カレーライスはとても不思議な食べ物だ
日本のカレーライスは
インドではなくイギリスから
海軍が持ち込んだとある
スパイスのブレンドをより簡略化したカレー粉、それを更にハイブリッド化して
食べやすく、美味しくした日本のカレーライス
まぁ日本人に合うようにしたって方がいいか
ただイギリスでは
今や
日本のカツカレーが国民食らしいのね
やっぱり圧倒的に美味いんだなぁ
ゼロからイチはできなくても
イチから10は天才的な日本人
鉄道は発明できなかったけど
新幹線は作れた日本人
香りが全てのはずの
コーヒーに氷をぶち込んで
冷コー
世界に笑われたのに
気づいたら
世界中の人が飲んでる
アイスコーヒー
日本人の
アレンジ能力
編曲能力
それが大好き
野球ってのも
ベースボールとは
ちょっと違うものね
応援の仕方から
ベースボールの捉え方から
どちらがいいってわけでなく
そのアレンジ力に唸る
DJやるときも考えた
他の方とどう差別化するか
文化に
リスペクトしつつ
自分にしかできないアレンジを
お笑いだっていつもそれだけを
考えてる
もちろんオーセンティックなものを
古典や主流に尊敬を持ちながら
新しく作りなおす感じ
カレーライスはその中の
最高傑作やないか
なんや
あの郷愁感
元々他国の料理なのに
母親や家庭を感じる
夕焼け小焼けの帰り道
どこからか匂ってくる
カレーライスの匂い
母親のカレーライス食べたい
我が家のカレーライス食べたい
いやいや
他国の料理
いや
カレーは他国かもしれんが
カレーライスは日本料理なんやろ
他種多用なカレーのアレンジ料理が並ぶ
日本人はカレー大好きなんだろう
懐かしいってなんやろ
和ってなんやろ
頭の中をぐるぐる駆け巡る
この生活や積み重ねた歴史の中で
変化しその上で残されたスタンダードが
愛しくて可愛くて
まるでよく煮込まれたスープのようだ
父が家を出て行ったと物心ついて
わかった
自分の苗字が変わったのは
小学生入るタイミングだった
貧しかった
とんでもなく
貧しかった
共同のトイレ
共同の風呂
カーテンもない部屋で
夏の夜
窓を開けたまま
空を見上げてた
作り置きのカレーライス
自分であたためる
美味い美味い
大きくカットされた
野菜
嫌いとか好きとかより
そんな判断を飲み込んで
カレーライスがそこにあった
東京に出て
一人暮らしをはじめて
芸人なって
付き合った女の子の部屋で
食べたカレーライス
どれも違う
どんなに市販の
ありきたりのルーを
使っても全員違う
ありゃなんだ
結婚してカミさんの
カレーライスを食べたとき
これが俺の家のカレーライスになるのかと思った
実に美味かった
悪くない
土日は婆ちゃんに預けられた
昼も夜も働いてくれた母ちゃん
金曜の夜に田舎の漁師町に預けられる
ばあちゃんのカレーライスは
野菜が小さくカットされてて
ほんのり甘い
またカレーライスかよっていいながら
何度もおかわりした
ばあちゃんが死んで
残された家で
残った鍋で
あのとき使ってたルーや
野菜の大きさに気をつけて
カレーライス作ってみた
その味はやっぱり僕のカレーライスで
あのばあちゃんのカレーライスではなかった
そしたら台所で涙が止まらなくなった
ばあちゃん死んだんだ
もう会えないんだって
はじめて息子が
カレーライスを作ってくれた
やっぱりそれは
僕の知らないカレーライスになっていた
ありゃなんでだろう
"これがお前のカレーライスか
きっとお前が結婚したりしたら
その時はそれがお前の家のカレーライス
になるんやぞ"
息子に俺はそう言った
まぁその前にもしかしたら
付き合った人の数だけ
いろんなカレーライス食べるかもなと
思いながら
自分の食べたいものを食べる
何を食べたかでなく
食べたいものを食べるってことが大事だ
誰と食べる
誰が作ったものを
食べるかだ
その中にあるその人を感じながら
感謝しながら生きたい
お母様
ありがとうございます
でも母親だけが
料理するってのは
違うから
独り言だと思ってね
お母さんありがとう
家帰ったらカレーライス作ってね
カミさんいつもありがとう
たまにはカレーライス食べさせてね
俺も料理作ろう
好きな人のために
カレーライスはどうだ?
あの不思議な食べもの
優しくて懐かしくてあったかくて
愛しいカレーライスをどうだ
母の日に