりの影響力を持ち始めたことに危惧をしているのではないかと思っている。

 

更にアメリカの若き歴史学者ジェイソン・モーガン(現麗澤大学)が、米歴史学会を余りにひどいと批判し著作を表していることも彼ら左翼学者をビクつかせているのではないか。

 

 これらの著作は一般書であるため、手に取りやすく、また分かりやすく書かれているだけでなく、いわゆる陰謀論として否定されるものではなく、第二次世界大戦等がまさにコミンテルンその他の陰謀の賜物であることが実証されている。

 

要は、これまで左翼歴史学会が東京裁判史観で封印してきたものが明らかにされてきつつあり、これまでのように無視できなくなってきたということだ。

 

細谷がいう「まさに悪貨が良貨を駆逐している。」とは、意味が全く逆であり、これまでの教科書的歴史書が悪貨として、良質陰謀論の良貨を駆逐していたのであり、今や渡辺惣樹氏らの良貨が左翼歴史学会の本という悪貨を駆逐し始めたということであろう。

 

彼らのいう陰謀論とは、歴史修正主義のことだ。歴史修正主義は、これまで偏向していると非難しておけば済んだことだったが、今や歴史修正主義が堂々と主張し始めているのである。

 だから今細谷や呉座は躍起となって、渡辺惣樹氏らの著作を、中身に言及することなくトンデモ陰謀論として貶め、否定し始めたのである。この対談もその一環である。読売新聞もその片棒を担いでいる。

 

そこで呉座は一般書の書き手を貶めて以下のようにいう。語るに落ちたとはこのことだ。

「現在は、論文を書くのが学者の仕事だとして一般向けの本を全く書かない学者と、論文を書かずに一般書を量産する学者に二極化している。一般書を粗製乱造して学界での評価が落ちた学者が世間では学界代表になってしまう。」

 

 要するに、一般書を書いている奴らは学界での評価が落ちた学者なんだと。呉座、お前も一般書を粗製乱造しているではないか。偉そうに言うな。

 

そして陰謀論に危険性があるのかとの問いに、細谷は

「陰謀論は他者の断罪であり、非常に独善的です。この精神構造は、日本を再び他国との衝突に導く危険な種子だと思います。ヒトラーはかつて単純明快に敵(ユダヤ人)を示して糾弾し、人々を狡猾に扇動しました。」

 

 ほら出てきましたよ。左翼お得意のヒトラー化する手法。

桑田佳祐がNHK紅白歌合戦でちょび髭をつけて、安倍首相をヒトラーに擬しましたね。その手法です。

敵は誰でもヒトラーにしてしまえという安易な手法。

歴史修正主義者はヒトラーと同類だと言いたいようです。

独善的なのはどちらかはっきりしています。ここにも、負けそうな左翼の危機感が表れています。

 

どう対応していけばいいかとの問いに呉座は、

「日本の歴史教育を考える必要がありそうです。正解があり、それを覚えるのが歴史だという意識が強い。正か誤かというデジタル的な理解だから、隠蔽された裏の歴史があると言われると、簡単にひっくり返ってしまう。だから、陰謀論系の書籍のうたい文句で多いのは、「教科書には書かれていない真実」なのです。」

 

 これまでの日教組の歴史教育を反省するどころか、もっと強化して余計なことは考えさせないようにしようといっているのです。つまり、中国や韓国、北朝鮮の教科書のように、教科書が真実なんだ、疑うな、文句をいうなという歴史教育をしよう、中国、韓国を見習おうということですね。

 

さらに細谷がいう。

「政治的な信念や策謀をもとに歴史を論じる人も多いので、著者の学問的経歴や執筆の意図について確認し、見抜く力が必要ではないでしょうか。」

 

 他人事のように細谷は言うが、お前自身が政治的な信念や策謀をもとに歴史を論じる人ではないのか。お前が言いたいのは、右翼の書いた本に騙されるな、あるいは真実に見えるような本を書いたのは右翼なんだぞと言いたいようです。何様でしょうか、細谷君。

蓮舫がブーメランの女王だが、左翼はみんなブーメラン現象を起こすようだ。

 

最後に細谷。

「歴史と向き合うには、そんな現実に忍耐強く向き合う、知的な強靭さや誠実さが必要ではないか。短時間で分かるような図式を求めてはいけないと思います。」

 

これもブーメランだ。細谷や呉座その他にそんな現実に忍耐強く向き合う、知的な強靭さや誠実さがあるといえるのだろうか。

 

呉座の「陰謀の日本中世史」には、最後の方で突然日中戦争の中共陰謀論、南京大虐殺虚構論が出てきて、すべて素人の説として一蹴しているようだ。こんないい加減なことで、現実に忍耐強く向き合う、知的な強靭さや誠実さがあるといえるわけがない。

 

渡辺惣樹氏の知的誠実さと探究心を見よ。

なぜ適当にお茶を濁すかというと、自信がないこともあるが、もうそれは歴史事実として決まったことだから議論する必要がないといいたいのだ。

この態度、今の北朝鮮の拉致問題は解決済みという態度に似ている。困ったことは無視すればいいということだ。

例えば南京大虐殺も知的な強靭さや誠実さがあるなら、逃げずに大いに議論すべきなのである。

 

とは言っても、歴史修正主義が大きな力を持っているなんぞとはとても言えない。今やっと芽生えてきたところだ。

それに危機感を覚えた左翼たち。これからはもっと中身で勝負ではなく、歴史を書き替えようとしている軍国主義者たちとかなんとかレッテル張りに終始してくるだろう。中身では負けるからだ。

 

我々は良質な陰謀論、歴史修正主義をもっともっと学ばないといけない。これが真実の歴史を知り、貶められていた日本の歴史を取り戻すことにつながるのである。