
上野顕太郎「さよならもいわずに」
愛する妻との突然のさよならを描いたドキュメント作品。
稀代のギャグ漫画家に突然訪れた妻との別離。
タイトルからも分かるように、ウエケンさんはできなかった奥様との決別をなんとかしてしたかったのだろう。
せめてさよならだけは。
いや、本当はそんな現実だって直視はしたくないほどの悲しみに暮れていたのだろうに。
それでも漫画という表現を選択し、奥様へのラブレターとして鎮魂を込め描き、祈りにも似た静謐な凄みと真摯なせつなさを同時に感じるのだ。
完成までやり遂げた漫画家としての業にただただひたすら奮える。
そしてそれは裏返せば誰より奥様がその才能を愛していたという証明にもなる。
レビューとかで作品としての起承転結がないとかぬかしている奴がいたが、漫画の可能性を一方向にしか見ていない人なんだろう。
家族と漫画に対する深い愛に打ちのめされ、読んでいきながら深い感動と表現者の腹のくくりかたに熱いもんがこみあがりまくる傑作だと思う。
この作品で葬式のとき不謹慎なギャグを思いつくと書いてあったが、私もこんなシリアスな作品なのに上野さんって後輩のげんき~ずの宇野堅太郎と一文字違いなんだなぁと感心したりして。
そういうこともある。