◇「四球を選ぶ」事が目立つ今季の阪神
攻撃面で、今季の阪神と、昨季の阪神で何が一番違うか。
それは誰に聞いても、今季の方が「四球を選ぶ」場面が増えている、という事。
そう、甲子園のバックスクリーンに「WALK」と表示されるヤツである。
岡田監督は「四球もヒットと同じ」という考え方で、「四球」査定ポイントを球団にかけあってアップさせた、と聞く。
その結果、阪神が得た、敬遠などの故意四球を除く四球数は、昨日現在「341」。
これは当然ながらリーグ1で、2位のヤクルトの「295」をも引き離しての1位。
|
阪神は安打数では、最下位の中日に負けているが、四球数では圧倒していて、ヒット数で断トツの巨人に対しても、阪神の四球数が大差をつけている。
たとえば四球を「単打と同等」と見て、安打換算すると、阪神はリーグ断トツである。
◇バッテリーへのダメージは、四球>ヒット
素人目に思うのだが、相手バッテリーへのダメージは、ヒットより四球の方が大きいと思う。
当然ながら、プロの投手でストライクゾーンだけで勝負する人は少ない。ほとんど皆無と言っていい。
「いかに、打者にボール球を振らせるか」。
このテーマのために、投手は変化球を覚え、捕手は配球を磨く。
逆に言うと、ピッチャーはその打席の中で「必ずボール球を投げる」。
いい投手はそのボール球で空振りをとる、凡打を打たせる、そうやって自らの有利に持っていく。
しかし、そのボール球を見極める力を打者が磨いていき、見逃す事ができれば、「ボールカウントが増え、投球が苦しくなる」。
投手の勝負できるボールが減るのだから、バッテリーのプレッシャーはたちどころに増すわけだ。
解説者もよく言うが「ヒットを打たれるのは仕方がない」。打った方が偉い、という諦めもつくし、言い訳もできる。
しかし投手が四球を与える事については、「逃げた」「制球力がない」など、どうしてもネガティブイメージがつく。
阪神の攻撃で、ヒットの後、四球が2回続いて満塁、というケースが見られる。
ランナーが出ると、より「併殺を狙うため」にストライクゾーンからボールゾーンへ外れる変化球が増え、それを見逃される事で、カウントが悪くなり、結局四球になってしまう。
そして、ボールを見極める阪神には、さらに「押し出し」という武器もある。
「真綿で首を絞める」ようなじわじわとした攻撃で、相手投手が崩れていくのである。
◇早打ちをやめて確変した一二番
昨季までの近本、中野はとにかく打撃が淡泊で、ヒットは打つが、凡打もすべて「早打ち」。
四球も含めた出塁をヨシとすべき一番打者二番打者のタイプとは違い、「超攻撃的」な一二番だった。
「超攻撃的」という言葉の好きな矢野前監督は何も言わなかったが、四球はヒットと同じ、と考える岡田監督はそうではなかった。
岡田阪神になり、この「早打ち」大好きの近本と中野が確変した。
「激変」と言っていいと思う。
中野が目に見えて変わったと感じたのは、先のWBCである。
WBCの代表入りをしたものの、当初はショート源田の控えという位置付けだった。すでにチームではセカンドへのコンバートが決まっていたが、WBCではショートの位置付け、しかも控え。
本人もバックアップ要員と高をくくっていただろう。
しかし直前の源田の故障により、先発ショートが回ってきて、スタメン2番に名を連ねるようになった。
代表チームである以上、さらなる「フォアザチーム」の意識が芽生えたと言っていいと思うが、あの中野が、ボールを選び始めたのである。
初球であろうが何であろうが、打ちたいボールを打つあの中野拓夢が、粘って粘って四球を選ぶ、なんてプレイを見て、コイツワンランク上のバッターになったかも、と思った。
近本に関しても、ボールを選んで粘るシーンが多く見られ、明らかに岡田監督の影響を受けた感がある。
しかも昨日の試合のように、思い切りのいいバッティングも残しており、単に攻撃の仕掛けが遅くなったわけでもない。
昨日現在、セリーグの四球数ランキングは1位大山、2位村上、3位岡本で、4位近本、5位中野、そして6位佐藤輝である。
時には勝負を避けられるチームのスラッガーに交じって、近本、中野が堂々のベスト5に入っている、という事実だけでも、すごい。
当然この2人は出塁率もリーグ4位(近本)と5位(中野)。
(近本に至っては、得点圏打率が4割超えでリーグ1位! どうなっとんねん!)
チーム打率もリーグ5位、ホームラン数もリーグ5位ながら、得点数がリーグ1位の不思議な阪神の強さは、この四球を選ぶ力にある。
四球は地味だけど、これほど相手に重圧を与える攻撃はない。
これはずっと続けていって欲しい。