個人的に気になったのだが。
P.440 「ブラック教授?お願いですから、お話しできませんか?どうぞお願いします」
「『どうぞ』は常に役に立つ」
UK版P.247 ' Professor Black ? Please could we talk to you ? Please ? '
' " Please " always helps, '
日本語訳だとちょっとおかしいと思った。ハーマイオニーがフィニアス・ナイジェラスを肖像画に
呼び出そうとして、敬意を払って呼びかけるシーン。彼はもともと協力的ではないので、最後にもう
一回 Please をつけて呼びかけている。その台詞を皮肉ったのが次の台詞。私は、細かい英語の
イギリス人同士のニュアンスはわからないけど、please をつけられたら断れませんよってこと
だよね?
でもさー、日本語のこの訳の場合、どうぞをつけたら必ずしも役に立つとは思えないっていうか…。
試訳:「ブラック教授?(お願いですから)お話しできますか?お願いします」
「『お願いします』は常に役に立つ」
の方がよいかと思ったんだけど。
ちなみにいつのまにか Professor は教授と訳されてるんだね。先生だったような。
P.444にももう一度「どうぞ」のやりとりが出てくる。
P.441 フィニアス・ナイジェラスは、ハリーの姿をなんとか見ようとして、こんどは頭を
いろいろな角度に動かしながら言った。
「そうだ。あのばかな女の子は、まったくもって愚かしい行動を取った――」
UK版P.248 said Phineas Nigellus, now turning his head this way and that in an
effort to catch sight of Harry, 'yes, That silly girl acted most unwisely there - '
turning his head this way は、頭をいろいろな角度に動かしながらでいいのだろうか?
ハリーの声のする方向に向けたのではない?
それからかつて校長を務めた人が、生徒を女の子なんて言い方をするだろうか?girl だから間違い
ではないかもしれないが、女子、あるいは女子生徒っって言う気がするよ。
P.441 フィニアスはあちこちと首を回した。
UK版P.248 he asked, turning his head from side to side.
これならまだ分かるけど。でもあちこちとじゃなくあちこちへ、あちこちへとじゃないかと思った。
P.441 フィニアス・ナイジェラスは、人を食ったような眉をピクリと上げた。
人を食ったような眉ってあり?
人を食うは、大辞泉によると”人を人とも思わない、ずうずうしい態度や言動をする。
「何とも―・った話だ」”とある。人を食ったような態度、人を食ったような笑みとかなら聞いたこと
あるけど…。人を食ったように眉を上げたならいいのか?あるいは眉を上げて人を食ったような
表情を浮かべたとか?
UK版P.248 Phineas Nigellus raised supercilious eyebrows.
supercilious は尊大な、横柄な、高慢なとかだから。形容詞なんだけど副詞みたくしてもいい
のかなー?
試訳:フィニアス・ナイジェラスは、尊大に眉を上げてみせた。
P.444 「グリフィンドールの剣が最後にケースから出るのを見たのは、たしか、ダンブルドア
校長が指輪を開くために使用したときだ」
指輪を開くって。こういう言い方もありかな?なんて思ったりもしたけど…。これはホークラックスの
指輪のことで。ホークラックスを破壊することを開くっていうって設定ならいいのかな。
UK版P.250 ' I believe that the last time I saw the sword of Gryffindor leave its
case was when Professor Dumbledore used it to break open a ring '
試訳:「グリフィンドールの剣がケースから出されるのを最後に見たのは、ダンブルドア
教授が指輪を破壊する(割る?)ために使用したときだ」
P.444 「では、さらばだ」
フィニアスはやや皮肉な捨て科白を残して、まさに姿を消そうとした。まだ見えている
帽子のつばの端に向かって、ハリーが突然叫んだ。
なぜこの台詞が、やや皮肉な捨て科白なのか?と疑問を持って原書を見たら。
UK版P.250 ' Well, goodnight to you ' he said, a little waspishly, and he began
to move out sight again. Only the edge of his hat brim remained in view when
Harry gave a sudden shout.
waspishly だった。皮肉な捨て科白なのかな?怒ってる、短気な、意地悪なとかじゃないかな。
試訳: 「では、おやすみなさい」
フィニアスは意地悪に言って、また姿を消そうとした。見えているのが帽子のつばの端だけ
になった時、ハリーが突然叫んだ。
P.445 ハリーは拳で天を突いた。
喜んだハリーなんだけど…。まぁ、わからなくもないけど。これガッツポーズとかしたらダメかな?
