顧客管理?何ねそれ。50年の歴史は重かった。 | DMの診療所 野口恵庸

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「包装紙が無くなりそうやけん、来ちゃらんね」福岡の商店街の中では頑張っている西新商店街で果物店を営んでいる叔父から電話が来た。半世紀ほど前に大手の百貨店から独立する時に、宣伝部のデザイナーさんが作成してくれた包装紙を使い続けている。やぼったいナと思った時期もあったが、これがなかなかに味を出していると最近になり感じている。


一時期、福岡の繁華街である天神にも店舗を出して繁盛していたのに、「商品にも客にも目が届かなくなった」と天神の店を閉めて西新の店だけにした人だ。凡人には、理解し難い。

そんな叔父に「商売はどうね、西新商店街は人通りがあるけど厳しかろ」と聞くと「そりゃ、商店街の人から果物だけで良く商売が続きようね、って言われるばい」


う~ん、ここは商売繁盛に繋がる販促の話をしなければ・・・。「あのさ、いつも買いに来てくれる常連さんとかおるっちゃろ。」 『そら、おるくさ』 「その常連さんを逃さないための顧客管理とかしようと?」 『何な、それ?』 「・・・・・・」 「常連さんが、どこの誰で、何を、どの位、月に何回位、買いに来てくれようかを把握することよ」 『そりゃ、当たり前やろ。それが、顧客管理ね』 そう言って店の奥から何やら大福帳のようなものを持ってきて見せてくれた。


いやいや、ビックリ。家族構成から何から何まで、中には3世代に亘る書き込みがある。これかぁ!話には聞いたことがあるけど、実物を見るのは初めての大福帳は!

『そげなん見らんでも、客のことを知っとかんと商売はできんばい』 『そろそろ、夏休みで孫が来るやろうって大きめのスイカを薦めたり、家族に体調の悪いのがおると聞いとったら滋養のいいのを薦めとるよ』

他にも色々と客との間に交わされる話を聞かされました。


何と!究極のアナログ・プライベートDMPという感じ。でも、商売人にとっては当たり前の事なのですね。

CRMとかカスタマー・エクスペリエンスとか体系化された知識でしかないのだと。しかも、店に入るとすぐに甘い匂いのする果物を陳列している。五感に訴えることで効果が高まることを経験から身に着けているのです。50年近い歴史の前に完敗です。


「で、儲かりようと?」 『食える程度は儲かりようよ。美味しかった!って客の笑顔を見るのが一番やな』

「新しいお客さんとか、どうしようと?」 『常連さんとこのお嫁さんが、ママ友とか言うのを連れて来ようけんが、年とって死んで行く客と入れ替わりような』 笑うしかない話にちょっと齧ったマーケティング知識なぞ粉砕されてしまいました。


で、ここまではBtoCの話ですが、実はBtoBでも含蓄に富む話を聞きました。それは、機会の或る時にでも紹介します。先人の知恵に学ぶことは、まだまだ有りそうですね。