「ひでえなあ置いていきやがって。」
小屋の前でゲンゾウにブラシをかけているイノにジェイドがなげく。
「マリアに乗ってきたんだろ。ユウリィーがいちばんきのどくだよ。」
胸元の金色の毛をすいてやるとゲンゾウは喉をならしてイノの胸元に鼻を押し付けた。
「いつも美味しい物あげるのになんでユウは乗せてくれないのマリア?」
昴がブラシをかけている側でユウリィーが話しかける。
「トットに乗ったって落馬するようなひ弱なやつはお前は乗せたくないんだよな?お前はネプチューンのペガサスの王女ベガの血をひいてるんだから。なあマリア。」
昴が話しかけると鼻を腕におしつける。
「ソラはユウを乗せてくれるもん。」
ユウリィーがぶうたれる。
「あいつはお前を飛べない兄弟だと思ってるからだろう。スターだっていやがってお前を乗せないじゃないか。イノはかっこいいなあ聖獣に乗れるなんて。だからマリアもきいゆるすんだな。」
昴にいわれてプーとふくれっ面したまま小屋にユウリィーは入っていった。
「マリアはペガサスの血はいっているのか。じゃあ飛べるのか?」
「残念ながらこいつは親父ににて飛べねえだよ。外見のこの美しさはベガに似だけどな。まあ父親も走らせればピカイチの俺の愛馬だからな。慣れてねえやつならほんきで走ったら蔵なしじゃ落ちるだろうな。」
それをきいてイノは吹き出してしまった。
蔵もつけないイノに憧れ村の馬番のムスコ、コウヤがマリアに乗ったとき途中で投げ出され木にひかかったのを思い出したからだ。
「ユウリィーのやつなさけねえなあ。トットにも乗れねえのかよ。俺、ここに来るまで馬に乗ったことなんかねえけどトットにはすぐ乗れたぜ。」
夏樹に買われているトットはおとなしい。
ゆうことも良くきく気のいい馬だ。
「あいつは踏ん張り悪い上にやたら腹を蹴るから嫌われるんだよ。ソラはユウリィーのことをよく知ってるから文句たれねえけど普通の馬はちがうからなあ。」
ポンとマリアをたたくと疲れたのか大人しく小屋にはいった。
アリアがふくヤギ達を集める口笛の音がする今日もまた日が暮れる。