もしくは拳を突き上げたとか?これは個人的趣味か。
UK版P.250 he punched the air:
ちなみに punched the air って辞書では「やった」と腕を振り回すとある。
UK版P.251 plunks
日本語版は、原書がイタリックになっていると自動的に太字となる。強調ってことなんだろうけど。
なってたりなってなかったり徹底されてない。ここも原書はイタリックなのに、日本語訳は
P.447 パラパラと
ところが、UK版P.251 Plunk, plunk, plunk: は、P.448 バラ、バラ、バラ。と太字。
P.448 ロンは、ハリーの想像していたとおりのことを、そして恐れていたとおりのことを
考えていたのだ。
UK版P.252 Ron was saying exactly what he had suspected and feared him to be
thinking.
ちょっと違うと思っただけ。
試訳:ロンは、ハリーが疑い、恐れていたとおりのことを言おうとしている。
P.449 「僕たちは、君が何もかも納得ずくで事に当たっていると思ってた!」
UK版P.252 ' We thought you knew what you are doing ! '
試訳:「僕たちは、君が何をすべきか分かっていると思ってたんだ!」
別にとりあげるほどでもないんだけど、このあたりはなんかすこーしニュアンスが違うような
気がして気になって仕方がない。こんなことをいちいちピックアップしてたらきりがないし、
これぐらいは許容範囲だと思っているんだけど。
P.449 今度のハーマイオニーの声は、テントの天井に激しく打ちつける雨の音よりも
はっきりと聞こえたが、ロンはそれも無視した。
UK版P.252' Ron ! ' said Hermione, this time clearly audible over the rain
thundering on the tent roof, but again, he ignored her.
考えすぎかなと思ったけど、天井って内側だよね。辞書にも部屋の上部の板張りとある。
テントだからいいのかな…。でも roof だから屋根ってしとけば違和感なかったのにな。
P.450 ほんの数分前の興奮は、一瞬燃え上っては消える儚い花火のように跡形もなく
消え去り、残された暗闇が冷たく濡れそぼっていた。
これも違和感だよー。素敵な言い回しのつもりなのかもしれないけど。
UK版P.253 and the excitement of a few minutes before had vanished as if it had
never been, a short-lived firework that had flared and died, leaving everything
dark, wet and cold.
だって、最後のところは暗闇って名詞になってるけど、全てを暗く、濡れて、冷たいままにしたって
ことでしょ。
試訳:ほんの数分前の興奮は、ぱっと燃え上っては消えるはかない花火のように消え
去って、なにもかもが暗く湿り、冷たくなっていた。
残されたのは暗闇と雨と寒さだけだった。としたら意訳しすぎ?
P.451 まだ、死んでいない
と太字になっているが、
UK版P.253 では yet なので、太字にする必要がないのでは?
意味不明。ハリーとケンカごしのロンの台詞なんだけど。
P.451 「妹のことをあの人たちがどう話していたか、聞いたか? ところが、君ときたら、鼻も引っかけ
なかった。たかが『禁じられた森』じゃないかだって? 『僕はもっと大変な目に遭っている』。
ハリー・ポッター様は、森で妹に何が起ころうと気にしないんだ。ああ、僕なら気にするね。巨大蜘蛛
だとか、まともじゃないものだとか――」
UK版P.253 ' Didn't you hear what they said about my sister ? But you don't give a rat's fart,
do you, it's only the Forbidden Forest, Harry I've-Faced-Worse Potter doesn't care what happens
to her in here, well, I do, all right, giant spiders and mental stuff -'
※ここは文の中に太字の部分があるので、わかりやすいかな?と思って、ブログの字体も
太くしてないです。あー、最初からこうした方がよかったかな。
さて。盗み聞きやフィニアスからの情報で、ジニーがネヴィル、ルーナと校長室に忍び込んだが
バレてしまい、罰として「禁じられた森」に行かされたことがわかった…。これをふまえて。
おかしい点 その1
「妹のことをあの人達がどう話していたか、聞いたか?」では、まるで彼らがジニーの悪口を
言ったように思える。
おかしい点 その2
鼻も引っかけない → 正しくは「洟」
ロンは "rat's fart"(=ネズミの屁)という言葉を使っている。日本語にも「屁でもない」という言い回し
があるので、こちらを使った方がいいのでは。
おかしい点 その3
『僕はもっと大変な目に遭っている』。が唐突に出てくる。
原書をみればわかるが、Harry I've-Faced-Worse Potter (=もっと大変な目にあったことの
あるハリー・ポッター)という言い回しで嫌味を言っている。そのままハリーに続けて、『もっと大変な目
に遭っている』ハリー・ポッター様は、とかってすればよかったのに。
試訳:「俺の妹に何があったのか聞いただろ?なのに、おまえは屁でもないって態度だったよな。
たかが『禁じられた森』だからな。『もっと大変な目にあったことがあるハリー・ポッター様』は、あの
森でジニーにどんなことが起ころうと気にならないんだ。ああ、俺は心配だよ。あそこには巨大な
蜘蛛やイカれたものが――」