赤いアプリで会ったT君(その2) | 三歩進んで二歩戻る

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遅い一歩を踏み出したゲイの独り言。
最近はネタ切れなのでどうしたものか…

T君との価値観の違い、それは肉体関係に至るハードルの高さの違いだった。


食事会を楽しんだ後も、一日に1~2通の頻度でT君とはメールが続いていた。そんな中でT君は次のデートを提案してくる。土曜日の昼に合流し、某観光地を見て回りませんか、と。


それだけなら僕も喜んで応じただろう。


ただそのメールには続きがあった。

「次の日曜日も俺休みなんで、夕食後はホテル泊まりませんか?」


某観光地までの所要時間は彼の住んでいる場所からなら片道1時間、僕の家からは片道30分程度の距離だ。はっきり言ってしまえば時間的制約でホテルに泊まる必要性は薄い。つまり、彼は僕と寝たいと意思表示をしてきていた。




その時何を、どんな順番で考えたかははっきり覚えていない。

興味はあった。欲望だってあった。


だけど、それを遥かに上回って、驚愕があった。


たった一度食事を一緒にしただけの相手。

知っている情報はメッセージの中でやりとりした些細なことと、アプリの自己紹介に書いてあるちょっとした趣味とか興味、あとは身長体重年齢の3点セットくらい。それだけの情報しか持っていない相手の僕と、T君は寝たいと言っている。


僕が悩み、どうメールを返すか考えている間に、彼から2通目のメールが来た。

ゲイ同士の性交渉に関する、ポジションの内容だった。



僕はそれまで、自分がシモネタ好き人間だと思っていた。だけど、T君からそのメールをもらった僕が感じたのは、驚きと…そして小さな不快感だった。文面を考えた後、僕は自分の正直な気持ちをT君に伝えた。肉体関係を軽く考えることは出来ない。一緒に遊ぶのは構わないけれど、そういう意味ではT君の期待に応えることは出来ない、と。



僕が簡単には脱がないと悟ったのか、T君からの連絡はぷっつり途絶えた。

「俺だけ先走ってすいません。ショウさんが思うような出会いがあると良いですね」

T君が最後に送ってきたメールの中にあった一文だ。


決して悪い人間ではなかった。僕も彼のことは嫌いじゃなかった。

だけど、考え方が合わなかった。



T君はこの時、今僕が彼に対して抱いているような、嬉しさと不安と苦しさが混じったような感情を抱えていたのかもしれない。それも僕に対して。それを考えると申し訳なく思う一方で、僕は少しだけ自分がどういった人間なのかを理解した。