私が育った家のタオルのルールはシンプルでした。フキン、タオル、雑巾の三種類です。
食卓を拭いていいのはフキンだけ。床を拭いていいのは雑巾だけ。他のタオルはフリーの存在で、自由に移動できましたし、所属もありませんでした。
愛妻と結婚して驚いたのは、タオルには厳格な所属があるということでした。台所、お風呂、トイレ、洗面台、それぞれ所属があって、それ専門です。ガラが統一されていて、それを覚えて使わないといけないのです。しまう場所も違いますから、間違えてしまうと叱られます。「何度言ったら覚えるの?」と何度も叱られました。私にはタオルを識別する習慣がなかったのです。食卓や床は、そもそも布で拭きません。使い捨ての、ウェットペーパーで拭くのです。
結婚数年後のある日、妻が台所のタオルを持って、こう言いました。
「このタオルもう古いから、周ちゃんお風呂で使っていいよ」
私は、断固抗議しました。
「私がお風呂で使うタオルは、新品の今治(いまばり)タオルにしてください!」
冗談で言ったのですが、冗談でも言ってみるものです。本当に愛妻はネットで今治タオルを注文してくれました。
結婚して12年になりますが、私はいまだに風呂上りは今治のタオルで体を拭いています。
今治タオルは本当にいいです。フカフカです。それくらいの贅沢はしてもいいと思います。
イラスト by かえるWORKS